序文
序文
――世界は、一つではない。
“揺りかご”の中はいくつもの世界で犇めき合っている。
ある世界では風を泳ぐことができ、
ある世界では距離という概念が存在せず、
ある世界では個性というものがない。
一世界にはその独自の常識があり、その常識はその世界の住民には慣れ親しんだものである。
他の世界へと渡った時もそれは変わらず、人々はそれを“異世界の常識”『異界常識』と呼び、ほかの世界へと渡る者たちを“異世界の旅人”『イレギュラーズ』とよんだ。
ある時、異世界の外から異世界を眺めていた一人のイレギュラーズが二つの異世界の衝突を目撃する。
二つの異世界はその境界をゆっくりと混じり合わせたかと思うと、次の瞬間には反発を起こして大爆発を起こした。
その爆発に巻き込まれた異世界の数は実に30を超え、消滅を免れた異世界は無く、居合わせたイレギュラーズたちの決死の救出により32個の世界合わせて数京を超えていたであろう生命体は数100体程度しか生き残ることができなかった。
事態を重く見たイレギュラーズたちは『世界調和機構』を設立、異世界間を衝突させないことを使命とし、衝突寸前の異世界を滅ぼし消滅させることを主な任務としている。
それが我々というわけだ。おおむね理解してくれたかな?
…よろしい。では新米“イレギュラーズ”君。君に最初の任務を与えよう。
滅ぼせ、世界を。ただ、世界を救うために。