私、姉なんですけど。
楽しんでいただけると嬉しいです!
「ありがとう!パパ!」
あーうるさい。この甲高い声に耳が痛くなる。
「さやかは可愛いなぁ」
「本当良い子ね!」
「それに比べてさりなは・・・」
私、泉さりなには双子の妹が居る。
名前はさやか。私よりずっと可愛くて勉強もできてみんなからも好かれている。
それに比べて私は顔は普通で勉強はそこそこ友達もまあまあ居る。
凡人だ。何もかも普通だ。
私のほうが先に生まれてきたのにさやかは私を追い抜いていった。
全てにおいて私より上。だから私は大事にされていない。
お父さんもお母さんもさやかが可愛くて仕方がないんだろう。
いつも私はさやかのオマケだ。
「お姉ちゃん!そのネックレス可愛いね?」
「そう?」
「うん!すっごく可愛い!私も欲しいなぁ」
また始まった。
「さりな。そのネックレスさやかにあげたらどうだ?」
「なんで?」
「さやかが欲しがってるだろ?」
は?
いつもこうだ。お父さんとお母さんはさやかしか見ていない。
「これ私のなんだけど・・・」
「はぁ。さりなはいつも口答えばっかり。少しはさやかを見習ったら?」
この人達は何を言ってるのか理解できないのは私だけだろうか。
「お姉ちゃんだめ?」
ここで断ったらいつもお父さんに怒られる。さやかのお願いなんだから聞けと。
「・・・はい。」
「ありがとう!!」
・・・私の気のせいなんだろうか。
さやかは私から何かしらのものを奪いとると笑っているように見える。
私にざまあと言わんばかりの笑顔で。でもすぐ元の可愛らしい笑顔に戻る。
「よかったなさやか」
「うん!お姉ちゃん大好き!」
そう言って私に抱きついてきた。
「さやかは可愛いわねぇ」
「ありがとう!じゃあ私そろそろ学校行ってくる!」
「いってらっしゃ~い」
やっとうるさいのが学校に行った。
「はあ」
今までこうして私のものがどんどんさやかに奪われていった。
初めは香り付き消しゴムだった。次はものさし、鉛筆、ハンカチ。
私はだいたいさやかのお下がりだ。私が姉なのに。おかしな話だ。
「・・・そろそろ学校行くかぁ」
「行ってきまーす」
もちろん返事はない。
「おはよう」
「お、さりなおはよう」
「・・・なんですか」
「あれ見ても何も思わないわけ?」
そこにはさやかがいた。さやかが仲良さそうに話してるのは同じクラスの
日向くんだった。日向くんは最近私が気になっている人だ。
「何も思わなくはないよ?」
「あいつに日向取られるぞ?」
「私関係ないし。あの人達の問題だから。」
「そ、うちは何もしないけどね。」
「ほっといてくれたまえ」
「可愛げなさすぎだろ。そういうところがうちは好きだけど。」
「へいへい」
「可愛げがない」それは私が幼少期から言われ続けてきた言葉だ。
もう慣れている。でも傷つくことには変わりないいだよなぁ。
「そろそろ戻りなよ。さやかちゃん」
「え〜私もっと日向くんと話したいよ。」
「もう授業始まるよ?」
「わかった・・・また来るね?」
「うん。待ってる」
「ばいばい!」
聞きたくもない会話が耳に飛び込んでくる。あざといなぁ。
私もあんなふうにできたらいいのに。日向くんもどうせさやかのことが
好きになるんだろうな。さやかに奪われていったのは物だけじゃない。
友達、好きな人、先生。全員さやかの方に行く。
「お、泉おはよ。」
「おはよ日向くん」
「今日は髪くくってんだ?」
「あうん。そうだけど」
「俺そっちのほうが好きだわー」
「そ?じゃあ明日からこれで学校来るわ。」
「よろー」
あーだめだ。こいつ天然人たらしだ。普通さらっとにあってるとか言わねーっつーの。あーあ。これ好きだわ。
さやかが私を睨んでるのは気のせいかな。