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「冬木先生」

 星は玄関ホールの隣にある職員室に入り、信夫に声をかけた。

「お、星君。どうした?今日は、バイトは」

「夕方からです。あの、これ」

 星が信夫に差し出したのは、厚い原稿用紙だった。

「ん。これは?」

「…美羽が、渡しておいてくれと。新庄家で過ごした日々の出来事が書いてあるようです。渡すのが、少し、遅くなってしまいました。すみません」

「―――――そうか。ありがとう。読んでおこう」

 信夫が不自然に感じるくらい、星は深々とお辞儀をしてから職員室を出た。


 ビルが立ち並ぶ十字路の一角で、竜軌と美羽は信号待ちをしていた。昼をどこかで食べようと竜軌が言い、携帯で検索して評判の良かったイタリアンの店に行くことになった。

 竜軌が慣れた物言いで予約する声を、美羽は聴いていた。

 雑踏。

 人の声、声、声。

 美羽に出来ないことを、当たり前に出来る人々。

 はぐれないように、竜軌は美羽の手を握ってくれていた。

 信号が青になる。

 歩き出そうとした美羽は、動かない竜軌の手にクン、と引かれる形となり、踏み出せなかった。

 竜軌はいつもと変わらない顔をしていた。

 ズ、ル、と鈍い音が響いても。

 腰のあたりから赤いものが溢れ、美羽に身体が倒れ掛かる時も。

 竜軌は美羽にぶつかる寸前、ふいと彼女の身体を避けた。

 ズシン、と前のめりに倒れた竜軌の周囲、あちこちで悲鳴が上がった。



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