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離婚しましょう、私達  作者: 光子
離婚しましょう
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4話 自業自得

 


「リーゼ……そうか、私は愛し方を間違えていたのか……」


 小説では、娘さえいなければ優秀な男で没落なんかしなかっただろうって書かれていたし、とりあえず、お父様はこれで大丈夫かな?

 なんにせよ、これで利子問題は解決! 旦那様と離婚しても問題無し! いつでも離婚出来る!


「そうだお父様、聖女が現れたって話は聞きませんか?」

「聖女? 言われてみれば、そんな力を持った特別な女性が現れたかもしれないって噂は聞いたことがあるな」

「! 現れたんですね!?」

「まだ噂の段階だよ、聖女の存在を心待ちにしている人々が作った虚像の話が、過去に何度も出回っているしね」


(でも今回は違う! 私は知ってる、その女性こそ、本物の聖女だって!)


 この世界では、土地の汚染が進行している。

 闇に汚染された土地は腐敗が進み、草木が枯れ果て、水が枯渇し、空気が濁る。そんな状態を癒すことが出来るのが、聖女なのだ。

 小説では、ここで真意を確かめるために訪れたフェルナンド様が本物の聖女だと確信して、グリフィン公爵邸に連れて帰ることになり、そこで、親密になっていく二人にヤキモチを焼いたリーゼが聖女に嫌がらせを繰り返し、怒ったフェルナンド様がリーゼを地獄の底に突き落とした。


 今の私にヒロインを攻撃する気はないけど、二人の純粋な恋の行く末の邪魔は出来ないし、何より、二人には協力し合って世界の汚染を解決してもらわないと困る!


(聖女を連れて戻って来たフェルナンド様に、ちゃんと今までのことを謝罪して、離婚しようって伝えよう)


 それで全てが上手くいく。


(ごめんねリーゼ、貴女の恋は破れてしまうけど、これが皆の幸せのためなの)



 ――これが小説通りなら、フェルナンド様は暫く家に帰ってこないはずだった。


「何で帰って来ちゃったんですか!?」

「は?」


 いつも通りに家に帰って来たフェルナンド様を見た瞬間、思わず声が漏れた。しまったと思ったけど、もう遅い。


「ここは俺の家なのに、帰ってくることも許さなくなったんですか?」

「いえ、そういうワケじゃなくて……」

「いつもはもっと早く帰って私との時間を作れと五月蠅いクセに、随分な変わりようですね」

「えーーっと」


 どんな言い訳も思いつかない。

 あれ? 何で行かないの? フェルナンド様が聖女の真意を確認に行くのが、二人の初めての出会いなのに!


「貴女に確認したいことがあって、早く帰って来たんです」

「確認?」

「今日、モンセラット伯爵に利子の取り消しを言いに行ったそうですね。モンセラット伯爵から直接謝罪されました。今まで本当に申し訳ありませんでした、残りの借金は返却しなくて結構です、と」

「お父様……」


 今日の今日で早速行動に移してくれたんですね……って、そうじゃなくて!


「あの! 聖女が発見されたかもって話を聞いたのですが、フェルナンド様は確認に行かなくていいんですか!?」

「聖女の情報は眉唾物が多いんです。家に帰りたくないなど理由がなければ、俺が直接赴くことはありません」


 まさか、私に確認したいことがあるって理由で、フェルナンド様が家に帰って来ちゃったってこと!? なんてことなの! ヒロインとの出会いを潰しちゃった!


「何故、急に利子を取り下げようと思ったんですか?」

「……気付いたんです、こんなことをしても、誰も幸せになれないなって」


 フェルナンド様もヒロインも、お父様も、私自身も、幸せになれない。


「今更ですね」

「最もな意見だと思います。本当に……今まで申し訳ありませんでした」


 深く深く頭を下げて、謝罪する。謝って許して貰える立場じゃないけど、どうしても、直接謝りたかった。


「申し訳ありませんが、そんな謙虚な態度を今更取られても、信じられません。どうせ、数日経てばまた、いつもの貴女に戻るでしょうから」


 そう思われても仕方がない、全部、私がしてきたことが返ってきただけだもの。


「貴女が誰と何をしていようと、興味ありません。ですが、俺に迷惑をかけるようなことは止めて下さい」


 妻に向かって、興味がないと冷たく言い捨てるフェルナンド様は、本当に、リーゼのことが好きじゃないんだと、ハッキリと理解出来た。


 そのまま私を残し、その場から去ってしまうフェルナンド様。


 玄関ホールからは、私以外、誰も私の傍に残らなかった。これが今の自分の評価だと思えば、仕方がない、それだけ酷いことを、リーゼは、皆に対してしていたんだから。


「……泣いちゃ駄目」


 悪いのは私なんだから、泣かない。


「大丈夫、出会いは遅れてしまったけど、聖女とちゃんと出会いさえすれば、物語は進むはずだもの」


 それだけ見届けてから、離婚を言おう。それが今の私の、フェルナンド様の妻としての、最後の使命だと思うから。



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