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 料理は集中力、根気、そして体力も使う。

 繊細さも欠かせない。

 荒太は人参の皮をピューラーで剥きながら、リビングに居座るやに臭い男に苛ついていた。

「人が晩飯の支度してる後ろで煙草吹かすのやめたってください」

「…まともな日本語というのは良いな。例えお前みたいな男の口から出たものでも」

「帰れや、魔王」

「荒太。お前、真白と結婚して後悔したことはないか」

「あんたもまともな会話の構築しろよ。新婚ほやほやである言うたら問題やろ。入籍はしたけど挙式かてまだやで」

 前生の名残りで荒太は関西弁になる時がある。

「数十年後は悔やむかも、か」

「有り得んなあ。真白さんが別れたい言うても俺が離さへんし。ええ加減に火い消せよ。水かけるでほんま」

 人参の皮を剝き終えたので、次はじゃが芋に取りかかる。皮を剝く途中で、芽に気付けば摘み取る。じゃが芋の芽は身体に悪い。

「灰皿が無い。このステンドグラスのコースターで消して良いか」

 ヒュ、と空き缶が飛んで来たのを受け止める。行き届いたことに水が少量、入っている。

「真白さんの手作りて知っててほざくな」

「カレーライスか?」

 材料を見て、今晩の成瀬夫婦の食卓を竜軌は予想する。

「肉じゃがや。カレーは前の晩から火を通さなあかん」

「そんな法律、六法全書には載ってなかったが」

「あー、男に絡まれても嬉しゅうないし!真白さん、早く帰って来て!愛しい夫と美味しい晩ご飯が待ってますよっ!!」

「あいつなら市と一緒だぞ」

「嘘っ!」

 荒太がピューラ―とじゃが芋をダン、とまな板に置いて竜軌を振り向く。

「嘘じゃない。お前の注意を俺が引いている間に、市は真白を引き留めておく計画だ。これは俺の八つ当たりと嫌がらせだが、市は普通にしてるだけ。あいつは真白の操を狙っているからなあ」

「さいっあく。お前ら兄妹、最悪やっ」

「そう褒めるな」

 竜軌を無視して、荒太は紺色のエプロンを着たままリビングの固定電話に走った。



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