第十七話 アビスへ――終極神ノクス
十七話を投稿します!!よろしくお願いします!!
街から十分程度歩いたその場所は、静謐さと危険な匂いに満ちていた。
影で出来たその扉は明らかにこの世のものではない異様な雰囲気を感じる。
「では行くぞ。」
灯陽は静かに呟き、ゼグマが先頭に立った。
ギィイイイイイという音。扉が開く。
俺たちはその中へ入っていく。
扉は閉めた瞬間に消えてしまった。
「後戻りは出来ない。気を抜くなよ。」
ゼグマのその機械仕掛けの身体からはギシギシと緊張の音が聞こえる。
塔の中は昼の光を拒むかのような暗闇。足元も壁も流動的で、踏むたびに微かに揺れる。
「……ここは、足場が安定していないわ……」アリアが杖を掲げ、結晶の光を操作する。光の軌道が不規則な床を補強し、ほんのわずかな安定を生み出した。
「行くぞ……皆、光に従って」灯陽は声をかけ、慎重に進む。
影の床は時折消え、空間の歪みに足を取られそうになる。だが、リナが古代文字を読み解き、結晶の反応を確認しながら道を示す。
「ここは安全……次は右へ」
その時、
影の中からもぞもぞと動く何かが姿を現す。
「くるぞ!!」
レイは剣を構え、闇の破壊力を集中させる。
「暗黒十字斬!!」
神速の十字斬り。
だが、それは実体のない影の生物。
「何!?」
ブオンと姿を揺らめかせ攻撃を回避する。
少し影は削れているが、決定打を与えられない。
「クソッ。効きが悪いか……。」
「はあ!!」アリアが杖を振ると、結晶の光が影に絡みつく。
モンスターの影は吹き飛び、一瞬その姿をあらわにした。
「今だ!!黒影穿〈シャドウ・ピアス〉!!」
一閃。
レイの闇の斬撃。
「グオオオオオ!!!」
影は消滅した。
……?今の影、何か嫌な感じがした。何だ?
俺はそのモンスターに何かを感じながら、その場を後にした。
―――――――――――――――――――――
俺たちはさらに階層を登っていく。
「ジェネラルビーム!!充填完了!!行くぞ!!」
ゼグマの体から眩い光線が放たれ、塔の暗闇を切り裂く。影が固定される。
「今だ!!漆黒の英雄!!フィニッシュだ!!」
「分かっておる。」
「いくぞ――」
「《虚・失墜ノ凶星」
ズドオオオオオオオオン!!!
漆黒の衝撃波が塔の奥深くまで届き、うごめく影をまとめて吹き飛ばす。闇は一瞬で消滅し、塔の中に静寂が戻る。
「すげぇ……」
圧巻の一撃。俺はその威容に呆けていた。
「ふん。中々やるではないか……。」レイは笑う。
「レイ。お前もな……。」
謎に認め合う二人。熱い握手を交わす。
リナがそれを見て一言。
「……英雄同士シンパシーを感じるのでしょうか?」
「もう勝手にやってくれ。」
もうずいぶん敵を倒した。殆どあいつらがやったのだが。
周りには敵はいない。俺たちは足を伸ばすことにした。
灯陽は深く息をつき、仲間たちの顔を見渡す。
「……ふう、これでひとまず安全か」
「我々の前では相手にならんな。」
ゼグマとレイの英雄たちが、塔の中で燦然と輝く光の軌跡を描き、灯陽と仲間たちを守ったのだった。
「それにしても、不思議な塔だよね……。この見たことがない装飾とか、誰がどういった理由で作ったんだろう……。」
アリアは塔を見渡す。
「そうですね……。神々の意図は神官の私でも理解しかねる部分があります。」
首をかしげる仲間達。
いや、俺だけはなんとなくこの塔の意図を理解しているかも知れない。この飾り、これはクリスマスツリーに似ている。ボールに似ている造形の飾り、写真、これは時計?
塔を登っていく俺たち。
階段を上がるにつれ曖昧でいびつだった造形が鮮明ではっきりしたものになっていく。
「何ですかこれ?白い、草?いや、羊皮紙?」
これは、書類の山だ。これは何だ?
塔を上っていく俺たち。
俺たちはほどなくして最上階に立った。
「ようこそ、アビスへ」
塔の上には女性。
「なんだよ。もう神のお出ましか。」
「警戒して、あの人、ものすごい神性を感じる。」
杖を構えるアリア。
一行に緊張が走る。
そして、女性は口を開いた。
『いかにも。我は終極神ノクス。』
「なあ、ノクス。裏の世界について教えてくれよ。どう行けば良いんだ?」
問いを投げる灯陽。
『否』
『ここに至る者は、全て滅びに至る。』
その瞬間、影が女性に集まり、塔全体を覆うようにうごめきだす。床や壁、天井までが暗黒の渦に取り込まれ、光の結晶の光さえも飲み込まれそうになる。やがてノクスは島全体を覆う大きさになる。
『終わりなさい。それが救い。』
「問答無用……ってわけか。」
灯陽は仲間を見渡した。
「みんな……気を抜くな。これは一筋縄ではいかない」
ゼグマとレイは互いを見て頷き、戦闘態勢に入る。
「灯陽のためなら、我々も全力だ!!」ゼグマが叫ぶ。
「漆黒の力、貴様に見せてやる!!」レイも剣を高く掲げる。
『影よ。』
ノクスの手のひらから、影が伸びる。
その影は四方から襲い掛かる。床が裂け、壁が揺れ、触手のような暗黒が伸びてくる。
「光で固定して!」アリアが杖を振るうと、結晶の光がうごめく影を縛り付け、一瞬だけ安全地帯を作る。
影は九つに分かれ灯陽に襲いかかる、
「甘い!!」
レイの剣が振るわれ、闇の力が炸裂する。
影の触手が粉々になり、塔の奥へ吹き飛ぶ。
ゼグマは身体を光らせ、ジェネラルソードを構えた。
「ジェネラルビーム!!」
剣から眩い光線が塔の中心を貫き、ノクスに集う闇の力の一部を削ぐ。
しかし、ノクスは微動だにせず、淡々と影を操る。影は瞬く間に再生し、塔を覆う。
「決定打にはならんのか……。」ゼグマは唖然とする。
リナは古代文字と結晶の反応を見比べ、仲間たちに指示を飛ばす。
「光を集中させて、床と空間を固定してください!影の根源を断ちます!」
「はい!!」
アリアが杖を高く掲げ、光の結界を広げる。結晶の光が塔全体に放射され、影の渦を押し返す。
「これで動ける範囲が確保できるわ!」
ゼグマとレイは声を揃えて塔の闇に突撃する。
「「行くぞ!!」」
「100万パーセントウルトラーー」
「神命断界ーー」
光と闇の波動が輝く。
「ジェネラルミサイル!!」
「覇王斬!!!」
ゼグマの光線とレイの闇斬撃が同時に塔の中心を直撃。衝撃波が渦巻く影を切り裂き、塔の壁に走る光と闇の軌跡はまるで星雲のように煌めいた。
ノクスの影は歪み、塔全体がざわめく。だが、ノクス自身は冷静そのものだ。
「……ここまで耐えるとは、感心……だが、終わりは近い。』
オオオオオオオオオオオオオ!!!と影たちが揺らめく。
ノクスは指先に黒い力を集中させる。
『権能《終止》』
「何だ……身体が、動かない!?」
『全ては終わる。そして、完成する』
『もう、止まりなさい。』
ノクスの声が、塔全体の影を震わせる。
黒くねじれた巨大な影が、一斉に俺へと向かって飛んできた。
全ての影が俺に流れ込む、
「ぐあああああああああ!!!」
激痛、恐怖……。俺は死を覚悟する痛みを感じた。
そうか、影の正体は人が抱く辛酸、後悔、苦悩、憎しみの集合体。
あの塔は俺の人生そのもの。生まれ、そして苦しみ、現在へと至る命の塔。
登れば登るほど、終わりに近づく、死の塔。
オオオオオオオオオオオオオオオオ……。
影は渦を巻き、まるで生き物のようにうごめく。
苦悩が尖った槍のように、後悔が刃の雨のように、憎しみが黒い炎となって襲いかかる。
体を貫く激痛と、魂を抉られるような恐怖。目の前の空間がねじれ、世界が割れるような感覚――俺は死の淵に突き落とされる。
影の中には、見たこともない顔、聞いたこともない叫び、忘れ去られた痛みが無数に渦巻いていた。
そのすべてが、俺を飲み込もうと形を変えて押し寄せる。
まるで塔ごと、この世界ごとが俺を殺すために形作られたかのようだ。
「こんな……力、ありえない……!」
闇の渦の中心で、俺の意識が引き裂かれそうになる。
ふと、俺の中に浮かんだ、後悔。辛酸、苦悩。
小学生の頃、親友と喧嘩した日、
本当に今思えば些細なことで喧嘩してしまったと思う。
結局謝れずに今まで来てしまった。今あいつ、どうしてるかな。
あいつもいれば人生楽しかったのかな……。
中学の頃、いじめの毎日。
あの頃は学校にも家にも居場所がなかった。部活動では顧問に不必要な暴力を受け、ズタズタの毎日、クラスメイトにもまともな奴はいなかった。家では学校に盲信的な親。何もかもがいやだった。
そして大人になっても――
俺は忘れようと努力していた全てを思い出した。
そんな小さな後悔のすべてが、今この闇の渦に形を変え、俺を押し潰そうとしている。
思い出すだけで胸が締め付けられる痛み――でも、逃げられない。
生きる苦しみ、それらは終わらない。耐えがたい苦しみは生き続ける限り、永遠に続く。
もう、諦めよう。
そう思った。
その時、
「灯陽。」
声が聞こえる。誰だ……?
「灯陽!!」「灯陽様!!」「灯陽さん。」
聞こえてきたのは街の皆の声。
「立て!!灯陽!!!!」
俺はその声に目を覚ました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はっ。」
目覚めたのは白い空間。
そこに居たのは、一緒に戦っていたはずの
漆黒の勇者、レイ=アルカディア。
「立て、灯陽。お前は英雄になる男だ。」
「うん。諦めるな。お前は英雄だ。」
誰だ……?。コツコツコツと言う歩く音。
「やあ、未来の僕。」
闇の渦の中、光の粒が集まり、少年の姿をした「もう一人の俺」が歩いてきた。
「昔の俺……か?」灯陽は問いかける。
「そうだ、俺。やっと会えたね。」
「ずっと待っていたんだ」少年は微笑む。
「分かっていた。全部分かってた。でも、忘れたかったんだ。思い出すだけで胸が潰れそうで」灯陽は目に涙を浮かべ、歯を食いしばる。
少年は続ける。
「ここにある小さな後悔、逃げた瞬間、傷つけた人々……全部、俺とお前の記憶だ」
「でも……この渦を見て、逃げられないことは分かっている、どうすれば、突破できる?」
「覚えているか?」少年の俺は手を差し出した。
「中学の時、諦めなかっただろ?諦めずに学校通っただろ?友達と喧嘩した日も、何度も謝りに行こうとしただろ?」
灯陽は力なく頷く。
「……、そうだ。全部、お前の中にある記憶だ。逃げずに立ち向かえたあの瞬間のお前がいる。」
「今も、痛みと後悔に押し潰されそうでも、立てるはずだ。お前は一人じゃない。俺も、レイも、ゼグマも、皆お前の味方だ」
「だから立て。お前は英雄だ。諦めるな。」
灯陽は深く息を吸い込む。闇の渦に押し潰されそうな恐怖が、わずかに後退した気がした。
「……よし、行くぞ。俺は……俺の英雄になる!」
少年の俺は笑った。
「うん、それでこそ未来の俺だ。そんなお前にこれを贈ろう。」
「何だこれ。」
「餞別だよ。『終焉黙示録』さ。もちろん、覚えてるよね。」
呪われていない。ページが見える。読める。
「それ、燃やしたはずじゃ?」
「ははは……、それはレイの仕業だね。」
遠い目をする昔の俺。
その視線の先にはレイ。
「ふん。お前が下らんことに使おうとするからだ。」
レイはそっぽを向く。なんだ、わざとだったのか。
「じゃあ、呪いもレイが?」
「いや。呪いは本物さ。見るだけでもいやだっただろ?」
「あー。確かに。」
俺は笑う。アパートで見つけたときは見るのも嫌だったかもな。
今ではそれを頑張って思い出して利用しているが。
「そう。自分に向き合えばそれを正しく使いこなせる。だから、今託すことにしたんだ。」
「そうか。ありがとな。」
俺はページを閉じる。
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。」「俺もそろそろ行くぞ。灯陽。」
二人の身体が光の粒となって減っていく。
「じゃあな。昔の俺、それからレイ。」
「……うん。世界を救ってくれ。灯陽。」
レイと少年は消えていった。
そして、俺は再び立っていた。塔の頂上。ノクスの前に。
『なぜ、あれを受けて立てる!!』
ノクスは驚く。
「あいつが俺に立てっていったからだよ。」
『良いでしょう。ならばもう一度分からせるまで。《終止》!!』
世界を停止する波動が俺に迫る。
「無駄だ。」
それらは無情にも俺の前で弾かれる。
『なぜ効かない!?』
困惑するノクス。
「出でよ『終焉黙示録。(ラスト・アポカリプス)』」
俺の手には一冊のノート
そして、
俺は手をかざした。
「お返しだ。《終止》」
黒い波動は空に浮かび、ノクスを包む。
『なぜ神たる私の権能を使え……。』
ノクスと影は動かなくなった。
「無限解除」
権能から解き放たれる仲間達。
「ハッ!!灯陽さん?レイさんは?」
「あいつなら消えたさ。俺にこれを託してな。」
俺は一冊のノートを手に言う。
「そうか、あいつは天命を遂げたのだな。」
謎に理解するゼグマ。
俺は前を向いた。
「いくぞ、レイ、一緒に倒そう。」
ノートが光る。それはこの世の法則を書き換える光。
「創造(終焉虚界神剣)」
レイの剣。人の身ならば満足に使いこなせず自滅する代物。
しかし今、創造神に比肩する能力を得た俺に使いこなせないものはない。
俺は剣を手に取り、構える。
「いくぞ、今考えた技だ。」
俺は剣を軽く振る。
「《終焉絶対・万象喪失(アポクリファル・オブリヴィオン・カタストロフ)》」
――光と闇、空間と時間、すべてが俺の意思に従い、塔の内部が狂気じみた色彩で塗り替えられていく。
光の渦が塔を包み、闇の影はもがき、絶叫と共に消え去る。
ノクスは一瞬ひるむ。その瞳には恐怖が宿る
「これで……終わりだ。」俺は立ち尽くす。
一瞬。
静寂。
全ての闇を包み込んだ無限の昏い夜が一転穏やかな夜へと変わった。
「勝った……?」
困惑するアリア
ゼグマが輝く光の中から現れ、俺を見上げる。
「灯陽……お前は本当に英雄だ。」
やはり何かを理解しているゼグマ。
リナも微笑む。「灯陽さん……」
レイは既に消えたが、その存在は確かに俺の中に残っている。
「ありがとう……レイ。俺は……俺たちは、前に進む。」
塔の頂上で、三人の仲間と共に、俺たちは新たな光を見つめた。
世界は、確かに俺の手の中にある――そんな確信と共に。
「世界を救ってくれ、灯陽。」これが書きたくて始めました。
やっと書けた~嬉しい~。
面白いと思っていただけたら
ブックマークや評価、感想などいただけると励みになります!




