明るい日
明るい日
「太郎兄」
明るく日の差し込む病院内の廊下で、秀麗な顔が剣護を呼ぶ。
「次郎。御苦労だったな」
怜は真白の様子を遠目に見てから答える。
「…いや。成瀬と成利どの、市枝さんもこちらに来るそうだ。新庄夫人も」
「そうか。荒太がここにいないのは痛いな」
今の真白には彼が必要だ。
「あの変態は?」
「警察。当然だろう。もう、世間を大手を振っては歩けないよ。斑鳩さんもいることだし、彼の裏の顔を究明し暴いてくれるだろう」
ガラス窓の前の手すりに、剣護は両手を置いて腰掛ける。
「………誰かの為に、命を懸けるようなキャラじゃないと思ったんだがな」
「新庄のこと?」
「ああ」
「濃姫だけは、例外だったということだろう。俺はそのことが、新庄の心を救っていると思うよ。弱点になる人間を持たない奴なんて、自分で気付いてなくても孤独に悲鳴を上げてるに違いないんだ。でなきゃどこか、壊れてるんだよ」
「しかしな、あいつがもし死んだら、俺は美羽さんにも真白にも、会わせる顔が無いよ」
剣護は言いながら天を見上げた。
眩しい日が外を歩く人間を照りつける一方、死と格闘している命がある。
「死なないよ」
断言する怜を剣護は見る。
「言い切るね、お前」
「うん。自信があるよ」
「何でさ」
怜は切れ長の目を細め、口角を釣り上げた。
「言うだろ?憎まれっ子、世に憚るって」




