相性
相性
竜軌の懸念していた通り、美羽と草介は仲良くなった。
竜軌が裏通りを撮影している間、草介は美羽の護衛と称して仲良く二人で談笑していた。
「ここらへんはチンピラが多くて危ないっすからね!」
これが草介の言い分だった。
竜軌は彼らの仲の良さを、大人の寛容でどこまで大目に見れば良いのだろうと考えていた。苛立ちは竜軌の集中力を鈍らせ、彼はここ数日、思ったような写真が撮れていなかった。あんな小物にペースを乱されているという事実が、竜軌には不本意でならなかった。
彼がカメラを構える後ろで、「俺、仲間たちからは何でだか、どんな時代でも生き延び草介、なんて呼ばれてんすよ、あははははっ」と呑気な声が聴こえて来る。
くだらんと竜軌が思うのを他所に、美羽が手を叩いてバカ受けしている気配が感じられ、苛々する。美羽がお弁当を三人分用意するようになったのも、草介が当たり前のようにちゃっかり、広げたシートの上でそれを食べるのも、面白くなかった。ナポリタン喰ってろと吐き捨てるのを堪えていた。
「何とかしろ、荒太」
『カルシウム摂れよ。俺、そんなに暇人じゃないんで』
「報酬はやる」
『何でも金でカタつけようと思うな、魔王。自分で追っ払えば良いだろうが』
「それだと美羽が不機嫌になる」
『はは、ざまあ!』
通話はそれで切れた。
竜軌が手に持つ携帯は最新機種だ。
一時の感情で地面に叩きつけ、壊すのは愚か者のすることだ。
竜軌は愚か者にならないよう、努力してマインドコントロールしなければならなかった。
静かに、握力を強くするに止めたが、それでも携帯はミシリと悲鳴を上げた。




