表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/663

終わって、始まる

終わって、始まる


 竜軌たちが、命を奪わずにことを収めようとしたとは、襲撃者たちが皆、地に打ち臥してから判った。兵庫の持つ鎌の刃にも、血の赤は無い。

 美羽は息を吐いた。彼らが人の命を奪うと考えると、怖い。カーブを描く内側の刃を兵庫は使わなかったのだ。専ら鈍器のように扱ったのだろう。

 竜軌の手にしていた六王も、坊丸らの刀もふいと消える。

 それから場面は一転して、闇から海岸に戻った。

 波音が耳に戻る。潮の香りが戻る。


「あとはお前らに任せる。警察への事情説明は、よくよく言葉を選べ。斑鳩を介せば話も通りやすかろう」

 竜軌は平然とした顔で、主に兵庫を見ながら言った。

 言う、より、命じる、のほうが似つかわしい声で。

「丸投げですか、新庄さん」

 兵庫は、竜軌の下請けの下請けのような立場なのだ、と先日、冗談のように美羽に言っていた。間に真白たちと言うワンクッションが入るから、蘭たちほど竜軌に服従しないということなのだろうか。

「俺は美羽とデート中だ」

 渋面で苦情を言った兵庫に対し、竜軌がこの理由では仕方あるまい、と堂々と掲げた台詞に、美羽は何ともいたたまれない気分になった。

 兵庫のシャツの袖を引き、メモ帳を見せる。

〝ごめんなさい〟

「…いいえ」

〝いつも、ガード、してくれてるのね、ありがとう〟

「主命ですから」

 兵庫は軽く笑って言った。

〝坊丸と、力丸も、ありがとう。心配、してくれたのね〟

 少年らも破顔した。剣を振るっていたのと同じ人物とは思えない、年相応の笑顔だった。

 それから美羽は竜軌に飛びつく。本当は一番最初に飛びつきたかった。

 スーツ姿で槍を振るい、守ってくれてありがとう、と。

 届いただろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ