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離婚しましょう、私達  作者: 光子
離婚しましょう
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5話 何で来ました?

 


 ◇◇◇



 結婚生活十日目――


 相変わらず腫れ物に触るような態度を取られつつ、十日が経過した。

 あれからフェルナンド様はちゃんと家には帰ってくるけど、私とは会話も目線も合わせない日々が続いた。


「やっぱり私、皆に嫌われてるよね」

「そ、そんな、嫌われているなんて……」

「嫌われてない?」

「……あの、私は、リーゼ様が以前と変わったって分かっていますから……!」


 庭先にあるテーブルに顔を伏せながら弱音を吐く私を、困ったようにアルルが慰めてくれた。うう、嘘でもその優しい言葉が嬉しい!


「ありがとうアルル」

「いえ、お礼を言うのはこちらの方です。弟の治療費を出して下さったこと、感謝しています」

「いーのいーの、私の家、お金は沢山あるみたいだから、病弱な弟さんのために使ってあげて。で、成長したら、今度は私を助けてよ」


 以前、病弱な弟のために働いていると聞いたので、お父様が私のために作ってくれた口座のお金をアルルの弟のために使ったら、想像以上に感謝された。

 このお金は小説の中のリーゼが贅沢をするためにお父様が用意してくれたお金で、自分が働いて得たお金じゃないから感謝されるのは申し訳ないんだけど、無駄に贅沢に使うくらいなら、有意義な使い方だと思う。


「分かりました、そう伝えます」

「いや、冗談だから」


 アルルだけは、この家で私に普通に接してくれるから、もう精神安定剤状態になってる! アルルがいなかったら、とっくに実家に帰ってると思う。でもそれをしないのは、自分が無駄に感じた最後の使命によるものが大きかった。


(聖女とフェルナンド様が出会うのを見守るまでは、離婚出来ない!)


 勿論、フェルナンド様が望めば今すぐにでも離婚するけど、フェルナンド様は相変わらずの放置を決め込んでいて、心底、私に興味が無いのが目に見て分かった。よくリーゼはこんな状態で結婚生活を続けられたよ。

 今の私は、フェルナンド様から離婚の文字が出ないかを、心待ちにしてる。


「そう言えば、聖女は本物だったみたいですよ!」

「あー、うん、そうみたいね」


 聖女が本物なのは、小説で読んだから知ってる。


「聖女様が現れて下さって、本当に一安心です。これで、世界は救われますね」

「そうだね」

「今、聖女様はとある侯爵家が世話役になっているそうですが、近々、他の貴族の家に世話役が移るって話も聞きましたよ」

「そうなの!? それって、グリフィン公爵家って可能性もあるってこと!?」

「そ、それは私には分からないですけど、聖女様のお世話は重要な任務ですから、フェルナンド様に任される可能性はあるんじゃないでしょうか」


 フェルナンド様が迎えに行かなかった聖女は、フェルナンド様の代理で行った者に聖女とのしての力を見事に証明したけど、小説とは違い、グリフィン公爵家は聖女を迎え入れず、名のある侯爵家が代わりに聖女を迎えることになった。


(これで聖女がグリフィン公爵家に来ることになったら、小説の内容に軌道修正出来るし、そのままフェルナンド様がヒロインのことを気に入って、お互いに意識すれば、私の使命はお終い! 後は、世界の行く末を見守るのみ!)


 二人の恋路の邪魔なんてしないし、どっちかって言うと、上手く行くように心から応援してる! いっそのこと、既成事実でも作ってくれないかなーなんて思っている。


(キスの一つでもしてくれれば、離婚の原因になるし)


 その時はこの、映写機で録画しまくる!

 浮気の証拠があれば簡単に離婚出来るし! あ、慰謝料とかは請求しませんよ? だって全部、私の自業自得だもの。円満に離婚出来れば、それで良し。


(まさか転生して、旦那様の浮気を切望することになるとは思いませんでした)


 フェルナンド様と離婚したら、モンセラット伯爵邸に戻って、どうしようかな。お父様が運営している会社に雇ってもらおうかな。私、社会経験あるし、やっていけると思うんだよね。


 そこで誰かと普通の恋をして、普通に結婚してみたい。

 それが私の望み。


 このまま、ヒロインとフェルナンド様が出会うまで大人しく過ごして、時が来たら去る。



 ――――素晴らしい筋書きだったのに、何故か、今まで私に近寄っても来なかった旦那様が、今、私の目の前でお茶を飲んでる。何で!? さっきまでそこにはアルルが座ってたのに!


「どうしました? 俺とお茶を飲めて、嬉しくないんですか?」

「わ、わーい、嬉しいなぁ」


 自分でも分かってる、完全に棒読み。


 急に何? 何の用? まさか、もう訳あり男爵のもとに追放!?




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