お茶会事件
ミシェルお休み会
しばし休んでくれ
「ジュリーちゃん、今日こそは一流貴族のご子息を捕まえるのよ。いいわね?」
「もちろんよ!お母さま。この私の手にかかればどんな男もイチコロだもの。」
「うふふ、頼もしいわ…。」
"お茶会"
それは貴族にとって社交の場であり、男女の出会いの場である。
そして彼女たちが今居るのはオーデルッソ侯爵邸庭園前である。
聖クリーチャー王国において1度未亡人になってしまうとその先一生他の誰かと婚姻を結ぶことは出来ない。
つまり、カエラはもうほかの夫を見つけられないということだ。
そうなると彼女たちの生活基盤を支える男を見つけるのはジュリエットの役目になる。今年18ばかりになるジュリエットは適齢期であり、此処を逃すと条件が悪くなるのだ。よってジュリエットとカエラは死に物狂いで様々なお茶会をはしごしていた。
「昨夜からの夜のパーティーには呼ばれなかったけれど、何とか昼の部にはハーバー男爵に頼み込んで呼んでもらえたのよ。このチャンス絶対にものにするのよ!」
「えぇ。もちろん分かってるわ!」
(ほんとに分かってるのかしら...。ジュリーちゃんは面食いだから...。)
カエラは一抹の不安を胸に美しい装飾の施された立派な門をくぐる。
それに続くジュリエット。
ジュリエットはごくごく平凡な魔力をもって生まれた。親和力が低いため若干治癒能力は劣るがそれも平凡の範疇である。
しかし、なぜ今だ相手が見つかっていないのか。
それは彼女がたいそうなメンクイだからである。
男爵や子爵の中にはジュリエットを気に入って声を掛けてくる男もいるのだが、相手の見た目が平凡だとうんともすんともいわないのである。
これにはカエラも手を焼いている。
(とはいえカエラもほぼ顔で中流貴族のミシェルの父を選んだのだが...。)
肩で風を切って歩く2人であったが、周囲の目は冷たかった。
それもそのはず。その場にいるのは伯爵家以上のものがほとんど。男爵の、それも未亡人の子などほとんどいなかったのだ。
(因みにジュリエットはカエラと既婚者のとある貴族との間の不貞の子である。)
そんな視線ものともせずジュリエットは周囲をじーっと見渡す。しかしすぐに深いため息をつく。
「お母様、ダメだわ...。私につり合うお方がいませんの。」
「ちょっと待ちなさいジュリー!こんなにいい条件のお茶会そう簡単には呼んでもらえないのよ!!私の努力が水の泡よ!」
「でもだって、妥協で結婚なんか出来ないわ!!」
「そうだとしても、まだみなさん揃って居ないのよ?これからジュリーちゃんにつり合うお方が来るかもしれないじゃない?」
「そんな上手いこといくかしら...?」
「いくわよ!もう少し!もう少し、ね!」
納得のいかない顔で不貞腐れながらカップケーキをつかむジュリエット。
カエラは何とか娘を宥めることが出来てようやく一息ついた。
そんなこんなでお茶会も中盤に差し掛かる。
なんだかほかの貴族たちが1箇所に集まり始めた。
それに気づいた2人も人だかりに向かってみる。
するとそこにはオーデルッソ侯爵の一人息子、シモン・ド・オーデルッソが顔を出していた。令嬢達はこぞって彼にアピールし、群がっていた。
カエラも引けを取らせまいとジュリエットを押し出そうとしたが、彼女の視線はシモンを捉えてはいなかった。
「お母様、決めたわ!わたし彼と結婚するわ!」
そう言ってジュリエットが指さしていたのは、シモン、ではなくシモンの後ろに控える平民の格好をした従者であった。
その従者は確かに見目麗しく、たいそう整った顔立ちであった。
カエラは目眩がしてその場に崩れ落ちてしまった。
次回波乱が起きる...予想