表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/663

声を弾く

声を弾く


 時々、ずっと昔はお菓子の入っていた四角い銀色の缶の蓋を、開けては眺める。

 

 桃色のおはじき。

 白に黄色のかかった光るビー玉。

 保育園で貰ったマラソン大会のメダル。

 良い香りのする消しゴム。

 金色の折り紙。

 七色の鉛筆。


 他愛もない物ばかり。けれど自分には、どれも大切な宝物。


「またそれ見てんのか、美羽」

 優しい顔で笑いかける少年の顔を見る。

(ほし)君〟

「もうすぐ食事だってさ。行こう?」

 美羽はコクリと頷き、缶の蓋を元に戻した。


 灰色の海岸に日が差す気配は無い。濃い岩陰の色はグレーだ。

 波打ち際を歩きながら、美羽は顔を上げる。

 時折、誰かに呼ばれている気がする。

 自分を呼べ、と。

 誰かが。

 急くように。

 焦がれるように。

 愛情と言う、幻のように。

 彼女は嗤う。

 そんなまやかし。作り事。


 ――――――私は騙されない。決して呼ばない。

 嘗て愛は、私を傷つける為にあった。そうして私を裏切った。


 緩くうねる長い髪が風になびく。

 それを手で掻き遣り、暗色のワンピースを着た少女は、虚ろな目で波打ち際を歩き続ける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ