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離婚しましょう、私達  作者: 光子
離婚しましょう
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3話 モンセラット伯爵家



 ◇◇◇




 結婚生活二日目――正確には、記憶を取り戻してから、なんだけど、早く離婚しないとって想いから、結婚生活で日にちを数えることにしてる。

 一日でも短い日数で離婚することが、今の私の目標!


「このスープ、美味しいのね」

「――っ!」


 ダイニングルームにて用意された朝食の感想を言っただけなのに、配膳係の女性の動きが止まる。


「美味しい……!? リーゼ様が? 普段ならいちゃもんをつけてお皿ごと床に叩き落すリーゼ様が、美味しいと仰りましたか!?」


(最低か、リーゼ!)


 こんなに美味しい料理に文句をつけるのも謎だし、ご飯を粗末にするのも駄目! 全く、本当に我儘で傲慢だったのね。


「今までごめんなさい、もうそんなことしないから」


 私ではないといえ、転生してしまった以上、リーゼは私――うん? なんかややこしいけど、とりあえず、リーゼがしてきてしまったことは、今は私の責任。


「ねぇ、フェルナンド様はどこにいるの? もうお仕事?」


 朝食の時間だと言うのに、ダイニングルームにフェルナンド様の姿はない。


「申し訳ございません、リーゼ様が朝食をご一緒したいと要望していることはお伝えしているのですが、仕事が忙しく実現が叶いません、ご了承下さい」


 ダイニングルームに静かに立っていた男性が、私の問いに答えてくれる。確かこの人は、この家の執事で《ミセス》だったけ、昨日アルルに確認しておいたのよね。


「そう、お仕事が忙しいなら仕方ないね」


(本当は少しでも謝っておきたかったんだけど、会えないなら仕方ない)


 簡単に納得した私に驚きの表情を浮かべるミセス。昨日から驚かれてばかりだけど、今度は何が驚きなの?


「どうかした?」

「……いえ、いつものリーゼ様なら、何で夫婦なのに私との時間を大切にしてくれないの、と、怒鳴り散らしていたところでしたので」

「そ、そう。えーーっと、ちょっとした心境の変化があったの」

「心境の変化ですか」


 リーゼの話を聞いていると、本当に好き勝手してたんだなぁってしみじみ思う。こんなことしたって、フェルナンド様の心は手に入らないどころか、益々離れて行くでしょうに。


「あ、そうだ。ミセスにお願いがあるんだけど」

「…………お願いですか?」


 明らかに怪訝そうな顔ね、無理もないけど。


「馬車を用意して欲しいの。ちょっと実家に――モンセラット伯爵邸に帰ろうと思って」

「モンセラット伯爵邸に? 何か用があるんですか?」


 すっごい警戒されてるのが伝わるけど、違うの! これは、貴方のご主人様を当て馬的ザコ悪女から救うためなの!


「えっと……里帰り的な?」

「……かしこまりました」


 全然納得していないみたいだけど、とりあえずは、お願いを聞いてくれるみたい。良かったぁ、借金の利子のことをなんとかしないと、フェルナンド様と離婚出来ないもんね!


「ありがとう、ミセス」


 私がお礼を伝えるとまた驚いた表情をしたけど、私は気にせずに、残りの朝食を食べることにした。美味しいー! 流石はグリフィン公爵家の朝食! 美味美味!


 私は全ての朝食を綺麗に食べ終えてから、席を立った。



 ◇◇◇



 モンセラット伯爵、リーゼの父親は、妻を早くに亡くし、妻に瓜二つに育った一人娘である私を溺愛していて、その財力から何でも我儘を叶えてあげてしまっていた。だからこそ、リーゼはこんなに我儘で傲慢に育ってしまったのだ。


(お父様は一代でモンセラット伯爵家を大金持ちにまで持ち上げた商才の高い人。リーゼさえ我儘を言わなければ、モンセラット伯爵家が没落することは無かった)


「リーゼ! よく帰って来たね! お帰り!」

「ただ今、お父様」


 顔を見るなり抱き着いてくるお父様を、受け入れる。


「急に帰ってきてどうしたんだい? まさか、またフェルナンド様に冷たい扱いをされているのかい? それなら、また利子の額を増やして、言うことを聞かせてあげよう」

「ちょーーーーっと待って下さい! お父様!」


 こちらから本題を言う前に、特大の爆弾を落としてきましたね。まさか、この親子、言うことを聞かない度にそうやってフェルナンド様を脅してたの!?


「どうしたんだい?」

「すぐに! 今すぐにフェルナンド様に対する違法な利子を止めて下さい!」


 その利子の所為で、フェルナンド様はいつまでも借金を返却出来ず、私と結婚生活を続ける羽目になってるの! 利子さえなくなれば、フェルナンド様なら簡単に借金を返済出来るはずなんだから!


「どうして? リーゼが望んだことじゃないか?」

「それはそうなのかもですが、兎に角、止めて欲しいんです!」


 私達の未来のためにも!


「リーゼがそう言うなら……分かったよ」


 私の必死の意見が通ったのか、単に溺愛する娘の要望だからかは分からないけど、お父様はすぐに頷いて下さった。危ない危ないこの父親! 親馬鹿にも程があるでしょ!


「お父様、お父様はモンセラット伯爵家をここまで大きくした、自慢のお父様です。ですから、私のことも甘やかすだけじゃなくて、悪いことをしたらきちんと叱って欲しいんです。それも、立派な愛情だと思うから」


 離婚したら私はこの家に戻ってくるわけだし、今後のためにも、お父様にはちゃんとしてもらわないと!



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