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ラブレター

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 美羽は美羽で、自分に出来ることを試みていた。

 律子に頼んで、貰った原稿用紙に、これまで新庄家で過ごした日々の出来事を綴った。決して竜軌や孝彰に惑わされているのではなく、自分自身の意思であの家で暮らし続けることを選び、幸せだったことを、記憶の許す限り事細かに記した。ただ途中から、自分が竜軌に抱いた恋愛感情が如実に判る文章が続くことになり、書きながら恥ずかしくもあった。パソコンではなく手書きにしたのは、そのほうが思いが伝わると考えたからだ。偽のメールの一件以来、電子機器に対して不信感が芽生えていたせいもある。

 枚数を費やしたそれは、やっと今朝、完成した。

 これで新庄家の人たちの潔白を証明出来るだろうか。彼らに降りかかった疑惑を拭い、汚名を雪ぐことが出来るだろうか。毎日、美羽の様子を見に来てくれる真白が、冷たい目で見られることは無くなるだろうか。

「美羽」

 机から顔を上げると星が立っていた。

「…また目の下に、隈が出来てる」

〝怖い夢を見るの〟

 竜軌と共に寝ていた時には遠ざかっていた悪夢。

 白くて大きくて滑らかな手が、美羽を追いかけて来る。必死で逃げて逃げて、目を覚ましてから眠れない。そんな夜が続いていた。

「先生に相談する?」

 美羽は首を横に振った。

 この悪夢は竜軌でないと追い払えない気がした。竜軌でないと、立ち行かない物事が美羽にはたくさんあるのだ。離れてから思い知る。

「これ、書き上げたんだね」

 星が原稿用紙の束を見る。美羽は頷く。

「冬木先生に渡しておく?」

〝先生、今、いないの?〟

「うん。出かけてる」

 美羽は考えた。そろそろ真白が来る時間だ。信夫にいつ渡せるか解らない。

〝お願いできる?星君〟

「良いよ」

 星は笑って請け負った。



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