第六話 王子襲来
暗いトンネルの中、走り続ける軍用列車。
真後ろで爆発が起きても魔道車は車輪をレールに、歯車をレールの間の歯軌条に食い込ませ、山を登り続ける。
車体の上に大穴が開き、天井の半分を失ったアンク運搬用車両内に凍てつく冷気が叩きつける。
爆発した宝玉で車内各所が焦げ、火がついている。
衝撃で床に倒れ込んだ将軍と仕官、導師と魔導師二名が、一点を凝視する。
床に座り込み抱き合う聖歌隊が、ペーサロの拷問から逃れ咳き込むイラーリアが見上げる少年を。
悠然と立つ、トゥーン=インターラーケンを。
「伏せな!」
魔王子が命じるのと、光が走ったのは同時だった。
床に倒れ込んだままの将軍が引き金を引く。
同じく士官が座ったままで背中の銃を構え、発砲した。
一瞬前までトゥーンが立っていた場所を光が貫く。
彼の姿は消えている。
同時に、士官の首から血が噴き出す。
トゥーンが最大出力の肉体強化で飛び出し、爪で士官の喉を引き裂いたのは、人間達の目にとらえきれなかった。
それでも、肉体と眼光をもって鍛錬を怠っていないことを主張していた将軍が、手にしていた小銃をトゥーンへ向ける。
彼は今度は避けなかった。
代わりに、喉から血を噴き出す士官を、将軍めがけて投げ飛ばした。
引き金を引き絞ろうとしていた将軍だが、視界を肉体と血飛沫に塞がれる。
瞬時に床を転がり、急速に死体へと変じつつある士官との衝突を回避。
転がりながら態勢を整え、片膝をついて起きあがり、素早く両手で小銃を構える。
だが、トゥーンは同じ場所に居続けてはいなかった。
今度はアンクの方で悲鳴が上がる。
視線と銃口を向けたとき、魔導師の一人が胸を剣で貫かれていた。
それは喉を掻き切られた士官が持っていたはずの剣。
今は魔導師の一人、その心臓を貫いている。
そして、柄を握るはずのトゥーンは、既に姿が見えなかった。
車両後方から、何か金属を叩く音がする。
それはドアを開けようとする音。
後ろの車両から軍人達が駆けつけようとしたらしいが、扉が開かない。
トゥーンの攻撃で壁も床も歪んでしまい、ドアが開かなくなってしまっていた。
「おのれぇっ!!」
叫んだのは魔導師の、残り一人。
この一瞬で術式を組み終えたらしく、眼前に組んだ手を頭上へ掲げる。
組まれた指先から光と甲高い音が生じる。
『雷げッッ……!!』
周囲の全てを巻き込んで電撃を放とうとした魔導師。
だが、出来なかった。
後ろから思いっきり蹴り飛ばされたから。
せっかく魔法を組み上げた魔導師だが、それを発動する暇を与えられず、無様に車両の大穴から外へ吹っ飛んでいった。
まだ手に残っていた雷の名残である光が、虚しくトンネルの彼方へ消えていく。
蹴りを放った瞬間を狙い、小銃の引き金が引かれた。
しかし、小さな体に比して大きすぎる脚力を秘めた足は、片足でも容易に自らの肉体を跳ね上げた。
クルクルと舞うように回転し、小柄な体を丸めて車内を飛び回り、跳ね回る。
その軌跡を追って将軍の小銃が光を放つ。光線が天井を、壁を、祭壇代わりの机を貫き、切り裂いていく。
だが元々の反射神経に加え、魔王一族の魔力をもって『肉体強化』を常時発動している彼の肉体を捉えることは出来ない。
光線のいくつかはアンクを射線上に捉えていた。
だが光はアンクに届かない。
その寸前で障壁に弾かれ、プリズムに当たる太陽光のように七色の光に分解されて拡散、反射される。
「ちっ!」
魔力でも銃でも傷一つつかないアンクに向けた舌打ち。
そのまま光線を回避し続け、天井の大穴から飛び出し、トンネルの天井に着地。
天井を這う配管にとりついたまま、素早く袖から小さな物体を取り出す。
同時に扉から、幾筋もの光が室内へ伸びる。
扉を銃で開け、切り裂かれた鉄欠を飛び散らしながら、軍人達が飛び込んできた。
「な、何事ですかっ!?」
「将軍! これは一体っ!」
彼らはまず眼前のアンクを目にし、次に片膝立ちで小銃を構える将軍を見つけ、将軍の視線の先にいる人物を発見した。
天井の配管に取り付き、何かを手に持っている人物を。
その手に持っている物も。
赤い宝玉。
暗いトンネル内でもハッキリと見えるほど、強い輝き光を放っている。
それは『炎』の術式が描かれ、魔力が爆発寸前まで込められたものだということは、車両内の少女四人にも将軍にも導師にも、駆けつけた軍人達も含めて、全員が瞬時に理解できた。
導師が慌てて手元のパネルと宝玉を操作する。
右手の銃を向けようとしていた将軍は、即座に胸ポケットの黒い宝玉を左手で握りしめる。
床に伏せていた少女四人は、頭を抱えて身を守る。
駆けつけた軍人達は銃口を向けようとする。
トゥーンはニヤリと笑い、宝玉を持つ手を振りかぶる。
そして、投げた。
輝くアンクが鎮座し続ける半壊した車両へ、ではない。
宝玉は、後ろへ飛んだ。
礼拝車両のすぐ後ろに続いていた、指揮車両の屋根に当たる。
カツン、カツン……という乾いた音は、魔道列車が疾走する音に飲み込まれ、後ろへ流れていった。
閃。
鼓膜を破るほどの轟音が、トンネル内に満ちる。
僅かなライトで照らされていただけの暗いトンネルが、光で満たされる。
狭いトンネル内で圧縮された爆発が、逃げ場を求めて前後へと拡散する。
爆風が前方からの冷風を吹き飛ばす。
宝玉爆発の直撃を受けた車両が砕け、跳ね上がり、変形する。
前後の車両も巻き込んで脱線し、車両が大きく傾いていく。
斜めになった車両は、その角をトンネルの壁になすりつけた。摩擦で車体から火花が飛び、煙を上げ、発火した破片が後方へ弾け飛ぶ。
線路から外れた車体は、片側だけの車輪だけで支えるには重すぎた。鉄の車輪がねじ曲がる。
車体の前後が狭いトンネルの左右に激突してトンネルを塞ぐ。
慣性の法則に従って次々と後続車両が衝突する。
人間が小走りする程度の速度であっても、上り坂であっても、凄まじい重量物である車列は簡単には停まらない。
横転した車両に乗り上げ、脱線し、横倒しになった車両の腹に後続車両がめり込んでいく。
悲鳴。
指揮車両と後続の士官用車両から叫び声が上がる。
爆発の直撃を受けた食堂車にいた軍高官達は、声を上げる暇も無かった。
さらに横転し炎上する前後の車両に、他の高官達も逃げる間もなく巻き込まれた。
突然の衝撃に吹き飛ばされ、壁や天井にまで叩きつけられ、同僚同士が折り重なる。
三両後方で生じた爆発は、直接には指揮車両へ及んでいない。
だが横転する高級士官用車両と連結されていたため、同じく脱線してしまった。
窓ガラスが次々と割れ、室内にあった物や人が窓から放り出されていく。
そして、放り出された全てを下敷きにして、完全に横転した。
その衝撃はアンクが設置された礼拝車両にも及ぶ。
爆風が車内をかき回す。
トゥーンへ発砲しようとしていた軍人達は吹き飛ばされ、床や壁に叩きつけられる。
後方車両の横転に巻き込まれて脱線した指揮車両が、連結された礼拝車両も大きく傾ける。
連結部である巨大な金属の金具が歪み、ひび割れ、聞いたことのない異音を上げてねじれていく。
何かが、爆発した。
連結部が消失していた。
指揮車両とを繋ぎ、礼拝車両を脱線させようとしていた連結部は、固定金具を粉々に吹き飛ばされ、線路上に落下していた。
それは金具が加重に耐えきれず砕けたのではなかった。
緊急時には後方車両を切り離すべく、最初から設置されていた、爆砕ボルト。
中空になったボルト内部に詰められた火薬が起爆し、連結を解除したのだ。
連結部が消失した車体後方には、アンクと連動して光る宝玉があった。
指揮車両との連結を解除した礼拝車両だが、それでも既に車体は大きく傾いている。
連結部近くにいた者は爆砕ボルトの爆風と破片を浴び、体の1/3を削られて即死した。
車内に入っていなかった者は、傾いた車両から振り落とされて線路上を転がった。
車両内にいた者達も、傾いた床を滑り落ち、壁に叩きつけられる。
聖歌隊の四人も同じく滑り落ちる。
「きゃああああっっ!!」
「ひぃんええ!!!」
絹を切り裂く、なんて可愛いことを言ってられないほどの悲鳴。
生死の境を分かつ瞬間、車両の隅に滑り落ちた四人は必死で抱き合う。
身を寄せ合って、背中に打ち付ける破片から身を守る。
だがそれでも、サーラは恐怖に打ち勝とうとした。
薄目を開けて車内の様子を必死に確かめる。
固定されていなかった祭具や小物、何よりトンネルの壁と衝突し粉砕された車両の破片が、トンネル内も車内も無差別に飛び跳ね回る。
導師は必死の形相でアンクの台座にしがみつく。
ペーサロ将軍は、驚くべき事に、滑り落ちていなかった。動いていなかった。
将軍は最初と同じ位置で片膝をついて静止していた。胸ポケット上の宝玉に左手を置いたまま、その周囲を障壁に覆われ、飛んでくる破片から防御している。
涙で滲んだ視界の隅っこに、見慣れた物が映った。
それは聖具、彼女たちが持ってきた楽器だ。
それらも床を滑り落ち、彼女たちから少し離れた場所に転がっている。
「くぅっ!!」
「さ、サーラ!?」
仲間の突然の行動に気付いたイラーリアが叫ぶが、サーラは止まらない。
必死の叫びと共に、抱き合う仲間達の腕を逃れる。
落ちていた聖具に飛びつき、無我夢中でかき集める。
「このバカっ!」
イラーリアは腕を伸ばし、聖具をかき集めるサーラの服の端を掴む。
他の二人も腕を伸ばし、仲間を引きずり寄せる。
そして四人は再び固まり、飛来する破片や物から身を守る。
他の車両と違い、人が少なく固定されていない調度品や軍用資材が少なかったため、傾いて折り重なった時に下の者が潰される事はなかった。
それでも、今は死ななかっただけで、すぐに死にそうな状況に変わりはない。
車体の傾きが止まらず、そのままでは魔道車との連結も外れ、横転してしまう。
連結が外れなければ、先頭の魔道車ごと全部まとめて横転しかねない。
既に前方の連結部がきしみを上げる金属音が、この爆風と轟音の中ですら聞こえていた。
アンクが高速で点滅する。
一際強い光を放つ。
光の点は線となり、組み合わさって図形を描く。
それは『念動』。
トンネルを明るく照らし出すほどの光が生み出す、巨大アンク内に描かれた『念動』が生み出す力。
それは速やかに礼拝車両全体を包み込み、ゆっくりと車体の傾きを戻し、浮き上がった車輪を線路に下ろしていく。
がしゃん……と控えめな金属音が響く。
壁の一方へと床を滑り落ちた人々は、アンクの魔法によって車両が安全に戻されたことに気付いた。
再び爆発音。
軍服がびしょ濡れになるほどの脂汗を流し、呼吸も止まりそうになっていた人々が、爆発音のした方を見る。
それは車両前方、連結部の方。
魔道車と礼拝車両の連結部に仕込まれた爆砕ボルトが作動した音だった。
礼拝車両は魔道車から切り離され、急速に速度を落とす。
ゆっくりと、停止。
そして再び加速し始めた。
最初はゆっくりと、徐々に速度を上げながら。
トンネル出口ではなく、入り口に向かって、重力に引かれて走っていく。
車輪が突然回転を止める。
アンクは車両の緊急停止装置を作動させ、ブレーキをかけていた。
ロックされた車輪と、線路との設置部分から、火花が上がる。
車両は、横転し炎上する指揮車両の直前で停まった。
礼拝車両も天井と壁の一部を失い、とても無事とは言えない状態だ。
それでも車内にいた人々の命だけは救われた。
傾いた車内で必死にアンクの台座に抱きついていた導師も、落ち着いて障壁を展開し身を守ったペーサロ将軍も、飛び込んできた軍人達数人も、無事に生きていた。
真っ青な顔で、今にも心臓が止まりそうなほどの拍動ながら、怪我はなかった。
後方で生じた惨事と比べて、まさにアンクの加護と言えたろう。
震える足で、アンクに寄りかかりながら、ようやく導師が言葉を発した。
「……き……緊急、防御……機構、せせ、せい、正常に、作動、した、ぞい……」
その言葉に、倒れていた人々もようやく体を起こす。
頭を振り、自らの無事を確かめ、周囲の様子を見る。
導師はアンクを見上げてから、床に固定されていたおかげで動かなかった各種装置上の宝玉やパネルを確認する。
その後ろ姿は、徐々に冷静さを失い、興奮へ塗り替えられていた。
「ひゃ、ひゃは、さささ、さすがは、最新型、アンクじゃ……。
あんな、一瞬で、車両の横転から、アンク自身を守る手段を考え、正確に実行するとは……。
ひゃははは、し、しかも、ひゃはは、人間なら、あんな状況で意識を、集中できん、高度な魔法を使えん。
じゃがアンクなら、どんな状況でも、正確かつ瞬時に、どんな高度な魔法をも発動できる!
死の恐怖も、迷いもなく、正確無比かつ多様な魔法発動を可能にする、アンク!
ははは、ひゃはははは!
す、素晴らしい、これこそがアンクの、人間の力じゃ!!
まさに人間は、神の力を手に入れたんじゃっ!!
人は、神になったんじゃあっ!!」
導師の、狂気すら含む笑い声が響く。
神になったと驕り高ぶる言葉が吐き出される。
死体が折り重なっているであろう後方の車列になど、目もくれない。
ただアンクの性能に感動し、興奮し、魅入られている。
「導師っ!」
将軍の声が飛ぶ。
だがそれでも導師の笑いは収まらない。
ペーサロの手が肩を乱暴に捕まえて、ようやく老人は我に返った。
「お、おう、将軍よ。
おんしも無事そうで何よりじゃ」
「挨拶なんかいらんっ!
奴らは、魔族と、聖歌隊の連中は、どこへいったっ!?」
「れ、連中、は……」
導師はようやく周囲へ目を向けた。
後方の火災とトンネル内の照明で明るい車内には、軍人達の姿しかなかった。
アンクより前方にあるのは大きなガラス瓶の列。ガラスの中は見えないが、人影も見えない。
車両内の隅々まで見渡したが、そこにいるのはトリニティ軍の軍人達だけだった。
どこにも聖歌隊の四人の姿は無かった。
ついでに部屋の隅に置いていたはずの四つの楽器もない。
「やつら、どこへ行った?」
「それを聞いてるんだっ! アンクで調べてくれ!」
慌ててアンクを操作し、巨大アンクを輝かせる。
光は強力な『魔法探知』を形成し、周囲へ魔力による知覚を放つ。
アンク間近にいる将軍だけでなく、車両後方で救助活動を始めていた軍人達まで仰天させ不快にさせるほどのもの。
トンネル内の魔力分布を瞬時に把握したアンクは、分析結果まで加えて導師の眼前のパネルに表示させた。
「な……?」
「なんだとぉ!?」
分析結果に導師は、横から表示を見ていた将軍も、絶句した。
そこには巨大な魔力の塊が、幾つも表示されていたからだ。
一番前方にあるのは、魔道車との表示。
その魔道車と現在地との間に、魔力の塊が二つ。
一つはトゥーン、もう一つは彼とほぼ同等の魔力の塊、『Ignoto(未知)』との表示。
「これは、さっきの魔界の王子だけじゃないぞ!」
「これほどの魔力値は、魔王一族以外ありえん……。
まさか、まだ他にも潜んでいたのか!?」
アンクが輝くたび、『魔法探知』も新たに放たれる。
そのたびに表示される情報も書き換えられ、さらに詳細な分析が加えられていく。
車両後方、トリニティ軍第三陣の被害状況と生存者数、残存戦力も更新される。
生存者数は刻一刻と減少し、残存戦力は低下していく。アンクは何の感情も無く、ただ正確に死傷者数の増加を探知し、表示していた。
そしてトンネル自体の破損状況も表示した。トンネルは崩落にまでは至ってないが、亀裂が広がり強度が著しく低下していると解析していた。
だが、全軍を指揮すべき地位にある将軍の目は、トンネルはおろか部下達の死へも向いていなかった。
今は二つの魔力の塊に、全ての意識を集中させている。
その二つは表示が更新されるたびに、高速で魔道車へと接近している。
そして魔道車は、二つの存在の接近を待つかのように速度を落とす。
同時に二つの魔力から、小さな魔力の反応が分かれた。
数は、四つ……いや、それぞれに大小の魔力が付随し、計八個の反応だ。
「これは、聖歌隊の連中と、聖具の反応じゃ!」
「まさか、逃げられた……。
そういえば魔道車は、これほどの爆発が起きたのに、なぜ停まらなかった?
運転者は何をしていた!?
アンクは、どうして魔道車との連結を外した……まさかっ!!」
将軍の叫びが虚しく響く。
その背後では、横転炎上した車列が燃えさかっていた――。
――礼拝車両の遙か前方。
暗いトンネル内を疾走する二つの影。
その影は両脇に、それぞれ二つの人影を抱えていた。
「も、もう大丈夫ですわ」
「あたいは自分で歩けるって。
降ろしてくれよ、ネフェルティ様」
「ンじゃ、あとは自分で歩いてニャ」
再び前方から吹き下ろしてくる冷気を切り裂いて走っていたのは、ネフェルティ。
その両脇に抱えられていたのはヴィヴィアナとイラーリア。
ネコ姉と並走していたのは、ミケラとサーラを小脇に抱えたトゥーン。
トゥーンは兵士達が持っていた剣を腰に、ネフェルティは銃を背に担いでいた。
「わ、私も、走れます、大丈夫、です」
「これ以上は、トゥーン様のお手をわずらわせねーべな」
「そか、それなら頼むぜ。
この先でクレメン達も待ってるからよ」
聖歌隊の四人は、無事に救出されていた。
彼女たちは宝玉の爆発で横転しかけていた車両から、トゥーンとネフェルティによって助け出されていた。
二人の卓越した魔力による『肉体強化』と、生来の優れた運動神経をもってすれば、人間二人を抱えたまま傾いた車両から飛び出すことも可能だった。
さらに兵士の持っていた剣と銃をも奪い、それぞれ二人を担いでトンネル内を走っていた。
彼らの前方、薄暗いトンネルの先。
ライトに照らされた光の中には停車する魔道車があった。
その運転席の窓から身を乗り出して手を振るのはクレメンタイン。
爆砕ボルトによって破壊された連結部の前で手を振るのは、パオラとリアだった。
これにてトンネル編中編は終了です
次回はトンネル編後編、第十八部ですが、諸々の事情により普段より少し長めに間を開けさせてもらわねばなりません。
どうぞご容赦を。
『逃亡特急』
2010年9月10日01:00投稿予定