表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/663

老いらく

老いらく


「そうか、条件すら出さんか」

「りゅうき」

「ふん、親父の奴、お前を怖がっているな」

「りゅうき?」

「そうだ。あの泣く子も黙る新庄孝彰がだ」

「りゅうき」

「うん、愉快だな」

 胡蝶の間の簾を上げ障子戸を開けた縁側で、美羽と竜軌は中秋の名月を観ていた。

 お団子の作り方は解らなかったので、マチにお願いすると大層、喜ばれた。

 そして月見団子を盛った白木の三方、黒備前焼の鶴首花入にすすきを活けて縁側に置いてみると、中々に雰囲気が出た。美羽も今日は竜軌とお揃いで、浴衣を着た。涼しいので藍色の羽織を肩にかけている。竜軌は浴衣一枚で平気な顔をして、美羽の膝枕でご満悦だ。

 やはり美羽の黒髪にじゃれてくる。それは放っておいたり適当にあしらったりするが、お尻や胸に手が伸びると、すかさずぴしゃりと叩いてやる。

 顔を睨めばにやにやと笑っている。ふざけているのだ。

 月は見事に真円で明るく、薄い雲も払っていた。

 虫も鳴いている。

 二人して団子に手を伸ばしつつ、月を見上げる。

「晴れて良かったな、美羽」

「りゅうき」

 美羽は唯一、発声出来る言葉を、疑問や相槌など様々に使い回した。メモ帳も使うが、なるべく発声に慣れようという考えもあってのことだ。

 竜軌はそれを不快に感じるどころか喜んでいた。

 一生、そのままでも良いぞ、などと言う。

「お前、婆さんになってもそうして座ってろよ」

 つんつん、と髪を引っ張りながら言う竜軌に、美羽は微笑む。


「りゅうき」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ