プロローグ
昔のとある偉人はこう言った。すべての人間の一生は神の手で描かれた物語である。
第一章 失われた現代世界
夏の暑さもだいぶ収まってきて、ここ二年八組の教室に心地よい風が窓際にかけられたカーテンを押しのけて入ってくる。
今日は修学旅行前日の荷物検査の日、連日の着替えなどの荷物は事前に宿泊するホテルへ送るために、重いキャリーバックを駅から苦労して転がしてきたのだ。
生徒指導部の先生の一連の諸注意を体育館で聞き荷物を運送トラックに押し込む、そして今年担任に就いたばかりの新任の先生をHRの時間まで教室待っている状態。特にすることもなく、友人と何気もない会話に興じる。
修学旅行前日という点を除けば至っていつもと変わらない日常。
だが別に自分はこの日常に不満を持っている訳でも無い、逆に満足さえしている、それなりの学校へ進学でき、それなりのクラス。
部活での成績もほどほどに良い程度。そう、何も不満は無い・・・何も。
強いて言うとすれば・・・うーん。強いて言う程の事は無いか。
まぁ、そんな事より、高校の修学旅行も京都とは、中学の時に一度行ってしまったからあまり、初めてだから楽しみ~、だとかの面白みは全くないが、中学の時とは違う友達と行く楽しみがありそうだ。
私たちの学校は二年生総勢でひとクラス三八人で八クラスもある。
私は第八クラスに所属している。クラスの雰囲気はとても良い、いくつかに派閥が分かれてしまってはいるが、体育祭などでは準優勝をたたき出すくらいの団結力がある。
まぁぶっちゃけこのクラスにはみんなを引っ張っていってくれるリーダー格の男子が成績、運動、人間性が共にハイレベルというのもあるがな。
なにはともあれ、個性は強いがイイクラスである事は間違いないな。
さて、そろそろHRが始まる頃だ、これが終われば今日は家に帰り、夕食を食べて、熱い風呂に入り眠る。いつもと変わらない日常だ。
日常とは素晴らしいものだな・・・別段私はイケメンでもないし、身長がとりわけ高いでもないし勉強もバツグンにできるわけでも無い、女性にモテる・・・とも思えないな。
けれども普通の家庭の一般水準に達しているであろう給料を持ってくる優しい父親に毎朝朝食を作る専業主婦の母親、せわしないが活発な弟がいる。これは幸せな日常を過ごしていると言っても過言ではないだろう。
日本のこの平和な日常を凄く気に入っている。日本の・・・とは言ったが別に外国から来た訳では無いが
ただ最近の一つの悩みを抱えているのだ、いや、私の日常に支障をきたす程の事では無い、思春期の学生には一つ二つ悩みを持って当然だろう。その程度の軽い物なのだが・・
最近ほぼ毎日妙な夢を見るのだ。
ものすごくリアルで生々しい夢を毎日見る。内容は一面野原、私はただただ歩いているだけ、なのに次第に野原を歩いていくと景色が変わる。
辺り一面焼け野原それとおびただしい数の動物の屍体
血 血 血 血 血 血 血
それと人間らしき者の悲鳴 怒号 狂気に満ちた動物が唸りをあげる
そしてまた血
私の視界ほとんどが血の色。
私は人間らしき死体に近づいた、もう既に四肢は全て吹き飛んでいる人間、人間らしきもの、その顔を私は見てしまった・・・なんの躊躇もなく死体の顔を見るのはどうかしていると思うが、夢の中なのでそこらへんの感覚は曖昧だった。
顔はよく知った顔だった
ただのクラスメイトの顔がそこにはあった、目を見開いたまま微動だにしないだるまがそこにあった・・・・
私は・・・私は・・・一体何を見ているのだ?
訳がわからない・・・解らない
気がつくと辺りが静かになっていた・・・
私を除いたクラスメイト三七名分の死体がそこらじゅうに転がっている
いや・・・三七などではない・・・・一〇〇以上の死体が―――――――――
「グルルルルルッ・・・」思い唸り声がすぐ背後から聞こえてくる、ピチャピチャと血の滴る音がすぐ後ろまで迫ってきて・・・
「―――――ッ!」・・・・・・・・・・グシャッ・・・・
ここで夢はおしまいなのだ・・・・。食べられて終わる夢。
タベラレテオワル