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先鋒は

先鋒は


 こうして見るとつくづく美形揃いだなと竜軌は思った。

 華やかな顔の男児二人はそっくりだが、あと二人の女児はそれぞれタイプの異なる綺麗な顔立ちで、四人揃えば天使のような愛くるしさである。

 だが竜軌を見た彼らの反応は天使の無邪気さには遠かった。

 だれあのおっさん、しらないひと、やりもってる、へんしつしゃ?、てきのしゅうらい、などというひそひそ声が顔を寄せ合った子供たちの間から洩れ聞こえて来る。

「よおし、このばは、らんすろっとがひきうけた!みなにげろ、いっせいにちるのだっ」

 ランスロットの掛け声を合図に、残る三人はバラバラの方向に走り去った。

「待て、美羽っ」

 マダム・バタフライを追おうとした竜軌の前に、小さなランスロットが立ち塞がり意気揚々と叫ぶ。

「せいる、おやつだぞ!」

 声に応じて、背丈に見合った小振りな日本刀が現れる。

「力丸、貴様。がきがいっちょまえに神器を呼びおって」

 ランスロットの目は両方、健在だ。

 夢の中の美羽はそう認識しているのだ。彼女はまだ、現実では左目を失くした力丸には会っていない。竜軌には思うところもあったが、感傷は即座に捨てた。

「邪魔だ、チビ」

 そう言い捨てると清流を構えた力丸の上を跨ぎ越し、すたこら走った。

「きさまあ、てきぜんとうぼうとはひきょうなりい、ひきかえせいひきかえせいっ」

 ぎゃあぎゃあ騒ぐ声を尻目に、こんな時には誰しも思うのと同様に、誰が引き返すか莫迦、と思いつつ脚を動かす。

 脚の長さ、脚力では圧倒的に有利なのだ。

 美羽の夢の世界は不思議な空間だった。

 いきなり山尾によく似た巨大な猫が空から降って来て危うく潰されそうになったり、お菓子の家が十軒ほど並んでいたり。虹が出たと思えば、満開の桜の下で狸が腹鼓を打ちながら輪になって踊っている。泥酔しているようで踊る足元は覚束ない。

「おう、兄さんも一緒にどうだい?」

「いや結構」

 気の良さそうな狸の誘いを右手を振って断る。まだ腹鼓を打ちながら踊れるほどにはいかれていない。

(よく解らん。あいつはやはりよく解らん。この中で美羽を捜し出すのか?)

 どこへとも知れず走りながら、少し気が遠くなった。



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