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6、バナナコロシアム決闘直前

 時刻は11時30分。

 私はバナナ自動車でバナナコロシアム入り口までやって来た。

 車から降り、力強く大地を踏みしめる。

 途端、大音響が響き渡る。

 すぐに私はそれがバナナコロシアム内から聞こえてきたのだと気づく。

「馬鹿な。この決闘を知る者はほとんどいないはず……」

 まさか、妖怪がこの決闘を国民にばらしたのか。

 苦虫を噛み潰した様な顔をして私はバナナコロシアムの入り口をくぐる。

 バナナコロシアム、この場所は年に一度、強者達が集い戦う武術会が開かれる。

 この武術会は王国建設当初からあり、伝統あるものだ。

 そして優勝者には名誉と一生遊んで暮らせるだけの莫大な金を手にすることができる。

 武器に制限はほとんどない。バナナコロシアム内の内壁には色々な種類のバナナの木が壁に沿って埋めてあり、そのどのバナナを武器として使っても良い。

 競技場へ向かう廊下を歩いていると、緊張感とは裏腹に、バナナの甘ったるい香りが鼻腔を刺激する。

 私が競技場に姿を現すと、割れんばかりの大声援が起こる。

 敵の姿を探すが姿は見えない。

 その時、バナナコロシアムの観客が一斉に空を見上げた。

 私も空を見上げると飛行機が飛んでいて、その後飛行機から何かが落ちてくるのが目視できた。

 しばらくすると、パラシュートが開きこの競技場へ向かって来るのが分かった。

 妖怪だ。体には木箱の様な物がくくりつけられている。

 静かに降り立った妖怪は、体からパラシュートと木箱を切り離す。

 木箱の隙間から目が見え、すぐに叫び声が聞こえた。

「バナ王! バナ王! 私よ、バナ子よ。早く助けて」

「今助けるから、少し待っててくれ」

 私はバナ子にそう言い、妖怪に向き直る。

「車で誘拐するやら、飛行機から降りてくるやら変な妖怪だな」

 私がそう言うと、妖怪は鋭い牙が生えている大きな口をバナナの様に曲げ薄く笑った。

 私は妖怪をさっと上から下まで一瞥する。

 髪は黄色でボサボサ、顔の大きさは一般的な成人男性の3倍はあるだろう。筋肉はまるでマウンテンゴリラ、服は上半身裸で胸毛が見えている。短パン一丁、鋭い牙と鋭い両手足の爪、身長はあるのだろうが猫背になっているので、私とそんなに大差はなく見える。

 開始まで後1分。私は背中の鞘から伝説の武器を微かな音を立て抜いた。


  

 


 

 

 

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