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螺旋迷宮

螺旋迷宮


 最悪だった。

 夢の中の文子は現実の文子とは違うというのに、疲労困憊の余りそれを忘れ、判断力まで鈍らせてしまった。

 飛ばされた竜軌は気付くとスワンボートに乗っていた。

 夢の主の嫌がらせとしか思えない。

 不幸中の幸いと言うかスワンボートは勝手に動き、竜軌は脚で漕ぐ労力を使わずに済んだ。池の上をバチャバチャと進み岸に辿り着くと、そこには真鍮製と思しき螺旋階段が天までも伸びていた。

 『マダム・バタフライはこの最上階。ファイト!』という立札がある。

 嫌がらせとしか思えない。

(お前、実は俺に会いたくないんだろう)

 本当に、会いたくないのかもしれないと考える。

 左目から涙を流しながら詫びた美羽の顔が蘇る。

 許さないでと言った。

(許して欲しい癖に。お前を許せないのはお前自身だ。お前は俺を愛しているから怖いんだ。俺を失って、絶望したくないんだ。先回りして、痛みを抱えて)

 怯えて、竜軌にどこまで来てくれるものかと試している。

(甘えおって。そんな必要もないのに)

 竜軌は深く息を吸って吐くと、永遠に続きそうな螺旋階段を登り始めた。

 美羽に辿り着いた時、膝が震えているような無様な格好だけは晒したくないと思った。



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