表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
297/663

祈り

祈り


 荒太に八つ当たりと嫌がらせをした竜軌は、だいぶ気が晴れた。

 帰宅して長々と風呂に入り、胡蝶の間で夕食と、織田信長のフィギュアを笑顔で抱えた美羽を見て、更に気が晴れた。

「りゅうき!」

 そう言って信長のフィギュアを掲げ持つ美羽の行動は、ある意味でとても正しい。

 竜軌も気分が良くなる。

「お気に入りだな、美羽」

 美羽がうんうんと頷く。

「そうだろう。織田信長の治世はな、」

〝うんちくはどうでもええ〟

「……お前の学習意欲の乏しさは問題だ。言葉遣いの悪さも」

〝てやんでえ!かっこよけりゃそれでええんじゃ〟

「それは言葉遣いのことか、信長のことか」

〝両方〟

 まあ良いだろう、と竜軌は思う。合格点だ。

「ほら、晩飯を喰うぞ。秋鮭が冷える。熱燗も。蘭もいつまでも膳を引けぬでは気の毒」

「りゅうき!」

〝いただきます!〟

「はい、いただきます」



 美羽はお布団の中にまで、信長のフィギュアを連れ込もうとする。

「こらこら、幾ら信長が格好いいからと言って、それはやり過ぎだ、美羽」

(俺がいるから良いだろう)

 正真正銘の信長の転生者、元・お前の夫だぞと言いたくなる。

 美羽は竜軌の顔を見て、フィギュアを枕元に置いた。

 それから正座して、手を合わせて浴衣姿で拝んでいる。

 長い眠りから目覚めた美羽はそれ以来、夜は浴衣を着て眠るようになった。

「…それは仏像じゃないが。何かお願いしたのか」

〝ランスロットの怪我が、早く治りますように〟

「――――――ああ」

〝プチ・フラワーも仲間にしたんだもの。お手柄だわ〟

 美羽は病室で力丸からこっそりそのことを聴き、大いに褒め称えた。

(……探検団か。莫迦の仲間がまた増えたのか)

 その調子でどんどん増殖するかと思うとぞっとする。

「…お祈りが終わったら早くおいで」

 優しく呼びかけると、美羽はもそもそとお布団と、お布団の中にいる竜軌の腕の中に収まる。ぬくぬくとして快適そうだ。人間カイロを抱いた竜軌も温かい。竜軌が顎の下や耳の後ろを撫でると、美羽はくすぐったそうにする。左右の瞼にそれぞれ唇をつけ、尖った鼻先にもキスすると、電気スタンドの明かりだけでも赤面しているのが判る。

「りゅうき…」

 甘えるように呼ばれると、もっと色々したくなる。

 唇を吸っても吸ってもまだ足りない。首の柔肌を噛み、嫌と言うほど舐めてもまだ足りない。美羽はどんどん赤くなる。

 まだ相手は少女だとは知るものの。

(熱いんだ。美羽)

 浴衣をはだけさせ帯を解いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ