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深酒

深酒


 微笑む少女の顔は、確かに美羽だった。

 だが彼女は竜軌の名前以外、発音出来ない。竜軌の前生を信長とも知らない。少なくとも彼女の振る舞いを見る限りでは、そうとしか思えない。知れば美羽は喜び勇んで探検団の会員増員に利用しようと企むに決まっている。

「――――――帰蝶、か?」

 途端に少女が顔を不機嫌に歪める。

「飲む前から酔っているのか。誰が帰蝶だ。私は美羽だ。ほら、これ、何本?」

「四本。…いつから物が言えるようになった」

 美羽は怪訝そうな目で竜軌を見る。まさに今、竜軌自身が彼女を怪訝な目で見ていた。

「昔から喋れる。信長、少しおかしいぞ。湯に浸かり過ぎたのではないか?」

 認めたくないが竜軌は混乱していた。

 美羽にしろ帰蝶にしろ、この少女はいつも竜軌を混乱させる。翻弄する。

 だからこそ手放せないというのも確かだが。

「なぜ俺を信長と呼ぶ」

「…吉法師(きっぽうし)は幼名だろう?」

「………」

 少し発想の転換が必要らしい。

「美羽。酒を飲んだか?」

「うん。能古見(のごみ)という酒は、大層、美味いぞ。蔵元は佐賀にあるらしい。信長も試してみよ」

「以前、飲んだ。純米吟醸だったか。確かに美味かったように記憶しているが…」

「そう。他にも色々と飲み比べてみたが、私は能古見が気に入った!」

「――――――美羽」

「何だ?」

「抱いても良いか?」

 少女の顔が赤らみ、弱々しい眼光で竜軌を睨む。

「だからそれは、信長が、猶予をくれているのだろうが。誰も祝言まで待てとは言うておるまい……」

 もじもじと恥じらう様子は普段と変わりない。

 成る程、美羽だ、と竜軌は思った。



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