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花いちもんめ

花いちもんめ


 今日はお風呂に入ることが出来た。髪も洗えた。

 美羽はホッとした。部屋で机の前の椅子に座り、夜風に吹かれながら、机上に伸びた山尾を撫でてやっていた。

 猫の滑らかな被毛の手触りが、癖になってしまう。山尾は山尾で、至福、と言う表情だった。撫でる手を止めると山尾は、もうお終いですか?と言う顔をする。それに頷き、机の引き出しから丸いケースを取り出す。

 金木犀の練香水。

 右手薬指で少し掬うと、左手首に摺り込むようにつける。

 竜軌の言っていたように海岸を散歩するのなら、潮の匂いと喧嘩してしまうだろうか。却って妙な匂いがすると思われるだろうか。

〝お前の匂いなら、大概、何でも良いから〟

 竜軌はお世辞やおためごかしを、舞台の下では言わない。だからあれは、彼の真実だ。

(私に関する、と言うだけで、竜軌は、たくさんのことを受け容れる)

 容量をぐんと広げてくれる。

 強くて美しい竜に、こんなにも特別扱いされて、優越感や幸福感を抱かないほうがおかしい。

(私には、誰かを全てと思う日なんて、来ないと思っていた)

 竜軌は、全てとは行かないまでも、それに近い存在だ。

(…竜軌の中では、私はどれくらいの割合を占めるんだろう)

 誇り高い彼の。

 波のように、出来得る限りを侵食したいと思う。

 丸いガラスケースを握り締める。

(あの人が欲しい)

 


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