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頬に傷もつ私の一生 3

ちがう。断じてちがうのだ。私は、あの子のことを女の子だと思ったのだ。クリーム色の柔らかい髪を肩までのばして、くるくるまつげにキャラメルソースみたいに深い茶色の瞳、とまどって向けられる微笑。細い手首に代表される華奢な体。ムキムキなお父様を補足して妖精を足して日だまりを足して、いろんな世界の良いものを足して、きゅっと収めた容姿。私が知っていた男の人は遠目のお父様や周囲のおじさんたち。だから、男の子だとは思わなかった。女の子で、だから、お母様が私にしていたように、お母様がいない間に自分がお人形で遊んでいたように、着せ替えようとおもったのだ。かわいい衣装に。なんならお揃いで、色違いのドレスにしようって。生成りのレースがたっぷりしていて、絵本に出てくるみたいに淡い色のドレスを二人で着ようって、きっとあなたのほうが似合うのはわかっているけれど、お母様はいなくなったけど、私すねたりしないわ。だって、――だって、お父様にそっくりで、そのくせかわいいその子は、私の妹に違いなかったから。


でも結局、その子は男の子で、突然私付きのメイドに取り押さえられて怯えて、嫌がって、そのうちに愛人さんとお父様が気づいて私の部屋に駆けつけた。それは大騒動になり、その男の子は私と私の命令に従っていた屈強なメイドがトラウマになり、私の前に出ればただただ睨み、女性には塩超えて氷超えて吹雪つまり女子とか人生の汚物仕様になってしまった。自分の母親からも距離を置くような、そんな子どもになってしまった。

その後、お父様は責任を取ると言って、自分の子を引き取るために、お母様と離婚をした。そして愛人だった男の子の母親を正式な妻とした。私を放置するわけにもいかなくなったお父様は、修道院上がりの厳しい家庭教師複数人を私の住む別館に招き入れた。そして年相応に間に合うように基礎学習と思考を矯正させるための厳し目の情操教育を施された。――まあ、つまりご飯はご褒美くらい厳しかった。怒られて外に出されて、眠れないくらい悔しい日だってあった。でもまあ、そもそもご飯もそんなに興味はないし、怒られることには慣れて、眠れない日は絵本を見て過ごした。ワガママ娘ここに極まれりであった。

だって、ご飯は甘くないんだもの。ああいうのは楽しみにならない。楽しみにできる食べ物っていうのは、お茶会のケーキみたいなもののことだ。


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