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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

生配信していただけなのに 〜 あるライバーの背後で起きていた事件 〜

作者: モモル24号

 最後はとある配信者のおまけ部分となっています。


 元部下であり押し掛け女房気取りの玲子(れいこ)とは、別れ話をした後に縁が切れた。彼女によって俺の人生が狂わされたが⋯⋯二度と会うことはなかったはずだった。迷惑ばかりかけられたかというとそうでもない。


 俺は結婚してすでに数年たつ。子供も息子が一人いる。異性に見向きもされなくなった⋯⋯そんな男にも魅力的な部分があると言ってくれたのが新入社員の玲子(れいこ)だった。


 玲子(れいこ)とは会社員の先輩後輩として親しくなれて、とても嬉しかったのを覚えている。もちろん初めは会社の先輩に向けての処世術、ただの社交辞令だと思っていた。それで社会人として円滑な関係を築いて終わりのはずだった。


 いま思い返すと、ズルズル関係が続いた事へ対しては、玲子(れいこ)には申し訳ないと思っている。だが最初から最後まで押して来たのは彼女の方だ。それは間違いない。たった一晩の過ち⋯⋯あの一夜がなければ、俺は味気ない無機質な天井を眺める事はなかった。


 それにあんな事になったのは、玲子(れいこ)のやつが悪い。俺を試すような真似をして⋯⋯家族を脅すような言動をするから。その気味の悪い本性を見せた事で、家族を守るために俺は冷静になれた。


「────?!」


 一瞬、ギョロッとした目玉に見られた気がして、ブルブルッと身震いした。彼女の部屋でアレを見てから、俺はおかしくされたのではないか。


 急な悪寒に身体を擦りながら、俺はあの頃を⋯⋯新入社員として玲子(れいこ)と出会った時を思い返していた。




「────せんぱい、面倒なので玲子(れいこ)と呼んで下さい」


「わかった。これでもハラスメントには気をつけているから、親しげに呼ぶのは遠慮していたんだ」


「わかりますよ。そういうご時世ですからね。でも私には遠慮はなしですよ、せ〜んぱいっ」


 入社式の後、新入社員が各部署へとやって来て、社員同士の挨拶を行う。俺の所属するチームにやって来たのが玲子(れいこ)だ。


 チームといっても、部課長を兼ねた上司のもと五名ほどしかいない。俺は上司を除けば一番の先輩なので。皆からの呼び方は先輩で通っていた。初々しい玲子(れいこ)の加入により、俺やチームの士気が上がる。


 玲子(れいこ)は仕事の覚えも良く、馴染むのも早かった。損得の割り切りも機械的⋯⋯AIかと思うくらいしっかりしていて、得意先にも受けが良かった。


 俺と玲子(れいこ)と先輩後輩として仕事を共にしていた頃は感情的にならず、くだらない事を言うやつではなかった。先輩だろうと構わずに、逆セクハラをしてくるような人懐こい面を持つギャップもある、自立した女。それがどうして冷静な回路が狂い出したのか⋯⋯そう問いたい。


 勢いで関係を持った後も、後腐れなく楽しもう⋯⋯そう言って冷静な態度で人懐こっく誘い続けたのも、玲子(れいこ)の方だったのに。



 そもそも俺には家庭がある。優しい妻と元気な子供だっている。会社でも仕事を任される立場になり、それなりの収入が入るようになった所だ。甘い誘惑に耳を傾けて浮気までして、泥沼に浸るようにのめり込む気は最初からなかった。


 玲子(れいこ)も俺の置かれた立場や環境を信頼して、からかっていたのだと思っていた。その辺のつまらない女とは違う、名前のような冷静さが彼女の本質だと俺は勘違いしていた。



 ────それとも本質が変質したのは魔法の水⋯⋯酒の魔力とでもいうのだろうか。



 あれは昨年の今頃だったと思う。梅雨終わりのじめじめとした空気が重く暑く、鬱陶しい時期だった。


 会社一丸となって働きかけたプロジェクト──その大きな取引が成立した。ボーナスとは別に、会社から食事会という形の慰労金が出たのだ。まあぶっちゃけてしまうと、取引先からの営業を兼ねたご褒美。金銭ではなく食事会という贈り物だ。


 このご時世、上司と部下でみんな集まって飲み食いなんてしなくなった。俺の会社はそこまで拒否反応は激しくなかったが、ハラスメントにかからぬように遠慮していた。せっかくの機会なのでと、珍しく他の部署の新人達や若い連中が集まり、合同プロジェクトの慰労会が開かれる事になった。


 共に戦う仲間達との飲み会に、同窓会でもはしゃいだ記憶のない俺が、少し調子に乗って酔ってしまった。それは玲子(れいこ)も同じだったようで、俺の席の隣で酒の杯を重ねるごとに酔いが深まり⋯⋯鍋の具の取り分けや串ものの小分けなど、俺を構い出した。


 同僚達や玲子(れいこ)に気のある若い連中から冷やかしが入るが、会社内でも彼女の世話焼き体質や、「先輩好き」 はわりと受け入れられていた。酒の席とは言っても無礼講ではないから、みっともなく絡む者はおらず、二人だけの空間が出来上がった。


「へっへ〜せんぱーい、飲み過ぎちゃったので送ってくらさ〜い」


「はぁ? ⋯⋯まあ飢えた狼どもに任せるより、妻子持ちの俺の方がマシか」


「キャハハぁぁ、せんぱい好き〜めっちゃタイプなんですよぉ」


 入社以来ずっと緊張していた反動なのかもしれない。玲子(れいこ)はいつものように口先だけでからかうのではなく、直接俺に触れだした。会話も成立しないくらい乱れた玲子(れいこ)をこのままにするのは不味いと思い、俺は彼女に肩を貸しタクシーを拾った。


「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」


 タクシー待ちの乗り場で泥酔した玲子(れいこ)抱きつかれ、互いに酒の臭いをさせながら口吻をした。支える手に触れる軟腰の感触が酔った勢いを加速させ、理性を飛ばした。


 酒の席の過ちとは言え手を出したのは、巧みに玲子(れいこ)に誘われて、浮ついた心に火が付けられたせいだと思いたかった。


 ◆


「せんぱい⋯⋯いいよね」


 ひどく酔った大人の男女の向かう先が、予定の行く先とは変わる。張りのある若い柔らかな肌が、俺の腕に押し付けられて絡みつくようにまとわりつく。触れ合う手の感覚の心地よさに惑わされると、今度は耳に響く甘い囁きにゾクゾクする。


 一夜限りの過ちだ⋯⋯酔った俺はそう自分に言い訳をするしかなかった。大きな取引を成立させるまでのストレスからの解放と、久しぶりの祝杯の楽しさで報われた────心の緩みがあったのかもしれない。


 だが玲子(れいこ)の方は違った。俺の隙をずっと伺っていたのだ。あれほど酔っていたのに⋯⋯酔った勢いの一字一句を覚えていた事からもわかる。職場でからかうようにすり寄って来て、あの晩交わされた睦言を艶めかしく耳元で囁くようになった。


 もともと玲子(れいこ)は他人との距離感が近いため、俺だけに甘い態度を取ろうが不審には思われなかった。それでもアピールの強さにヒヤヒヤし、惑い、悩まされた。



「せ〜んぱい! 来ちゃった♡」


 ⋯⋯俺は絶対悪くない。決して自分から誘ってなんかいない。他者の目の届かない出張先にまで押し掛けてくる女が悪い。


「せ〜んぱい♡」


 ────甘ったるい呼び方に俺の心がざわつく。誰も知り合いのいない出張先。玲子(れいこ)は遠慮のない、色仕掛けの得意なストーカー女と化していた。そんな会社の後輩を相手に、いくら身持ちの固い男だろうと、まともにいられるはずがなかった。


 出張帰りは後悔の念に苛まされる。それに出張自体そう何度もあるわけではなく、俺は会社からも互いの自宅からも離れた町で密会するようになっていた。


 密会する必要性の理由は、玲子(れいこ)の俺に対する気持ちの変化だ。肌を重ね合う内に、遊びで済まなくなっていったのだ。本気で俺を奪いたいと口にし始めたのだ。


「奥さんと別れた後は、もっと凄いことしてあげるからね」

「先輩が良ければ、息子さんは引き取ってもいいよ?」


 どうやらあの日の慰労会の後の夜⋯⋯俺は確認を求める彼女に触りたくて入りたくて、余計な一言を言ってしまったらしい。俺は蜘蛛の巣に自分から飛び込んで雁字搦めになっていた。


 怖い⋯⋯そして気味悪い。膨らむ妄想に俺はついてゆけず、背徳の快楽も次第に苦痛になっていた。


 玲子(れいこ)とは嫌でも会社で顔を合わせる。寝ている時間を除けば、妻や息子といるよりも、長い時間彼女と一緒にいる事になる。玲子(れいこ)の露骨で情熱的なアピールには何かある⋯⋯と、流石に職場の連中も気づき出していた。


 このままでは俺の人生は崩壊する。俺は誰よりも妻と息子を愛している。玲子(れいこ)と将来を共にするつもりはなかった。関係がバレれた時に、俺は破滅する。互いに後腐れなく楽しもう⋯⋯玲子(れいこ)の発したあの言葉は嘘だったのか。


 俺は若い娘にモテた事で、調子に乗りすぎた。誘惑に乗ってしまった自業自得な部分もあるのは認める。俺のような男にまともな女が近づいて来るはずないと、どうして厳しく戒めなかったのか。


 息子が小学生に進学し、物事の分別がつき始めた。引き返すのなら、今しかなかった。俺は悪くないと思い続けるしかなかった。


 ⋯⋯押し掛ける彼女に俺は決して本気にはならず、黙って快楽を享受するようになっていた。


 最終的には、玲子(れいこ)へ別れ話を切り出して正解だったと思う。虚言を張る生活に俺自身がとっくに限界を迎えていたからだ。


 ◆


 玲子(れいこ)にいつ別れはを切り出すのか⋯⋯俺は彼女との関係をズルズルと続けながら悩んでいた。あの夜の過ちから半年以上の時が経ち、吐く息の白い冬になっていた。


 玲子(れいこ)はそんな陰気な俺から養分を吸っているのか、ますます盛んに積極的になっている。


 だんだんと誤魔化しが利かなくなって来た。そんな最中の休みの日に、俺の家庭内で変化が起きた。その日は会社も休みで、少年サッカーチームに入った息子を送った後、ゆっくり家で休み直そうと思っていた。


 最近は理由をつけて休日に出かける事も多かったので、 妻と二人きりで休みの日を過ごすのも久しぶりだったのだ。


「我ながら最低な理由だな⋯⋯」


「何が最低なの?」


「いや仕事の愚痴⋯⋯独り言だよ」


 妻が不思議そうに、夫である俺の顔を見る。妻の目は疑う事を知らず綺麗な目をしている。あいつは⋯⋯玲子(れいこ)はどんな目をしていたのか思い出せない。きっと妻に比べると、ギラつく濁った瞳だろう。


 息子が成長して手がかからなくなった妻は、二人目を欲しがって見えたのに⋯⋯俺は熱い眼差しを無視してきた。


 もともとそんな気はなかった。玲子(れいこ)によりその気にさせられたせいで、ずいぶんと妻を⋯⋯家族を蔑ろにしてしまった気がする。


 久しぶりに抱きしめた妻に対して、申し訳なさはある。たちの悪い女に引っかかった馬鹿な夫のせいで迷惑をかけ、辛い思いをさせるかもしれない。


 身から出た錆、俺はけじめをつけて玲子(れいこ)の思いを断ち切ろうと決意した。


 ◆


 翌週の週末、今後の事を話そう⋯⋯そう玲子(れいこ)に告げた。落ち着いてゆっくり話すために選んだのは玲子(れいこ)の暮らすアパートだった。


 二人共互いの家での密会はずっと避けていた。俺は妻子ある身⋯⋯玲子(れいこ)もその若さで実は⋯⋯を、少し期待していたが、彼女は彼女なりに理由があって避けていたようだ。


 既婚者なり恋人がいて、似たような立場ならば良心の呵責に苛まされる事はないのにと、これから話す事への負担から考えてしまった。


「さぁ、せんぱい───着きましたよ」


 ベランダ付きの二階建てのアパート。玲子(れいこ)の部屋は奥から二番目の部屋で、外観は少し古い。敷地は狭く隣家とも近くて、塀からベランダに手が届きそうに見える。


「前に話したよね。週末は隣の子が生配信しているから、声⋯⋯静かにしてあげないと」


 今後についての展望が、俺とは違う玲子(れいこ)。顔を赤く染めて嬉しそうに笑う。隣の住人へ配慮する気は始めからないようだ。


 玲子(れいこ)のアパートの部屋に入ると、玄関から入ってすぐ右手にトイレや風呂場、キッチンなどの水回りがあり、左手側が寝室になっていた。リビングはキッチンとの対面となっていて一番奥の大きな窓からベランダとなる。簡素だが意外と広い。


 若い一人暮らしの女性会社員の部屋。想像していた女の子の部屋に比べると殺風景にみえた。可愛らしいぬいぐるみの一つくらいありそうなものだが、それは俺の偏見か。それに給料は悪くないが、俺に会うために結構散財していたせいだろう。


「荷物少ないでしょ。だって⋯⋯わかるよね」


「あっ、あぁそうだな」


 簡素な部屋の理由が俺と一緒になるためだと気づき⋯⋯俺の心は震えた。外気に比べて室内は暖房がついていて暖かいはずなのに。玲子(れいこ)と一緒に暮らしてゆく未来は、俺には見えない。


 ようやく自宅に招き入れる事が出来てホッとしたのか、玲子(れいこ)もいつもより感情が穏やかで口数も少なかった。隣、気にしているのか。


「せんぱい、とりあえず座って。いまお茶を淹れて来るから」


 リビングには地味というか珍しいやや赤黒い色のカーペットが敷かれていた。てんとう虫の背中の色が混ざった感じだ。その上に小さなテーブルや座椅子が一つあった。普段は玲子(れいこ)が使い、壁際のテレビを眺めたり、パソコン作業をしたり、スマホを眺めたりするのだろう。


 俺の座る席をつくるために、ベランダ側を背にするように椅子を移動したため、カーペットに日常生活の跡が残っていた。


「はい、どうぞ。お話の前にシャワー浴びて来るから、せんぱいテレビでも見てゆっくりしていてね」


 いつもなら一緒に入る? などと誘って来るのだが、大人しい。


「これでも私、緊張しているんだよ」


 俺が訝しんでいるように見えたのか、服を脱いでバスタオルを身体に巻いた姿の玲子(れいこ)が、可愛らしく言う。


「⋯⋯⋯⋯」


 別れ話を切り出しに来たのに、このままではなし崩し的に身体を重ねて終わってしまう。


 玲子(れいこ)がシャワーを浴びている間に、俺はキッチンで強い酒がないかを確認する。酒が入ると淫らさが増して、話を切り出す邪魔になる。彼女の部屋には常温の調味料の置かれた小さな棚に、料理酒しかなかった。


 冷蔵庫があったので、中を調べてみる。一人暮らし用にしては少し大きい2ドアの冷蔵庫。海外製か業務用なのか見慣れないメーカーの製品だ。フロンガスを排出しまくっていたかなり昔のものに近い。


「酒は⋯⋯ビールくらいしかないか」


 下側の扉を開くと350ml入りのビールが四本あった。部屋と同様に、食材は大したものが入っていない。生活が苦しいのだろうか⋯⋯同情しかけた俺の視界に、ふと冷凍庫の扉が目に映る。


 冷凍庫の中はやはり空っぽに近い。しかし庫内には黒っぽい妙な入れ物があった。



「⋯⋯⋯⋯!!」


 ────なんだ、これは。


 俺はシリコン製の入れ物を取り出して、その気持ちの悪さに氷のように固まった。


 それは黒い髑髏型の製氷皿。ただでさえ怖い髑髏の型なのに、製氷皿の髑髏型氷塊の中には、目玉が凍っていたのだ。


「こいつ⋯⋯正気か」


 俺は声にならない声で呟く。シャワーを浴びる水の音がするから、玲子(れいこ)に独り言は聞こえないはずだ。


 髑髏型の製氷皿の四箇所あるうちの二つの目玉がギョロッと俺を睨んだ気がして、慌てて戻した。


 気味の悪いものを見て俺は玲子(れいこ)のヤバさを急に理解した。簡素な室内。不必要に大きい冷蔵庫。赤黒いカーペット。積極的な割に、今まで俺をアパートへ呼ばなかった理由。氷のパズルが解けていくかのように玲子(れいこ)の思惑が浮かぶ────


 ────二ヶ所空いていたのは何のため?


 それはもちろん俺の目をくり抜いて凍らせるため⋯⋯か?




「⋯⋯⋯⋯せんぱい、お腹空いたの?」


「おわっ?!」


 いつの間にか背後に、シャワーを浴びていたはずの玲子(れいこ)が立っていた。


「驚かせた? ごめんごめん。シャンプー切らしたの忘れていて、取りに来たの。あの棚の上にある箱取ってもらえますか」


「おっ、おう。袋に入ったままじゃないか」


 俺は動揺を隠し、慌ててリビングの棚の上に置かれた袋からシャンプーを出して玲子(れいこ)に渡した。



 ────帰りたい。いや逃げ出したい。


 俺はいざという時のために、玄関の鍵とベランダの窓の鍵を開けておいた。ベランダはカーテンがあるので解錠しておいてもすぐには気づかないはずだ。


 とりあえずこの場からは逃げたい。何かうまい言い訳がないか考え、俺は息子の顔を思い浮かべた。


 玲子(れいこ)が出て来た。ご機嫌でこんにちは赤ちゃんの鼻歌を歌っている。嫌な予感が重なった気がしたが、いまは逃げる事が先決だ。


「悪い、玲子(れいこ)。息子が急に熱を出したみたいなんだ」


「えーっそれなら私はいいから、帰ってあげて下さいよ」


 そうした嘘は玲子(れいこ)にはついた事がないので心配してくれた。俺はとっさに息子の急病と嘘をつき、逃げるように玲子(れいこ)のアパートから飛び出した。


 ◆

 

 虎口から逃れられたのは良かったが、肝心の別れ話は切り出す事が出来なかった。玲子(れいこ)は何も気付いていないのか、会社ではいつもの強めのアピールで俺に接して来る。


 俺はギョロつく目玉が頭から離れず、まとわりつく玲子(れいこ)への反応が鈍った。俺の気持ちの変化を、玲子(れいこ)が不審に思うのには時間は掛からなかった。


 今度こそけじめをつけるために、俺は玲子(れいこ)の部屋で会うことにした。妻にはあえて会社の後輩の相談に乗って来ると告げておいた。そしてそれを玲子(れいこ)にも告げる事で、いきなり襲われないように予防線を張っておいた。


「別れよう⋯⋯」


「遊びじゃなくて、本気だって言ったじゃない」


「あれは酔った勢いだよ」


「勢い? 何度も何度も求めて今更そんな言い訳通用しないよ。証拠はあるから、奥さんと別れて一緒になってくれないなら⋯⋯訴えてやるわよ」


 証拠は玲子(れいこ)のスマートフォンで撮られた映像の数々だろう。出張先や他所の地域の繁華街でベタベタして来た写真や、こっそり録音された睦言。


 現段階で物理的に殺される可能性は回避出来たが、このままでは俺の築いて来た全てが水の泡と消える。社会的に殺される。俺は自分が窮地に追い込まれたのがわかった。


 激昂する玲子(れいこ)が本気な事を知り、俺も新たに決意をした。狙いは俺ではなくて、妻や息子かもしれないからだ。サイコ女に妻や息子の目をくり抜くような真似は絶対にさせない。


「乗り気ではなかった俺にしつこくアタックかけて来たのはお前の方だ。勝手にしろ!」


 俺は投げ捨てるように玲子(れいこ)に声を荒げて言葉をぶつけると、アパートから逃げ出した。強気だったが、何をされるかわからない恐怖に足がガクガクする。


 だが⋯⋯震えている場合じゃない。玲子(れいこ)は俺を破滅させ、妻や息子の目を奪うつもりなのだ。幸せな奴が憎い、狂気じみた女だと俺は彼女の認識を改めた。


 俺が社会的に追放されてしまえば、こんな危険な女が野放しにされる。それだけは防がないといけない。


 タイムリミットは玲子(れいこ)が集めた証拠をもとに弁護士と相談し、裁判を起こすまで。積極的で仕事の覚えも早い玲子(れいこ)の事だから、そういった法的に争う準備に余念がないはずだ。


 けじめをつけるために思い切って決意し、玲子(れいこ)のアパートへ乗り込んでおいて良かった。


 一年近い間の逢瀬と二度の来訪で、玲子(れいこ)の生活状況は手に取るようにわかっている。障害を排除するための確認作業だけで済む。彼女は仕事は出来る。だが感情的になりやすく思ったより雑だ。


 別れた事や訴訟の準備により行動パターンが変わる可能性はあるので、慎重に確認する。時間が惜しい。それでも何度か確認のために下調べを続ける。玲子(れいこ)の部屋の様子は、ベランダからしっかりと伺う事が出来た。


 確実を期すために粘った甲斐もあって行動パターンは把握出来た。玲子(れいこ)は会社の休日前の夜、身体をしっかりと休めるためにアパートにいるのがわかった。


 玲子(れいこ)の留守の間に、2度の来訪で触れた箇所の指紋は薬品で消しておいた。ベランダの鍵は開錠した状態で壊しておく。監視されている気分になるので、冷蔵庫の髑髏の目玉は、髑髏の製氷皿の外側だけ指紋を落とし、中身は触っていないので見なかった事にした。


 偶然殺人強盗犯でも入ればいいが、俺がそれを知らせるわけにはいかないし、証拠が警察に見つかるのは不味いだろう。この無防備な状態にしておくのは賭けになる。


 会社での玲子(れいこ)は振る舞いこそ変わらないが、俺には近寄らなくなった。仕事上の会話は交わすが感情はなく機械的になった。アピールし過ぎて叱られたんだと社内に噂が流れていた。


 

 決行の晩がやって来た。俺は異様に興奮していた。俺を蔑む空気感を醸し出す玲子(れいこ)を、どうやって物言わぬ塊へ変えるか⋯⋯ずっとシミュレーションを繰り返していたせいだ。


 全てあいつが悪い。順風満帆な俺の日常に割り込んで来て、全てを破壊して奪おうとしたからだ。言うなれば俺は正義の鉄槌を下す御使いだ。断罪の時はまもなく終わる。


 ◆


 ────あっけなく玲子(れいこ)は息絶えた。身体を貫く刃の痛みに気づく前に、アルコールで血流の良くなった大量の血が溢れ出した。


 強がっていたが酒に弱く、ビール一缶でヘロヘロになる。あらかじめ解放されていた窓から侵入し、冷たい風が肌に触れるより早く殺るのは簡単だった。


 念のため、声を立てられないようにテーブルに伏して居眠りをする玲子(れいこ)に猿轡をかましてある。長い時間口を塞ぐと目を覚ますだろうが、包丁を突き立てる間くらいならば起きる事はなかった。


 無防備な小さな背中。溢れ出る血だまりの中で痙攣する玲子(れいこ)の顔は見えない。


 嫌いではなかったのに、どうして俺達はこんな風な別れ方をする事になったのだろう⋯⋯。


 仮にも愛した女が息を引き取る瞬間だ。俺はシミュレーションの想定外の感情に心が揺らぐ。玲子(れいこ)と違いサイコパスになれない。だが迷いは一瞬。妻や息子に危険が及ぶ前に、禍根(証拠)は絶っておかねばならない────




 ────週明けから玲子(れいこ)の無断欠勤が続いた。連絡しても応答がなく、彼女のスマホに繋がらない。比較的仲の良かった同僚達が玲子(れいこ)のアパートを訪れる事になり、ようやく彼女の死亡が知らされた。犯行の状態から侵入経路は鍵の破損した窓、強盗殺人事件として扱われる事になった。

 

 極端に物が少ないため家探しには時間がかからず、スマートフォンや財布などは犯人により持ち去られていたそうだ。


 会社のシュレッダーで法律事務所の資料を裁断していた俺は、後輩達の様子から状況を耳にする。誰も何も疑わない。俺はようやく玲子(れいこ)が入社して来る前の、平穏な日常を取り戻す事が出来た。


 時間がなくて綿密な計画とはいかなかったし、いずれ俺にも捜査の手が回るはずだと考えている。証拠はなくとも、捜査によって、俺と玲子(れいこ)の密会はどこからか漏れると思う。


 妻子ある身で付きまとわれ迷惑していた⋯⋯会社の中に証言者はたくさんおり、玲子(れいこ)の普段の言動から疑うものは出ない。叱ったおかげで彼女も反省した後に見えた。それで対処出来るはずだった。


 このようなご時世だ。通り魔や強盗なんて最近はよくニュースに流れてくる話になっている。不用心で運の悪かった玲子(れいこ)は可哀想⋯⋯それで終わりだ。そのうち忘れられてゆく────


 ◆


「〇〇署の者です。あなたには殺人容疑の罪で逮捕状が出ています。署までご同行願います」


 蒸し暑い梅雨の終わり頃だ。平和な暮らしが続く毎日に、寝耳に水の警察達の来訪。休日の俺の自宅に十数人の警察官がやって来て、逮捕状が突き付けられる。理由は一人暮らしの女性会社員の殺害。何故か不倫関係にあった事まで調べがついていた。


「あなた⋯⋯」

「パパ⋯⋯」


 不安そうに俺を見る妻と息子。一度目は何事もなく、この件は終了したはずなのに俺にも訳がわからなかった。


「大丈夫、心配ない。誤認逮捕だよ」


 妻も息子も何の事かわからないだろうが、不安にさせないように笑顔でそう告げて頭を撫でる。終わったはずの事件⋯⋯内心この日が来るのを覚悟していたが、いざ複数の警官達を前にすると覚悟が鈍る。


 証拠は全て消去していた。だから逮捕状が出るような物証や確証など、出てくるはずがない。街の防犯カメラも性能は悪く、怪しい人間を特定するのは困難なはずだ。


 玲子(れいこ)には親しい友人も、連絡を頻繁に取り合う家族など身近にいない。俺はうまく別れる事が出来たが⋯⋯あのまま生きていても彼女は誰かの都合の良い女で終わっただろう。


 しかし俺の保身だけ考え抜いた行動は、死んだはずの玲子(れいこ)によって否定された。彼女は彼女なりに俺の気持ちの変化を察して予防線を張っていたのだ。



 取り調べで見せられたのは隣人の生配信中に、俺が何度もベランダへ侵入する姿。防犯カメラが捉えられていない俺の姿をしっかりと捉えていた。怪しさを出さないために、ギリギリまで顔出ししていたのが仇になった。


 この隣人の配信の過去の映像には、俺と玲子(れいこ)とのやり取りの音声まで入っていたのだ。彼女が何度も隣人の配信について話していたのに、俺は興味なく聞き流して気づかなかった。


 だがまだ確実な証拠はない。映像は画像を引き延ばしたせいでそれほど鮮明ではなく、似た顔なんていくらでもいると開き直る事が出来るだろう。物証を警察側が出すまで、俺はどのみち余計な事は話す気はなかった。


 現場で使用した衣服や靴はとっくに処分している。玲子(れいこ)のスマートフォンは分解し、粉々に砕いて少しずつ日を変えて会社のゴミに紛れさせていた。玲子(れいこ)を刺した包丁だけが処分が間に合わなかったが、血を洗い流して出張先の川に捨てた。


 決定的な証拠がなければどうにもならず、俺と玲子(れいこ)の関係も疑うだけで決め手にならなかったはずなのだ。


 こんな状況で俺を捕らえるなんて、いくらこの地域の警察が無能の集団だとしても、本来ならばあり得ない状態だ。


 それでも逮捕状が出たのは、余計な事をした配信者が、俺に襲われないようにするためかもしれない。少なくとも罪の如何に関わらず、証拠提供者である配信者が引っ越すまでは、俺が拘束されると決まっているようだった。



 勾留中はスマホも使えない。俺は藁にも縋る思いで妻に頼み、配信系に詳しそうな人物にメッセージを送ってもらう事にした。


 無料で色んな相談をしてくれる配信チャンネルがあると、面会に来てくれた妻から聞いたのだ。妻は誤認逮捕か冤罪だと、俺の話をいまも信じてくれている。家庭を守るために一緒に戦おうと励ましてくれた。実際の所、証拠はいまだ配信映像だけだ。そんな映像など、作ろうと思えばいくらでもフェイクが作れるだろう。


 


 ────面会の後、俺の相談メッセージはすぐに送ってもらえたとわかった。勾留され、情報伝達ツールのない俺が、リアルタイムの情報を何故知ることが出来たのか。


 それはその返信内容を現在、生配信という形で()()()()()()()()()からだ。


 ()()()()()玲子(れいこ)が、()()()()()の刃物を片手に、壊して()()()()()()はずのスマートフォンをもう片手に持って俺の前にやって来ていたのだ。


 背中の刺し傷は残ったまま。つまり死んでいる。勾留所に玲子(れいこ)が何故侵入出来たのかは不明だ。それより彼女の握る刃物が俺に向けられる前に、看守を呼んで間に合うのか⋯⋯俺はだらしない格好の女の配信よりも、どうやって生き延びるのかに必死になった。


「えーっと、レイコが飛び出した理由はこのメッセージか。どれどれ⋯⋯」


『夢見さま、こんばんは。いつも楽しく拝見させていただいております。今回は無実の罪で逮捕された夫について相談があります⋯⋯』


 俺が頼んだ通りに妻はメッセージを送ってくれたようだ。この頭の悪そうなライバーには期待していない。こいつ目当ての視聴者の連中の知識マウントを期待していた。


 あまりにも人気ライバーでは、メッセージを読んでもらえない可能性があった。この夢見ガチコとかいうふざけたアドバイザーならば、解決に割いてくれる時間もたっぷりあると思えた。


 玲子(れいこ)の幽霊は口元を不気味なくらい綻ばせている。自分を殺した犯人の存在が、この配信者によって捏造出来る可能性を告げられてしまうかもしれないのに⋯⋯何故笑うのだろうか。


「はぁ? 待って無実? 奥さん旦那と後輩が不倫関係にあったの知らないままなの? つか不倫相手ぶっ殺した案件をうやむやにするために、奥さんパシリにするとか⋯⋯とんでもねぇな、この夫。目玉のゼリー見てビビッて不倫相手殺っちゃうとか⋯⋯どっちがサイコパスって話だよ」


 リスナーたちが騒ぐ。彼らのチャットの内容で正確な事がわかった。このライバー⋯⋯俺をこんな目に合わせた元凶だった。何故か俺の犯行を捉えた部屋から隣の⋯⋯玲子(れいこ)の部屋へ引っ越している。配信用の名前は変えたが、その見覚えある部屋を俺は忘れてなどいない。


 酔った配信者は配信中にそのまま寝てしまった。ちょうど玲子(れいこ)を刺し殺した位置で。よく見るとライバーの所からベランダへ向かって血の足跡がついていた。


「せんぱ〜い、私から逃げられると思った? せんぱいアレ見たんでしょ? この人にはただの髑髏型に入った目玉のゼリーに見えたようね⋯⋯」


 ひと通り映像を見せて満足したのか、黙っていた玲子(れいこ)が俺に話しかけて来た。メッセージを送った以上、妻もこの配信を見て疑念を持つはずだ。それでも家族のために息子のために、浮かんだ疑念を黙っていてくれさえすれば助かるかもしれない。


「良い奥さん持って幸せだね、せんぱい。でも残念。せんぱいは私がちゃあ〜んと連れて行ってあげるから」


 ────カッ!


 ⋯⋯と、目を見開く玲子(れいこ)。出会ってから初めて彼女の目をまともに見た気がした。


「この目はね⋯⋯たぶんこの世界のものであって、この世界のものではないものなの。あのアパートに冷蔵庫と一緒にずっとある、言うなれば可能性の転換点ね」


 何を言っているのか俺にはすぐにわからなかった。拘束されていない俺は油断した玲子(れいこ)から刃物を奪おうとしたが、すり抜けてしまった。


 やはり幽霊みたいなもの。もしくは俺の夢? 見せつけられた映像も幻だったのかもしれない。


「せんぱいが事実を幻にしようとしたように、私も無くしたものを幻から事実に変えるの。一夜の過ちが見せた悪夢⋯⋯蜃気楼なんて言わせない。起きた事実をきっちりとせんぱいにお返しするよ」


 ────カッ!!


 再び玲子(れいこ)の目が開くと、激しい怨みが俺へとぶつけられる。掴めないはずの刃が俺の身体の、玲子(れいこ)を貫いた位置と同じ位置に沈み込む。


 俺の中ではすでにないもの⋯⋯だから俺には触れられない。あの目玉は水を掬って氷のように、物事を固められるものなのかもしれない。使い道の種明かしされても、()()()()()事にした目玉に、俺は触れられなかった。そんな力があるのなら、俺だけを知らぬ間に連れてゆく事が出来たんだろうな⋯⋯。


 最初の一突きの後から意識を失うまで、俺は痛みを感じる間もなく滅多刺しされた。あっけない最後は玲子(れいこ)と同じ。映像を見せたのは、俺が妻や息子に()()()()()事にされる事をわからせるためだ。


「裏切り者なんてもういらない!!」


 そう叫ぶ玲子(れいこ)が、俺に何を求めていたのかなんて⋯⋯結局最後までわからなかった⋯⋯────


 ◆


 ◆


 ◆


 ◆


 ────強盗殺人の罪で逮捕された容疑者の男が、勾留中に刃物で滅多刺しにされ惨殺される事件が起きた。容疑者を映していた防犯カメラには突然胸から血を流し、男が倒れた姿が映るだけだった。犯人は不明、侵入経路も不明。全ての防犯カメラも故障のチェックされたが、正常だったという。


 現場には容疑者の男が犯行に使用したとされる刃物と、現場から持ち去られた被害者の女性のスマートフォン、それに被害者が容疑者を訴えるために用意した宿泊先のリストなどが残されていた。


 また不可思議な事件の発端となるアパートの現場は封鎖、立ち入り禁止と決まった。そこには配信により事件を解決させた一人暮らしの女性会社員が住んでいたが、にこやかに笑う大家と目の笑っていない捜査員との間で口論となった末に、アパートを追い出される形になった。


 彼女は事件に関わりはない。ライバーとして生配信をしていただけなのだから。配信中に犯人が背中に映っただけ、引っ越し先が被害者の住んでいた部屋だっただけだ。


 そして事後報告がアカウント登録抹消されたはずの彼女の配信画面にて放映されたのだ。意気消沈していた数少ない登録者に小さな混乱が起きたのも無理はないことだろう。


 ──ガチコ、ガチで追放?!

 ──ガチコ、マジいないぞ!

 ──チチガチ出しで垢バン!

 ──レイコさまも消えた??

 ──レポ書いてるの誰だよ?

 ──目玉はどこ行ったの?!

 ──目玉は本当にゼリー?!

 ──生配信復活希望する!!

 ──ガチコの知らない世界!

 ──眠りガチコ事件解決す!

 ──七夕逆棚ぼた女ガチコ!

 ──誰か、拾ってやれよ!!

 ──全力でお断りします!!





 ───────おしまい!?


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― 新着の感想 ―
これはあの! ですね。 こんなにドロドロとしたものが繰り広げられていたのですか……。 どこまでも自分勝手な理由。 片側だけの罪ではあり得ないでしょうに。 そしてヒトコワかと思いきや……。 玲子さん、…
ガチコーーーーー!!!! レイコがれいこだった!!! 最初は不倫話で、ドロドロなやつかー、と読んでたら途中から……あれ? 不倫? あれ、玲子……? ガチコの話で…… レイコーーー!!! と気づいたやつ…
どこでだれが見ているのかわからない……。 なにより怖いのは、今の世の中、人の心。
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