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【前編】竜に見出された僕は竜退治に出かけ~そして俺は殺戮者になる【完結】  作者: 葛原一助
第4話  黒の国

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黒の国、来たる(3)

「どうなってんだいこれ!?」

 トゥーリアが声を張っているのは、驚きもあるのだろうが居場所を音で知らせる為だろう。

 しかし、俺の耳には届いているが、近くにいるような遠くにいるような曖昧な感じで距離感が掴めない。

 一方俺は補助術式から光源を使ってみたが、術句を唱えても光が生まれない。しかし術句を発して術式が発動している手応えはある以上、術が発動するたびに食われている可能性がある。


「これを越えられたら我も改めて対峙してやろう」

 ニグレオスの感情のない声を最後に、気配すら探れないほど薄れてしまった。


「ラストー! どこだい!?」

 トゥーリアの声が相変わらずの状態で耳に入る。これからをどうにかする為にも、俺からも口を開いた。


「ここにいる! 術式解除出来るか!?」

「無茶さね! 相手は竜だよ!? アタシらの力じゃどうやったって解けないさね!」

 これもおそらくは術式と同じ原理である可能性があるなら解けるかとも思ったが、そもそもの力の差が歴然だ。これそのものをどうにかするのは俺たち二人じゃどうしようもないか。


「どれくらい下がれる!?」

「出来るだけやるさね!」

 トゥーリアが足音高く引き下がる音が聞こえる。

 俺はいきなりで悪いが、あの術式を使う為に剣を正眼に構えた。


「我の意思はここにあり!」

 術式の補助動作で、槽がほの淡く光り出す。


「我が望むは断ち切る意思! 我が求るは困難を裂く刃!」

 術式の影響で、術式槽と俺の身体が繋がり、俺を力へと変えようと槽の輝きが増す。


「我の身を賭けて立ちはだかるものを退く力を――|存在する意思と証明確立のプロバティネム・エクジステンシア!」

 今回は片刃ではなく両刃。単純に倍量の力を奪われる事となり、途端に意識に負担が重くのしかかる。


「なかなか危険な力を使う」

 すぐ側からニグレオスの声が聞こえてきたかと思うと、剣を掴まれる感触が生まれた。

 そしてそこから俺の刃が消失した。


「ぐあっ!?」

「確かにその力で斬るのは可能だが……」

 術式に強制介入されたのか、ニグレオスの声が俺の頭に直接響く。

 それどころか、術式を介して俺のなかにニグレオスがいる、と感じられてしまう。


「儂との力の総量をわからぬお主ではあるまい?」

「ああああああああああああああっ!?」

 それは侵蝕だった。

 介入した力を媒体にして俺の存在そのものを取り込まれようとしていた。

 それは大雨の中を漂う小石が如く、逆らおうにもどうしようもなく、ただされるがまま俺の生命(いのち)が失われていくのをはっきりと理解してしまった。

 もう声すら出す気力も身体を動かそうとする意志も生まれず、ただ飲まれるままされるがままにされるしかない力に圧倒されたまま、俺は消えゆく流れにいる時、ニグレオスがそれを止めた。


「このまま食ってしまうのは簡単だが、それは儂の本意ではない」

 もう手足の感覚がなく、繋がっているからこそかろうじて拾えているニグレオスの声だけが聞こえる。


「さて、娘よ」

 ニグレオスの言葉からして、誰かと話しているのは想像出来た。


「この男を連れて帰れ」

「…………………………………………?」

 俺を誰かに引き渡そうというのか。それなら話している相手はトゥーリアか。


「お主はただの付き添いだ。殺す理由がない」

 トゥーリアは生かしてくれるのか。


「そして、この男はもう一度戦いに来るだろう。殺すならその時だ」

 この力に勝てと言うのか?

 一歩的な力に抗える手段があるのか?

 この竜を殺すだけの力があると言うのか?


「サングはこの結果を知っている。あいつを頼って街で静養すると良い」

 なら、この流れは最初から筋書き通りって事じゃないか。

 俺の身体が浮いたと思ったら、ニグレオスと繋がっていた力が解けた。

 支えがなくなったという認識からか、俺は無防備にも意識がなくなった。

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