第七話 人都ヴェルオリオン
第七話を投稿します。よろしくお願いします。
改律神アウレリウスを倒してから数日。
崩れ落ちていた街は少しずつ息を吹き返していた。
「勇者様!この瓦礫どこに運んだらいいですか?」
「勇者様!材料が足りないんですが……。」
レイは言う。
「知らん。こいつに聞け」
レイはいつもこんな感じだ。
「えぇーっと……。」
おかげで俺はかなり苦労している。
今や街のご意見番だ。。
「お疲れ様、はい。お茶。」
「アリアか。ありがとう。」
あれからアリアは復興作業を手伝ってくれている。
「村には帰らなくて良いのか?」
「うん。とりあえず今は皆で協力しないとね。」
「しかしまあ。ひどい有様だよな。」
俺は街を眺める。
崩れた壁
折れた街頭
歪んだ街
改律神が殆どやったとはいえ、俺らのせいでえらいことになってしまった。
「あれだけのことがあったんだもん。しょうがないよ。でも私は今のこの街のほうが好きだな。」
「そっか」
子供たちは瓦礫の山の横で走り回っている。
子供たちが笑っている。
市場では簡単な屋台が並び始めていた。
焼いた肉の匂い。
野菜を並べる農民。
「安くしとくよ!」
「ほんとかよ!」
笑い声が広がる。
「信じられるか?神を倒したんだぜ?」
「ハハハハハ!!」
酒場では昼から酒を飲む男達。
平和が、流れている。
光景を俺たちはそっと見守っていた。
その瞬間、
ふ、と
風が止まり、
空が避けた。
「ねえ、何あれ――」
裂け目の奥から、白い光が溢れ出す。
その光の中から――
何かが降りてくる。
ゆっくりと。
静かに。
まるで世界そのものが頭を垂れているかのように。
地面に足が触れた瞬間、
空気が、震えた。
その場にいた全員が本能で理解する。
格が違う。
神だ。
神は周囲をゆっくりと見回した。
壊れかけた街。
瓦礫。
そして人間たち。
その視線が止まる。
灯陽の前で。
しばらく沈黙が続いた。
やがて神は、静かに口を開く。
「お前が――灯陽か」
声は大きくない。
だが街の隅まで響いた。
灯陽は一歩前に出る。
「……そうだけど」
神は、少しだけ笑った。
「なるほど」
「確かに面白い」
周囲の人間たちは息を呑む。
「神を殺した人間」
「何を言ってる、やったのはあいつだろ。」
俺はそこで構える黒の騎士を指さした。
「否。奴はただの貴様の剣にすぎぬ。」
「神をも殺す強大な意思は、確かにお前から感じた。」
アリアが一歩前に出る。
「……何をしに来たの」
神は答えない。
代わりに、静かに宣言した。
「選定だ」
街がざわめく。
神は続けた。
「おまえたちは、神を殺した」
「ゆえに罪人である」
誰かが叫ぶ。
「ふざけるな!」
「俺たちはただ――」
その言葉は途中で止まった。
神が、指を軽く動かした。
次の瞬間。
遠くの建物が、音もなく崩れた。
粉のように。
沈黙が落ちる。
神は淡々と言う。
「騒ぐな」
「まだ話は終わっていない」
神は灯陽を指さした。
「お前は気に入った」
灯陽は眉をひそめる。
「神を殺すほどの意思」
「人を導く力」
「弱き体に見合わぬ強き意志」
「すべて興味深い」
ゆっくりと手を広げる。
「ゆえに機会を与える」
街の人間たちが息を呑む。
神は宣言する。
「灯陽」
「我が国に来い。」
「そして、弱き者をーー」
「排除せよ」
――――――――――――
ザン。
目の前に剣が降り、刺さる。
「貴様と」
「貴様が強いと認めた者のみ我が国への入国を許す。それ以外は殺す。」
「さあ。今ここで、示して見せよ。」
……なるほど。
女子供も殺せってか。
それが神のやることかよ。
俺は口を開く。
「断る。」
その瞬間、空気が変わった。
「なぜだ。」
「なんでって。当たり前だろ。」
「俺だって弱いからだ」
神は静かに言った。
「そうか」
「ならば、見せてやろう。神への反逆の末路を。」
次の瞬間。
地鳴りが響く。
遠く。
街の門の向こう側から、低く重い振動が伝わってくる。
「……なんだ?」
誰かが呟く。
振動は次第に大きくなっていく。
ドン……ドン……ドン……
規則的な音。
まるで巨大な軍勢が歩いているかのようだった。
見張り台にいた兵士が、門の外を見て凍りつく。
「……軍だ」
震えた声だった。
「軍が来る!!」
門の向こうの地平線。
そこには土煙が上がっていた。
無数の旗。
無数の槍。
そして。
先頭にいたのは――
白銀の鎧を纏った騎士たち。
神紋が刻まれた鎧。
神の騎士団。
人々の顔から血の気が引いた。
「嘘だろ……」
「神は……もう……」
その時だった。
騎士団の列が、左右に静かに割れた。
その中央から、一頭の軍馬が進み出る。
白銀の騎馬。
重厚な鎧を纏った巨大な馬だ。
その背に乗る男。
全身を銀の鎧で覆った騎士。
背には巨大な剣。
騎士団長は、馬上からゆっくりと街を見渡す。
復興途中の家。
屋台の並ぶ市場。
戸惑う人々。
その全てを、見下ろすように。
やがて視線が止まる。
政庁の前。
灯陽に。
「……貴様が灯陽か」
低い声だった。
だが街全体に響いた。
灯陽は睨み返す。
「神託を伝える」
街の人々が息を呑む。
騎士団長の声が、冷たく響いた。
「神に逆らい」
「神を殺し」
「神の秩序を破壊した罪」
「この街――ヴェルオリオンは」
「滅びる」
静寂。
その言葉は、あまりにもあっさりしていた。
灯陽の眉が歪む。
「ふざけるな」
騎士団長の目が細くなる。
灯陽は一歩前に出た。
「この街の人間が何をした」
「神の都合で壊される理由はない」
騎士団長は、しばらく灯陽を見ていた。
そして。
静かに剣を抜いた。
「神に逆らう者に」
「理由など必要ない」
「我が名は――」
「神国騎士団長」
「アルトゥス・ヴァルグレイブ」
「神託に従い、貴様ら罪人を征伐する」
「騎士団よ。」
「この街を蹂躙しろ」
その瞬間。
騎士団が動いた。
門を破壊し、一斉に街へなだれ込む。
「全員地下に逃げろ!!」
灯陽の声が町に響く。
悲鳴が上がる。
騎士の剣が振るわれる。
衝撃波だけで家屋が崩れた。
市場が崩壊する。
騎士団の狙いは徹底的な街の破壊。
屋台が吹き飛ぶ。
「きゃあああ!」
逃げ遅れた親子の前に、騎士の剣が振り下ろされる。
その瞬間。
黒い影が割り込んだ。
金属がぶつかる轟音。
騎士の剣が弾き飛ばされる。
一瞬。
黒い斬撃が走る。
次の瞬間。
鎧が砕け、地面に叩きつけられる。
「早く逃げろ」
レイは振り返らずに言う。
母親は震えながら子供を抱き上げた。
「ありがとう……!」
別の場所で建物が崩れる音がした。
「助けて!!」
叫び声。
レイの目が動く。
「……くそ」
レイは歯を食いしばる。
再び駆ける。
瓦礫を蹴り飛ばし。
騎士を斬り。
人を守る。
だが。
その動きを、騎士団長は馬上から静かに見ていた。
「神殺しも守りながらの戦は辛いな?」
「貴様ら……。」
ばっと騎士団長は剣を挙げ、。
「騎士団よ!!聞け!!」
破壊行動がぴた。と止む。
「この者は神殺しの執行者也!!必ずや奴の首級を神の元に捧げよ!!」
オオオオオオオオオオ!!!!
異様な雰囲気に包まれる場内。
それを見ていた黒の騎士は、
「今のうちに逃げろ。」
とだけ伝え、高らかに、
「いいだろう。貴様らのような邪悪にはこの漆黒の英雄レイ=アルカディアが直々に殲滅してくれるわ!!」
レイから漆黒の圧。
闇。
闇。
肩には漆黒の翼。
レイの体が浮き上がる。
「なんと美しい。これが神を殺した力か。」
「陣形準備!!これより神殺しの討伐に入る!!」
「「「御意!!」」」
騎士達が剣を地に突き立てる。
「「「機神契約・鉄壁王城」」」
空には巨大な紋章。
「沈め――」
「殲・終焉漆黒崩壊撃」
黒と白の衝撃。拮抗している。あのレイが。
「我が主よ。さらなる天罰を!!」
『よかろう。あの者は世界の理に非ず。』
『権能《選定剣》』
天の声が聞こえる。さらなる紋章が現れる。空中には巨大な剣が出現。
「何!?」
『排除せよ。』
「っ……!」
レイが剣を構える。
黒い衝撃が空へ走る。
だが――
神の剣は止まらない。
「馬鹿な……。」
一閃。
「レイ!!」
カラン。
と言う音と共にレイの剣がおちる。
レイが世界から消えた。
それはあまりにもあっけなく。
―――――――――
団長は馬を翻す。
「徹底的に壊せ!!!我が主の威光を罪人どもに知らしめるのだ!!!」
破壊音が響く城内。俺は失意の中人々と共に地下をさまよっていた。
「灯陽!!!無事でよかった……。」
目の前にはアリア。
「レイが……!!レイが消えたんだ、目の前で。」
「嘘……!」
その瞬間。
声が響く。
「聞け!!!愚かな灯陽よ!!!」
街が凍りつく。
その声は、街の隅々まで響いた。
全ての人が声のする方を向いていた。
「我が主 ヴァルハイト様は一月後。再びご降臨なされる。」
「お前を生かした意味、良く噛みしめておけ。」
「これは警告だ。次は滅ぼす、覚悟しろ。」
「覚えておけ」
「神に逆らうとは」
「こういうことだ」
そういうと、騎士団は去って行った。
街に残ったのは、深い沈黙のみ。
―――――――――
騎士団の姿が地平線の向こうへ消えていく。
やがて。
完全に姿が見えなくなった。
街に残ったのは――
瓦礫と、煙と、沈黙だけだった。
誰も動かない。
誰も声を出さない。
やがて。
ぽつりと、誰かが呟いた。
「……終わったのか?」
答える者はいない。
その時だった。
瓦礫の向こうから、一人の男が歩いてくる。
服は破れ、顔は血で汚れていた。
男は灯陽を見た。
そして。
怒鳴った。
「お前のせいだ!!」
その声は、街中に響いた。
周囲の人間たちが振り返る。
男は震える手で瓦礫を指さした。
「俺の家は……あそこにあったんだ」
「家族も……」
声が詰まる。
「全部……なくなった」
沈黙。
男の目には、涙と怒りが混じっていた。
「神を殺したのはお前だろ!!」
「だから神が怒ったんだ!!」
周囲がざわめく。
別の男が叫ぶ。
「そうだ!」
「お前が神に逆らったからだ!」
「謝れよ!!」
「神に謝れば済む話じゃないのか!!」
声が増えていく。
「そうだ!」
「神に従えばいい!」
「なんで断ったんだ!!」
灯陽は何も言わない。
ただ立っていた。
その時。
「やめろ!!」
別の声が響いた。
一人の老人だった。
「神が街を壊したんだぞ!!」
「この子のせいじゃない!!」
だがすぐに別の声が返る。
「じゃあどうするんだ!!」
「一ヶ月後に神が来るんだぞ!!」
「俺たちは死ぬんだぞ!!」
恐怖が広がっていく。
泣き声。
怒号。
街の空気が崩れていく。
「どうするんだよ!!」
誰かが叫んだ。
その声は。
灯陽に向けられていた。
灯陽は、ゆっくりと目を上げた。
街を見渡す。
瓦礫。
崩れた家。
震える人々。
そして、静かに言った。
「……悪いな」
街が静まる。
灯陽は続けた。
「神に頭を下げるつもりはない」
一瞬。
空気が凍った。
誰かが叫ぶ。
「ふざけるな!!」
「じゃあ俺たちはどうなる!!」
灯陽は瓦礫から光る、漆黒の剣を拾い上げると、
「戦う」
とだけ言った。
ざわめきが広がる。
「勝てるわけないだろ!!」
「相手は神だぞ!!」
灯陽は首を振った。
「知ってる」
そして。
瓦礫の街を見た。
「それでも戦う」
少し間を置いて。
こう言った。
「もうここは、神の街じゃない」
人々の視線が集まる。
「人の街」
「人都ヴェルオリオンだ」
沈黙。
誰も言葉を出せない。
灯陽は最後に言った。
「嫌なら、出ていってもいい」
「神の国に行くのも自由だ」
そして。
静かに続けた。
「でも俺は守る」
「この街を」
その時だった。
後ろから声がした。
「そうよ!!こんな世界間違ってるわ!」
声の主はアリアだった。
「戦いましょう。」
「神がこの世界から消えるまで。」
沈黙の街に。
小さな火が灯り始めていた。
――神との戦争が、始まろうとしていた。
いや~どうにか今日も投稿できました!!
見てくれてありがとうございます!!
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