半分
半分
竜軌は自分の斜め横を歩く少女をちらりと見遣る。
白と黒の切り替えの入った透け感のあるブラウスに、タイトなデニムスカートを穿いた足は長い。
すらりとした長身に涼しげなシアンの、ヒールの高いサンダルを履いているので、十八には思えないくらい大人びて見える。暑そうに掻き上げた髪の下から見えるうなじに、通行人の男が目敏く視線を走らせる。それに対して苛立つような表情になるあたり、自覚が乏しい訳でもないらしい。結構なことだ。
いつもの靴屋からの帰り道。下町の商店街からは色々な食べ物の匂いが流れて来る。こうした匂い、雑多な気配が、竜軌は嫌いではない。生へと向かう活力を感じるのは快い。
たい焼きを手に、談笑しながら女子中学生たちが通り過ぎる。夕ご飯に響くから半分こしようよー、と喋るセーラー服の彼女たちを見る美羽の目に、羨望の色がよぎる。
誰に遠慮せず買い食いする自由。
当然のように帰りを待つ、自分だけの家。
美羽の手には持たされなかったものだ。
蝉の声が響く。
「おい、美羽」
少女が顔を上げる。名を呼ばれることにも馴染んだ。
「何か喰うか」
美羽の顔が輝くのを見て、現金な女だと思う。
「何が良い?」
〝チーズコロッケ。揚げたての〟
ミーンミーンと蝉の鳴き声がうるさい中、竜軌は沈黙した。




