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名の知ろしめす
名の知ろしめす
その日は海岸で岩場に座り、坊丸と力丸とも話した。
〝坊丸の、神器の名前は、〟
「雨煙。雨に煙と書きます」
〝力丸のは〟
「清流。清い流れと書きます」
美羽は笑顔になる。
〝両方、キレイな名前だわ〟
兄弟の顔に誇らしいような表情が出る。
〝蘭のは?〟
「成利兄上のは、砕巖。巖を砕く、と書きます」
〝とても強そうね〟
坊丸は頷く。
「強いですよ。兄上の砕巖で斬れぬ物は、そうはございません」
〝六王より?〟
坊丸は間を置いて答える。
「硬い物を斬ると言う点においては。真白様の雪華にも張るでしょう」
〝真白さんも、神器を持つのね〟
「恐らくは最強の」
これは力丸が言う。
〝何て言う名前なの?〟
「雪華。雪に華やか、と書く。懐剣です!」
答える力丸の目には憧れがある。
〝それもキレイな名前。真白さんにぴったりだわ。竜軌より強いの?槍より、懐剣のほうが?〟
美貌の兄弟が二人して黙ったのち、坊丸が言った。
「およそこの世に存在し得る神器で、雪華より強いものを我らは知りません」




