おにぐも
おにぐも
斎藤義龍の生まれ変わり、朝林秀比呂が、新庄竜軌を殺傷せんとして使った刃物。
消えた謎の凶器。
それは神器と呼ばれる、神つ力に満ちた武器。
意思を持ち、主の声に従って現れ、役目を果たすと闇に帰る。
秀比呂の神器は、名を鬼雲と言った。
鬼雲は繊細にして鋭敏な性質の神器だった。
「一度闇に帰れば、血痕も、指紋すら消えた状態になる。朝林に神器を呼び出させたところで、凶器として提出することは不可能よ」
バレッタで長い髪をまとめ上げ、ラーメンを食べながら斑鳩が言う。
「ふうん。義龍ってさ、結構、莫迦じゃなかったって本当?」
チャーシュー麺を豪快に食べながら、嵐下七忍の一人の凛が訊く。ぱっちりした目に細い身体。二十歳になってもまだまだ少年の面影を残している。彼は一生このままかもしれないと斑鳩は思っている。
「らしいわね。戦術とか、家臣のまとめ方とか。優秀と評価されてたわ。人心掌握が巧みって、貴重な才能よ」
「うええ、厄介。頭の良い犯罪者って始末悪いよー、僕、嫌い!」
「安心なさい。私も嫌いだから。それに」
「それに?あ、斑鳩さん、それ、最後、スープ飲ませて」
「…塩分の摂り過ぎじゃない?若いのに高血圧になるわよ。それに、何だかこのまま、ずるりずるりと、あいつの思惑通りにことが運びそうに思えて―――――――」
怖いのよね、と斑鳩は呟いてれんげをチン、と置いた。




