ユー・テル・ア・ライ
ユー・テル・ア・ライ
兵庫が竜軌と美羽に怪我は無い、と報告すると、真白は安心したようだった。
「斑鳩はまだ署のほうに。色々と根回しもあるようで」
「解った。ありがとう、兵庫。引き続き」
「はい、承知しています」
忍びの男を見送る妹を剣護は見ていた。
「…あんまり気を張り過ぎんなよ、しろ」
一っ風呂浴びたあとなのか、宿の浴衣姿の兄を真白は見返す。
「…相手が相手だもの。気を抜けない」
「はい、はい。おいで」
腕を広げると焦げ茶色の頭が柔らかに寄る。サラサラ、と髪が鳴る。
兄の胸で、真白は目を閉じた。
「知ってるのよ、剣護。私に隠し事してることくらい」
「へえ?そりゃ、お前の考え違いだ」
真白がむきになる。
「剣護は嘘吐きだもの」
「色々、根に持ってんなあ」
剣護の笑い声を聴きながら、温もりに甘える。
「今、荒太に会いたいって思っただろ」
「うん」
「憎らしい子!」
「剣護も大好きだよ。荒太君には負けるけど」
「憎らしい子!」
世の男性は大抵、保身の為に嘘を吐く。
社会に対して、恋人、妻に対して。
けれど真白の知る男性は。
荒太と剣護の嘘は、真白の為に。
そして竜軌は、美羽の為に嘘を吐くのだろう。
もちろん全てがそうではないにしろ。
忌むべき嘘、偽りが、愛の証となることもある。




