頬に傷もつ私の一生 2
お父様はお父様で、複数のイケメンの中から選ばれたイケメンらしく、容姿端麗の堅物仕様。義理堅いそのキュッとしたお尻。ムキッとした体。とても良い。仕事は堅実、騎士の中の騎士。行き届く領地経営。労働と戦闘で鍛えられた体。いまならわかる、とても良い。
……残念ながら、私は子どもの頃お母様の「女子だけの空間」で育ち、お父様を最初に見た時には怯えに怯え泣きに泣き、そんな子どもを疎ましく思ったお父様とはあまり接点がなかった。初期対応が少しまずかったかな。でも子どもってそんなものじゃないかな。
私の容姿を見て、もしかしての事実に怯えたお母様。だけれど事情を説明して、お父様に愛してると告げてすがるにはプライドの高いお母様。お母様は悩みに悩んで、私の容姿を隠すためにお人形のように私を飾り付けて、その髪と容姿を隠した。かわいい服だったが、顔には合っていなかったし大人の服を無理やり落とし込んだものだったので私の肌にはちくちくしていて、あんまり触りごごちの良いものではなかった。残念。でもここ私の起源なので、そこはよろしく。少しだけ覚えておいてほしい。
ふわふわで着心地の悪い見た目はとてもかわいいその服を着て、あっさりした顔を大人用のお化粧で違う顔に作り変えた。服が思うように動けないから、なんだか本当にお人形みたいな気分になった。お母様はその姿に本当に安心して、二人で甘いお菓子を食べて、おもちゃで遊んで、楽しく暮らした。
ずっと楽しかったのは私だけで、お母様はどんどんおかしくなり、その様子を危ぶんだメイドさんにより、母の実家に連絡が入った。お母さんのことをずっと心配していたメイドさん。お父様はやつれたお母様の扱いに困っていて、同い年の男の子がいる親戚を招いたのだけれども、そこも不運がかさなった。乗り込んでいったお母様が見たのは、容姿端麗な愛人だった。息子が色違いのお父様で、お母様はその様子を見てついに倒れて、からのメイドさんと一緒にそのまま実家に帰ってしまった。――私を置いて、ここで手に入れた全てのものを置いて帰ってしまった。
まだ七歳の、何も知らされず、何も学ぶことも許されず、母の言うことを聞くだけの生活をしていた私には、何もかもがきつかった。
その中で、とんでもない事件を起こしてしまった。愛人が連れて訪ねてきた親戚の男の子の服を脱がせているところをそのお母様と私のお父様に見つかってしまい、軟禁されることになってしまったのだ。