俺は中二病を卒業できないかもしれない
千文字以内という縛りが楽しそうだったので書いてみました
――聞こえてんだろ?何か言えよ。
先生が黒板に何やら書いて何やら説明する中、俺はそんなことを考える。
誰だってきっとやってるだろう。心の中が読める奴が周りにいて、そいつに語り掛ける風に考えるなんてこと。中二から三年経ったって、やってる奴はやってるはずだ。絶対。きっと。恐らく。
数学は嫌いだ。マジで何言ってるのかわからん。俺の人生において因数分解とか使う機会ねえから。平行は平行だから無限大でも交わらんから。サイン・コサイン・タンジェントはリズムがいいから覚えたけど何に使うのかは知らん。
だから、さっきのようなことを考える。そんな奴はいっぱいいるだろうが、俺は他とは一味違う。
――わかるぞ、話しかける風に考えてても、結局は独り言だったりするんだよな。
心のどこかでは絶対にいないとわかってる奴に、そう話しかける。だってそうだろ?結局はいない相手に話しかけてる風なだけで、俺みたいにマジトーンで考える奴なんか絶対いない。
――手が込んでる?そんなことないだろ、ただの会話なのに。声を出してるか、出してないか。違いなんてそんだけだろ?
授業は順調に進み、俺の一人遊びも順調に続く。さっきのを聞いたら、相手は『十分大きな違いだろ』とか言うかな。
――大した違いじゃないって。空気が震えてるか震えてないかしか違わないんだから。ところで、そろそろ俺が誰かわかった?
先生が何かを言って、黒板をチョークでテシテシ叩く。皆は顔を上げてそれを見て、再びノートに目を落とすが、一人だけまだきょろきょろしてるのが何か気になる。
――誰かわかんないって?ああ、心の声だと聞き分けられないか。俺だよ、お前の斜め後ろ。
その瞬間、きょろきょろしていた奴が、バッと俺の方へ振り向いた。
「……え?」
うちのクラスが誇る不思議ちゃん。たまに返事しないとか、会話中にいきなり黙るとかの奇行をする子だ。その子が、目を真ん丸にして俺を見ていた。その表情は、『マジで聞こえるの!?』と言っているようだった。
――き、聞こえてるよ、マジで。
パアァァァっと効果音が付きそうな勢いで、その顔に笑顔が広がっていくのを、俺はただ呆然と眺めることしかできなかった。