【短編版】追放された聖女、怒りのままに木を殴ったら森が破壊された件
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しんと静まりかえる部屋の中、ロゼはもう一度聞き
間違いではないかと聞く。
「ナターシャ、今なんて?」
「ロゼ、貴方を追放いたしますわ。と、言いま
したの。」
ロゼはぽかんと口を開ける。
「え?嘘でしょナターシャ。私達今まで…」
「貴方はね、まず聖女なのになんにもできない。
貴方なんてね、馬鹿よりも聖女の才能なんてない。
いい?わかった?もう二度と私の前に現れない
で!」
ナターシャは勇者パーティー【不死鳥の舞】の
リーダーだった。
優秀な魔法使いで、いつも皆を引っ張っていた。
ロゼは、ナターシャと自分は仲良しだと思って
いた。
でも、そんな妄想も今のセリフで打ち消された。
聖女の自分、ロゼも自分の無能は自覚していた。
でも、これはあまりにも酷かった。
「くそっ、くそっ、くそ!」
ロゼは森の中で叫んでいた。
「そんなの自分でもわかってるよ。才能ないって。
だから努力してんのに、なんの成果もない!」
せめてもの腹いせで、木を殴った。
ヘロヘロの情けない一撃。…と、本人は思って
いた。
ドッガーン!!!!!
ロゼは目がおかしくなったのかと、一度目を伏せ、
また開けた。
どう見ても、さっきまであった森がない。
夢?
そう思って頬をつねるが普通に痛い。
「…なんだこれ。」
呆気にとられるしかなかった。
「…いやもう神様仏様冗談はやめてください。
まてまてこれは私が怪力ってことになるよね?なる
よね?」
ロゼは自分の手を見る。白い、華奢な手だ。
「この手が、森を破壊した?ないない。」
…でも、この光景が真実を語っている。
しばらく考え込んでから、ロゼは天を仰いで
言った。
「あー…もう私の才能偏りすぎでしょ。だから
聖女とか向いてなかったわけね。」
…もう、信じるしかなかった。
それからロゼは、周辺に飛び散った木の破片などを
かき集めた。それに向かって、
「殴ってごめんなさい。」と言い、その場を後に
した。
…もし自分に、聖女の才能があれば、この森を
元通りにすることができたのだろうか。
そう思い、自分のこの偏った才能を呪うことしか、
ロゼにはできなかった。
「…この力を、どうやったら有効活用できるか
なぁ〜」
本来ならこの力を有効活用できる方法は数え切れ
ないほどあるはずだけど、ロゼは自分ができること
が森を破壊することくらいなのを悔しいと思うその
気持ちをこう考えることで抑えていた。
「もうやだ…なんでよりにもよって聖女と関係
ない…というか真反対のこの力を持ってるの…。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロゼは、幼い頃瀕死の状態にあったのを、通り
すがりの聖女に助けてもらったことがある。
「お姉さん、助けてくれてありがとう。」
「いいのよ、聖女として当然のことをしただけ
だし。」
「聖女…当然…」
「そうよ。聖女って、なるまでも努力や苦労で大変
だし、解呪とか回復とか魔力消費が激しくてすごく
大変だけど、それをやった後にみんなの笑顔を見る
のが好きなの。」
「…お姉さん、かっこいー…」
(…私も、かっこいいって思われる、感謝されるよう
ないい人になりたい…!)
「お姉さん、私、聖女になる!」
「…そう。大変だろうけど、頑張って!」
「うん!努力とか苦労とか乗り越えて、絶対すごい
聖女になる。約束。」
あの聖女さんと約束したから、絶対すごい聖女に
なるんだ。そう、硬く決心していた。
…でも
『あなたは聖女じゃなくて、ほかの役が向いてる
かもね?』
『そんなんで聖女名乗るとか、ほかの聖女の恥
だわ』
『貴方はね、まず聖女なのになんにもできない
の。』
世間は聖女の才能がないロゼは、聖女を名乗る権利
なんてないと言った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「これじゃ、あの人…聖女さんとの約束…果たせ
ない…。」
普通なら喜ぶはずの人外な力。
しかし聖女を目指していたロゼにとって、これは
ありがた迷惑だった。
「ねえ…神様…なんで、私にこんな力を与えたの?
私はこんな…物を破壊するような力は…欲しくない
のに!」
ロゼは、無意識に地面を叩いていた。
メキメキメキッ
「…あ…床凹んじゃった…。」
ロゼは死んだ魚のような目で、凹んだ床を見つめて
いた。
「…あれ、なんか光ってる?」
ロゼが凹んだ床の光っている部分をつまみ上げて
みたらー…
「…なにこれ、アイテム?」
『神の欠片 レアリティー∞
神の欠片を使ったものには選んだ神と同等の力が
与えられる』
「…なにこれ、なにこれなにこれ!最強のアイテム
じゃん!」
(選んだ神…?ってことは、聖女の神とか選べる?)
「私、すごい聖女になれる…?」
ロゼの目には、ありったけの希望で満ちていた。
『努力とか苦労とか乗り越えて、絶対すごい聖女に
なる。』
「……努力や、苦労?…それを乗り越えて、やっと
すごい聖女になるんじゃん。」
(なのに私、アイテムで簡単に聖女になろうと…)
ペチン!
「しっかりしろ!私!初心を忘れるな!」
(何かしらで私でも聖女になる方法があるはず!)
「よしっ!頑張ってみますか!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
天上界視点
「あらあら、面白い子ね。」
「どうしました?聖女の神様。」
「いや…。神の欠片を見ても使わない子がいて
ね。」
「は!?あれを見ても使わないって!?」
「落ち着いて大地の神様。」
「これが落ち着いてられますか!?」
大地の神は声を荒げる。
「…あの子、今日から私のお気に入りね。神の
スキルを授けたいけど…あの子はそれを望んで
いない。」
「じゃーどうするんですか?」
「あの子が…聖女になりやすいよう、土台を作る
わ。」
「…協力します。」
聖女の神と大地の神は、熱い握手を交わした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
…天上界でそんなことが起きているなんてまったく
知らないロゼは、その頃解呪の練習をしていた。
「ああもう!なんで解呪の対象が壊れるのよ!」
もうかれこれ2時間以上ロゼはこうしているが、
成功したのはまさかの0回。
よくわからない初心者でも2時間あれば1回くらいは
解呪できる。
ガサッ
「何!?…て、風?だよね?だってなにも
いないし。」
しばらく首を傾げていたが、そのうち
「ま、風だよね!」とひとりでに納得して、解呪の
練習に戻った。
「…バレてないようですね、聖女の神様。」
「ええ。まったく、ロゼは上級魔物がうようよいる
森で解呪の練習をするとか…私達がいなければ練習
どころではなかったわよ。大地の神様。」
…聖女の神のお気に入りになった、聖女を目指す
少し危なっかしい怪力少女は、神に見守られながら
今も努力を重ねていることでしょう。
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