頬に傷もつ私の一生 16
あんたが私の客を取った、大した技術もないくせに、なんで大きな顔をして、あの人と仲良くなって! どうどうわあわあ。お針子の女の子の手は真っ赤だ。
私の血の赤。
意味がわからない。
お腹が痛くて熱い。誰かが近くで助けを呼んでる。でも声が遠くなる。
意味がわからない。
そう思うと同時に、まあいいかと思う自分がいた。
私は間違っていなくて、お父様も間違っておらず、お母様も間違っていなかったのだ。
そして今、私の大事な人たちは遠くで幸せになる。英雄たる弟のその後が聞こえてこないのが少し心配――でもなぜか、ちょっと安心。
ねえ、もういいか。
血が流れて、刺したあの子が震えて泣いて、そばで誰かがその子を引き剥がす、ごめんごめんと声がする。ふわふわの、おひさまを浴びたクリーム色。弟みたい。ぼやけた視界いっぱいにひろがる。
そうだなあ。
どうかこの髪が精霊の愛し子の印なら、この経験を元に人生をまた歩みたい。
できれば同じような素敵な人たちのこどもでいたい。
贅沢を言うなら、あの子たちが――妹が、弟が、あの子が傷を癒して幸せになってくれると嬉しい。
そしてね、あの子の頭をなでてね、大好きっていうのよ。
そんなたくさんの願い事をつらつら考えながら、痛みが痺れに変わる波の中で、意識は消えた。
――はずだったんだけれども。
どうして私、子どもに戻って、弟の着せ替えを見守ってるんだろう。




