8話 日直
連載中‐[日間]コメディー〔文芸〕ランキングで、
5位頂きました!
ありがとうございます!
「今日の体育、まじで地獄やったわー。
100mのタイム測って、なんの意味あんねん」
「わかる。足遅いだけで評価下がるて、意味不明やしな。
骨格も体型もちゃうのに、なんで全員同じ物差しで測られなあかんねんって思うわ」
「珍しく松崎の方がムカついてるやん」
「ムカついてるというより、理解出来ひんねん。
“靴履いてたら遅なるから〜”とか言うて裸足で走ってる奴もおるやん。
日常生活に裸足で全力疾走する場面、ほぼゼロやろ?なんでほんのちょっとタイム縮める為に文明を捨ててんねん。
そしてそれがなんで評価されんねん」
「それな。てか、それがありやったら俺も
“靴履いてたら遅なるからローラースケート履きます”言うしな」
「お前ローラースケートできひんやろ。
逆に遅なるやん」
「てか女子とかも、男子が足速いだけでキャーキャー言いすぎやと思うわ!
足が速くて何がかっこええねん!」
「学校生活って、変なバイアスかかってて、みんな正常な価値観持ててへんよな。
考えてみ?いま足速いだけでモテてるやつ、将来どうやってバリューだすねん」
「“コピー機まで誰よりも早く辿り着けます!”とかでバリュー出すしかないやろ」
「ほんで“靴履いてると遅なるんで裸足なります!”って言うんやろ?」
「なんならクラウチングスタートしそうやしな」
「よーいドンを待ってる時点で社会人としてどうやねん」
「そう思ったら、学校生活ってほんま無駄な事多すぎるよなー」
「せやな。めっちゃ無駄な事させてんのに、大人が無理やりそれっぽい意味をつけてくるのがアカンわ」
「日直とかも意味わからんよな」
「クラスの全員に何でもええから、少しでもリーダーシップ感じれる役割与えたいんやろ」
「“起立、礼、着席”で“リーダーシップ発揮してるわー”思う奴おらへんやろ」
「せやねん。もっとリーダーっぽい台詞にせなアカンわ」
「どんなん?」
「“起立”の代わりに、“我々は今、立ち上がる時を迎えた!”とか」
「おおー!それリーダーっぽいわ!」
「“礼”も“感謝の意を込めて、頭を垂れよ!”とかにして」
「それ自然と頭下げてしまいそうやわ。ええやんええやん」
「“着席”は“各自、使命を胸に腰を下ろせ!”とかやな」
「でも何か、間違ったリーダーシップ身につきそうやな」
「そもそもリーダーになりたくない奴もおるやろし、副官みたいなポジションとかも作った方がええ気がするわ。
そうなると副日直も作るべきやな」
「副日直は何するん?」
「日直が“我々は今、立ち上がる時を迎えた!”って言うたらすかさず
“補足します!”て言うて、日直の発言の真意を説明する係やん」
「その役目いる?」
「いらんけど、それくらいせんと日直やる意味ないってことや」
「そういえば明日、松崎日直やん」
「その目やめろ。“使命を胸に”とか絶対言わへんからな」




