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お説教その二

お説教その二


「嘆かわしい」

 弟たちの愚行を知った蘭は、そう口にした。

「お前たちは、己の立場というものを解っていない。いや、弁えていない。御方様が間違った方向に進まれようとした時には、お諌めするのが忠臣としての正しい在り方であろうが。違うか?いや違わない。それをお諌めするどころか進んで悪戯に加担し、仲良しこよしで土埃に塗れるとは……大兄上たちにも子孫にも森家のご先祖にも、私は顔向けが出来ない。そも森家は、遡れば清和源氏にも縁ある名家であり―――――――」

 兄・森蘭丸成利のお説教は、一旦、始まれば長い。

 森坊丸長隆はそれをこうべを垂れて聴く殊勝さと忍耐強さを有していて、森力丸長氏は目を自然に開いたまま、寝息すら立てずに眠る芸当が得意だった。

 どうして兄上たちは俺ばかりをバカスカ殴る、と常々不平を言う力丸が、自業自得だ阿呆、と一蹴されるのにはそれなりの理由があった。

「―――――そして我らが末弟・忠政(ただまさ)の息子、忠広(ただひろ)が徳川家から妻に迎えたのが、力丸、誰であった。答えなさい」

「はい、亀鶴(きづ)姫です、兄上」

 ハキハキと力丸が答える。

 蘭は重々しく頷く。

「そうだ。亀鶴姫だ。したが姫は儚くも夭折し、忠広は哀れにも――――――」

 問いを出される寸前まで熟睡していながら意識が覚醒した瞬間、野生の勘で正答を口にする弟の特異能力を、お小遣い三か月分積んでも欲しい、と坊丸が思うのはこんな場面においてであった。



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