1話 プロローグ
私の夢は、普通の恋愛をして、普通に結婚して、普通の幸せを手に入れることだった。
私の旦那様は、とても美しい顔をした、《グリフィン公爵》家当主、《フェルナンド》様だ。
フェルナンド様は他のご令嬢達からも大変人気があって、私、《リーゼ》も、フェルナンド様が大好きだった。
それこそ、どんな手を使っても彼を手に入れたいと思った私は、彼を騙して、無理矢理、妻の立場を手に入れた。
私と旦那様の関係は、歪だ。
フェルナンド様は、私を愛していない。愛していない人と無理矢理、結婚させられた可哀想な旦那様。だから私は、私からフェルナンド様を解放しようと思った。
「離婚しましょう、私達」
ベッドの上で彼を見上げながら離婚を告げる私に、フェルナンド様は薄らと笑みを浮かべた。
「貴女もしつこいですね、離婚はしないと言っているでしょう」
きっと、喜んで頷いてくれると思っていたのに、当のフェルナンド様からは、まさかの拒否。
「私は、もうフェルナンド様が好きじゃないんです」
「では、もう一度好きになって下さい」
私のことなんて好きじゃないはずなのに、どうして、離婚を拒むの? それどころか、どうして執着してくるの? どうして、私を離してくれないの?
「諦めて、俺の妻でいて下さい――逃がしませんよ」
どんな手を使っても手に入れたいと思った旦那様。でも違う、それは違うの、そう思ったのは、私じゃないの。
貴方のことが好きだったのは、私じゃない。
私はただ、貴方の妻に転生してしまっただけなんです。
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