【第9話】 『最弱の敵スパイ登場。強そうなポーズだけは一流。』 ――敵なのに、なぜか味方より弱い。
『最弱の敵スパイ登場。強そうなポーズだけは一流。』
アヤメ高校の体育館。
今日はスパイ科の合同訓練日だ。
多々良先生
「……今日は“対外スパイ訓練校”の生徒が来ている……
無駄に張り切らないように……」
ワン
「(フラグにしか聞こえない……)」
リム
「でも相手校って、確か“不調スパイ学園”でしたよね?
評判は……その……」
ゼロ
「弱いの!?弱いの!?私でも勝てそう!?」
ワン
「いや“ゼロでも勝てそう”は普通に失礼なんだけど……」
そのとき。
ガラッ!!
体育館の扉が勢いよく開いた。
「フハハハハ!!貴様らがアヤメ高校か!!!
恐れおののけぇぇぇ!!」
ワン
「……出た、テンション高いタイプ。」
ゼロ
「だれこのヒーローショーみたいな人」
入ってきたのは一人の男子生徒。
派手な赤いマント。
ポーズだけは完全に“ラスボス”。
不調スパイ学園の生徒――
赤峰クラッシュ。
クラッシュ
「我こそは“不調学園の切り札”!!
クラッシュ様である!!!」
ワン
(名前からしてすでに不安……)
リム
(クラッシュって絶対何か壊す名前ですよね……)
ゼロ
「よろしくねクラッシュくん!
なんかお菓子食べる!?」
クラッシュ
「敵に飴を渡すなっ!!」
◆訓練開始:ポーズだけは強いクラッシュ
多々良先生
「……では模擬戦を始める……」
クラッシュ
「フハハハハ!!誰でもかかってこい!!
私の必殺技“クラッシュ・インパクトΩ(オメガ)”で一撃だ!!」
ワン
「(Ωってつけるタイプだ……)」
リム
「(絶対威力より名前が先にできてるタイプ……)」
ゼロ
「Ωよりウマが好き〜!」
ワン
「“馬”じゃない!!記号だ!!」
クラッシュが構えを取る。
……とても強そうなポーズ。
クラッシュ
「さあ来い!!私は攻撃を避けすぎて避け方を極め――」
バランッ!!
クラッシュ
「うおっ!?ス、スリップした!?!?!?」
派手に転んだ。
ワン
「まず自分で転ぶのかよ!!」
リム
「敵より床が強い……!」
ゼロ
「クラッシュくん、痛いの!?
湿布いる!?チョコあるよ!?」
クラッシュ
「ちょっと待てぇぇぇ!!
敵から心配されるとは何事だ!!」
◆クラッシュ、本気を出すが速攻で事故る
クラッシュ
「今のは…フッ……私のフェイントだ……!」
ワン
「(嘘下手だなぁ……)」
クラッシュ
「次こそ本気だ!くらえ!!
クラッシュ・インパクト――」
ゼロ
「Ω(オメガ)?」
クラッシュ
「そう、それだ!!!」
クラッシュが走り出す。
走り方だけはめちゃくちゃ速い!!
ワン
「おおっ!?意外と速い!!?」
リム
「ちゃんと強い部分あるんですね!」
しかし。
クラッシュ
「いくぞおおおお!!」
直後。
ゴッ!!!!!!
クラッシュ
「――壁に激突したぁぁぁぁ!!!!」
ワン
「なんで自分から壁に突っ込むんだよ!!」
ゼロ
「うわ〜!音すごかった!!
大丈夫!?生きてる!?」
クラッシュ
「い、生きてるわぁぁぁ!!
だが今のは“壁の奇襲”だ!!」
ワン
「壁は動かねぇよ!!」
◆クラッシュ、最弱の理由が発覚する
多々良先生が近寄ってきた。
多々良
「……赤峰クラッシュ。
君、普段どんな訓練してるんだ……?」
クラッシュ
「もちろん毎日“特訓”している!!
筋トレに、フォーム練習に……あとは……」
ワン
「あとは?」
クラッシュ
「鏡の前で決めポーズの研究を一日4時間……」
ワン
「そこ削れよ!!!」
リム
「ポーズ練習に全力……!」
ゼロ
「すご〜い!私と似てる!!」
ワン
「ゼロも削れ!!!」
◆クラッシュ、ゼロと同レベルのポンコツだと知るワン
模擬戦は続くが……
クラッシュ
「次こそ……!」
転ぶ。
壁にぶつかる。
武器を取り落とす。
自分のマントに足を絡めて倒れる。
技名だけ叫んで気絶しそうになる。
ワン
「……なぁ、ゼロ」
ゼロ
「なに?ワンくん」
ワン
「コイツ……お前と“同じ種類”だよな……」
ゼロ
「うんっ♪」
ワン
「肯定すんな!!」
◆決着:なぜか勝ったクラッシュ
最後の勝負。
クラッシュ
「これで終わりだ!!
クラッシュ・インパクトΩァァァァ!!!」
勢いよく跳ぶ。
……天井に頭をぶつけて落下し、そのままワンの前に倒れる。
ワン
「えっ!?ちょ、ちょっと!?!?!」
クラッシュは完全に気絶。
多々良
「……勝者、赤峰クラッシュ」
ワン
「なんでだよ!!!!!」
リム
「“自滅したら負け”ってルールが無いからですね……」
ゼロ
「クラッシュくん強〜い!!」
ワン
「どこがだよ!!!」
◆オチ:クラッシュ、仲間になるかもしれない
帰る前。
クラッシュ(包帯ぐるぐる)
「…………お前ら、強かった……」
ワン
「いや、お前ほぼ自滅だったろ……」
クラッシュ
「だが……また勝負だ……!
次こそ“技を出せるように”してくる!!」
ワン
「そこからなのかよ!!」
ゼロ
「クラッシュくん、また遊ぼーね!」
クラッシュ
「遊ばない!!戦う!!
……でも飴は、また欲しい……」
ワン
「もらうんかい。」
こうして、最弱の敵スパイは
なぜかほんの少しだけ好感度を上げながら帰っていった。
アヤメ高校は今日もカオスで平和だった。




