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女たち

女たち


 家政婦に付き添われ、夕刻に新幹線新潟駅に着いた新庄文子はタクシーに乗り、息子を収容した病院に到着した。真白は病院の入口で彼女を出迎えた。

「ああ、真白さん。あの、あの子、竜軌は、竜軌さんは、」

「今、手術中です。血が足りなかったんですが、美羽さんが献血してくれて」

「美羽さん、一緒なのね。…美羽さんは、大丈夫?」

「怪我はありませんが、ショックがひどくて」

「そう、そうよね。そうよね。それは、無理もないことです」

「とにかく、文子さん、こちらへ」

「ええ、参りましょう、三谷さん」

「はい、奥様」


 集中治療室から出て来た医師の顔には、暗いトンネルを抜けた明るさがあった。

「出血が上手い具合に治まりまして。後遺症の心配が若干、残りますが。命に別状はありません。安心なさってください」

 それを聴いた文子は、ふら、とよろめき、そのままふう、と気を失った。

「奥様っ」

 家政婦が叫び、後ろにいた剣護が文子の身体を危なげなく支える。

 更に剣護のずっと後方から、彼らに向けて呼びかける声があった。

「―――――真白さん」

 真白は夫の声に振り向いた。

 息せき切って駆け付けた荒太に、覚束ない足取りで歩み寄る。

 最もいて欲しいと願う存在が、真白の願う通りに来てくれた。

 殺伐とした状況のあと、それを奇跡のように感じる。

「…荒太君――――――、荒太君。来て、くれたの…」

「当たり前だよ」

 荒太は言いながら真白を抱き寄せる。夏だと言うのに冷え切った妻の身体に、自分の温もりを分け与えるように。

 やがて、真白の嗚咽が静かに響き始めた。

 

 ただ一人、気丈に立つ美羽を、怜が眺めていた。



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