表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/663

目の前に、

目の前に、


「あんた、相変わらずサドやなあ。濃姫もどちらか言うたらSやさかい、ぶつかればこじれるんは目に見えてんのに」

 呆れた口調で荒太が言った。彼が関西弁を喋るのは、竜軌の耳にも懐かしい。

「好きな子苛めにはちいと年が行き過ぎやないですか?」

「口が滑った」

「はあ、口が。手も、素早い動きで」

「手も滑った」

「はあ、手も」

 茶々を入れてから荒太は吐息をこぼし、赤い手形のついた竜軌の左頬を眺める。

 日頃、尊大な態度で通している人間が痛い目に遭うのは、気楽な第三者としては愉快と言えないこともないが。

「…そない嬉しかったですか」

 目の前に、焦がれた人が立っている。

 その喜び。

(求めた年月が長いほど、か―――――)

 荒太にも覚えのある感情だ。

 しかし美羽には通じていないだろう。そこが難だ。

「とりあえず、フォローしたらどないですか?その左拳の中にある、香り袋でも渡して。んー、ええ匂いや。最上級の伽羅やな。蘭奢待(らんじゃたい)ほどやないやろけど、金持ちはさすがにちゃうわ」

「お前は目端も鼻も利き過ぎて、たまにぶった切りたくなる」

 ぎらりと竜軌に睨めつけられて、冷たい月のように荒太が薄く笑う。

「そらおもろい。出来るもんなら、御随意に?にしても真白さんたち、どこ行ったんやろなあ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ