【第7話】 『避難訓練の日、ゼロのせいで本当に避難が必要になる。』 ――訓練とは安全のために行うものだが、ゼロがいる時点で破綻していた。
『避難訓練の日、ゼロのせいで本当に避難が必要になる。』
アヤメ高校スパイ科。
今日は年に一度の大イベント――避難訓練の日。
ワン
「……嫌な日が来たな……」
リム
「私は普通の訓練になると思っているんですけど……」
ワン
「ゼロがいる限り“普通”は存在しないんだよ」
ゼロ
「ねえねえワンくん!今日の訓練、すごく楽しみ〜!」
ワン
「楽しむな!!」
ゼロ
「だって非常時に強いスパイってカッコいいじゃん!
だから昨日、いろいろ準備してきたの!」
ワン
「準備……?(悪い予感しかしない)」
ゼロ
「じゃーん!
“自主避難キット・ゼロスペシャル”!!」
ワン
「危険な香りしかしねえ!」
ゼロのバッグから飛び出したのは、
・自動逃走ロープ
・煙幕カプセル(甘い匂い付き)
・謎のヘルメット(アンテナが3本)
・“緊急時は押せ”と書かれたボタンの箱
ワン
「最後のが絶対一番ヤバい!!」
リム
(……ゼロさん、訓練の意味わかってるのかな……)
◆避難訓練開始:まずは普通の流れ
校内スピーカー
『ただいまより避難訓練を開始します。
全校生徒は指示に従い――』
多々良先生
「では全員、校庭へ整列して……」
ゼロ
「はい!!了解です隊長!!」
ワン
「誰が隊長だ!落ち着け!」
ゼロ
「よーし!まずは非常ベルを鳴らさないとね!」
多々良
「それは学校側がやるから……」
だが、ゼロはすでに非常ベルのボタンに手を伸ばしていた。
ワン
「押すな!!!」
ゼロ
「大丈夫大丈夫!押さないって言ったじゃん!」
ピッ
ワン
「今押したよな!?!?」
鳴り響くサイレン。
校内スピーカー
『――非常ベルが“手動”で作動しました』
多々良
「星川ァァァァ!!!!」
◆避難開始:ゼロの自主キット大暴走
生徒たちは校庭へ向かう。
ゼロ
「まずは煙幕で身を隠して……」
ワン
「なんで隠れる必要があるんだよ!?訓練だぞ!?」
ゼロ
「有事の時は煙幕って常識だよ〜!」
ぽんっ!!
甘い匂いのピンク煙が一気に広がった。
クラスメイト
「うわっ!?なんか……甘ったるい匂いが!!」
リム
「ピーチの匂い……?というか目がしみる……!」
ワン
「甘いけど刺激が強いってどういうブレンドだよ!!」
◆ゼロの“自動逃走ロープ”が犠牲者を増やす
ゼロ
「次はこれ!自動で逃してくれるロープ!!」
ワン
「どういう機能!?聞きたくないけど!!」
ゼロ
「ロープが勝手に“安全な方向”へ導くの!」
ワン
「嫌な予感しかしない……」
ゼロがロープを投げる。
ロープ
ビューーーーーン!!
なんとロープは生徒の足に絡みつき――
別方向へ思いっきり引きずった。
クラスメイト
「ぎゃああああああ!!校庭と逆方向!!」
ワン
「全然安全じゃねぇ!!」
リム
(……避難中に連れ去るロープって……)
◆避難訓練なのに“謎の爆発”
多々良先生
「星川!!もう何もしなくていい!!動くな!!」
ゼロ
「はーい!」
ワン
「その“素直な返事”が一番危険なんだよな……」
しかし、ゼロの背中のバッグが「ピッ」と光った。
ワン
「お前のバッグ、今何か反応したぞ!?!?」
ゼロ
「あっ、それね!
“緊急時にだけ作動する自動応援システム”だよ!」
ワン
「どんな応援だよ!!」
ゼロ
「応援ボイスが流れるはずだけど……?」
装置
『応援開始――がんばれ♡』
ぼんっ!!!
校庭の土が一部、軽く吹き飛んだ。
ワン
「応援の仕方が物理攻撃だよ!!!」
ゼロ
「えぇ!?なんで!?昨日はちゃんと優しい声だったのに!」
リム
(……声と爆発は関係ない……)
◆ついに本物の“避難”が発生
控えめな爆発が連続し、
校庭の一角が煙に包まれる。
多々良先生
「全員!!危険区域から離れろ!!
これはもう訓練じゃない!!」
ワン
「だから言っただろ!!!」
ゼロ
「えーっと……ごめん、なんか……色々と……」
ワン
「“色々”じゃない!!」
だが生徒たちは慣れているのか、
意外と的確に避難していった。
リム
「ワンくん、こっちです!」
ワン
「リム!お前が頼りだよ!!」
ゼロ
「私も行く〜!」
ワン&リム
「来るな!!」
◆オチ:訓練の講評会
訓練(?)後、職員室。
多々良先生
「……星川ゼロ。
君のおかげで今年の避難訓練は
“例年以上にリアル”になった……」
ゼロ
「えへへ〜!実践的でよかった?」
多々良
「よくない!!」
ワン
「今年は“避難訓練に避難訓練が必要な日”になったぞ!」
ゼロ
「でもみんな無事だったよ?
だから結果オーライだよね!」
多々良
「オーライにするなぁぁぁぁ!!!」
こうしてアヤメ高校では、
後にも先にも“本物の避難訓練”として語り継がれる日となった。
――すべては、転校生・星川ゼロのせいである。
今日も平和(?)でカオスだった。




