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ぐるり

ぐるり


 ビー玉入りサイダーの空き瓶。黄色や赤に色づいた葉。桜染めのスカーフ。お食事処やケーキ屋のレシート。竜軌に投げつけなかったほうの、ホテルのアメニティグッズ。チラシの束は美羽の腕の中にある。以上がマダム・バタフライが福岡で獲得した戦利品。

 テディベアの小太郎。蝶の形をした香水瓶。荒太お手製の干し柿。チョコレートがぎっしり詰まったクラシックでグラフィカルな箱。以上がホワイト・レディからのお見舞い品で、テディベアの小太郎は返却希望である。

 猿の親子が戯れる意匠の銅製の文鎮。日本刀の鍔コレクション。その昔、夏休みに精魂込めて彫り上げた木製の阿弥陀如来(※本当は摩利支天を彫りたかったが中学生にはハードルが高かったとの本人談)。以上がミスター・レインからの献上品。

 オレンジ色のビービー弾、ざっと五十個ほど。パチンコ玉、七個。虎を象った寅年の干支ボトル(※中身は空。渋くて勇壮で痺れるデザインとの本人談)。特大・蛇の抜け殻(※お宝級との本人談)。以上がランスロットからの献上品。

 これらの品々に加え、美羽の銀色の宝箱が、眠る彼女の周囲をぐるりと取り巻いている。

 何の儀式だ、というのが竜軌の感想だった。

 異様な光景だとも思うし、こんなことで美羽が目覚めるのではないかと期待してしまう自分も、実際に目覚めかねないと思わせる美羽も、ちょっと常軌を逸している気がする。

(しかし、それぞれの性格が如実に表れるな。莫迦は莫迦としか言い様がない物を寄越すし。寅の干支ボトル、俺がくれてやったやつじゃないか。力丸が好きそうと言えば好きそうだが。……夏休みに阿弥陀如来を彫り上げる中学生など聞いたこともない。坊丸らしいと言えばそれまでだが。あいつも大別すりゃ莫迦の一種だ。干し柿は美味そうだな。チョコにしろ、保存食を選ぶあたりが真白はさすがに配慮しているというか。一つ二つ、喰ってはいかんだろうか)

 お見舞い品、献上品を一見して、美羽が諸手を挙げて飛びつきそうな最たる物は特大・蛇の抜け殻であり、それは同時に竜軌や思慮分別のある大人が眉をひそめてつまみ上げ、捨てそうな最たる物でもあった。

(…ビービー弾って今でもあるのか。一個一個拾ったのか、力丸。莫迦だがいじましい奴)

 目下のところ、胡蝶の間は立ち入り禁止とマチを含め、家の人間には言い渡してあるが、それもいつまでも通用しないだろう。

 何かとお騒がせな娘が顔も出さなければ遠からず不審に思われる。

(これもあいつの普段の行状のせいだ。ちっとは大人しくしとけば良いものを)

 荒太に加持祈祷させてみるか。

 眠ったままの美羽を置いて撮影に出かけるのも気が引ける。

 しかしこの莫迦娘はいつ起きるか判らん、等々、竜軌は頭を悩ませていた。



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