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前方

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 竜軌の身体が長時間の移動に耐えられるようになるまで、それから半月の時間が必要だった。それでも医師の言葉では、驚異的な回復力だと言う。

 九月の初め、美羽は竜軌たちと共に新庄家に帰ることになった。

 明日は東京に発つという前の晩、美羽は外に出て、ひまわりの敷地内にある黄色いジャングルジムを眺めていた。

 美羽はそのジャングルジムがお気に入りで、中学に上がってからもまだ、登っていた。

 日暮れ時が多かった。

 空に星が浮かび始めるころ。

 自分の身体もそのように、浮かんでしまえるのではないかと、有り得ない期待を抱き、そんな自分を一方では空しく笑っていた。

(星君は、名前みたいに、私の中で明るく光る男の子だった)

 美羽がジャングルジムに座っていると、決まったように星もよじ登って隣に座る。

 何も言わず、ただ横にいるのだ。

 それだけで、どれほど救われたか解らない。

(なのに。あんな強引な女ったらしを好きになるなんて、とんだ誤算だわ)

 星とは全然違う。

 黄色くて、今では小さいと見えるジャングルジムには雨で錆びている部分もあった。

 触ると冷たく、ザラザラする。

 もうきっと、ここを家とすることはない。

(…さよなら)

 ひまわりと、星と、小さかった美羽に、お別れを言った。

 涙が出るのは仕方がないと自分を許した。



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