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【前編】竜に見出された僕は竜退治に出かけ~そして俺は殺戮者になる【完結】  作者: 葛原一助
第3話  赤の国

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幕間3−4

  路銀、収集



「……どうして加減しない!」

 外で鳥達の(さえず)りが聞こえる中、いつもよりかは奮発して新鮮な野菜や焼いただけのバケット、ぬるめの牛乳などの軽めの朝食を用意してもらった。それが手をつけられる前のまま、怒声と共に叩きつけられた俺の手で浮き上がり、何事もなく元に戻った。


「いやあ、たまの奢りなんて言われたら、そりゃあ飲むさね」

 叩きつけられた相手であるトゥーリアは、いつもの通りに塩気を添えてこんがり焼いた肉と芋。

 つまりは酒の肴だ。

 俺が主催を宣言したとはいえ、あれから酒の席へと雪崩れ込み、酒だ肴だと終始飲み食いになった三人――もちろん俺を除いている――で最後まで飲んでいて、明らかに俺の懐を超えた飲み食いとなった。


「足りない分は出したろ?」

「だから路銀が足りなくなるんだろう!」

 飲まされて記憶が曖昧になっているが、支払いで足りないと気づいた時に、マノが懐から払っているのはどうにか覚えている。


「足りないなら、アタシがどっかから金の融通してくるさね」

「俺はお前に協力を頼んでいるとはいえ、これは俺の旅だ。お前の金は当てにしない」

 強引に引き入れたとはいえ旅の仲間であるし、旅の費用は出来るだけ負担するつもりでいたし、ここまでの旅は――武装に関する部分以外は――費用を賄ってきた。それを今更変えるような事をする気はない。


「じゃあどうするさね?」

 自前の酒をちびりと煽りながら、どこか面白そうに俺を眺めるトゥーリア。


「……路銀を稼いでくる」

「宿代は先に全額払ってあるだろ?」

「日々の食事代は別だし、他に買っておきたい物もある。それに――」

「それに?」

 大きくため息を一つ付くと、内心で考えていた予定を口にした。


「この際だ。黒竜対策の術式を編み出したい」

 ヒントは得たが、それを活かす手段は掴めていない。黒の国へ向かう道すがら色々と模索するつもりだったが、こうなったらここでやれるだけの事をやってから向かう方が良いだろう。


「それなら付き合うさね」

「しかし――」

 俺が反論しようとした矢先、鼻先を指で押されてしまい、俺の眉間に皺が寄った。


「――別にアンタがなんでもかんでも背負う必要はないさね。飲み食いに関しちゃアタシ達にも責任があるしね?」

「それはそうだろうが――」

「――それに、術式を新しく組むにしても、知識と補助は必要だろうさ。アタシ、これでもアンタより上なんだよ?」

「まあ、そうだろうな」

 巫女であり俺より術士の階位が上だと言うなら術師(ドミナス)しかない。言われずとも想像していた通りではある。未認可の術式を使ってはいけないのだが、術師公認による試験運用となれば、万が一他国に見つかったとしても言い訳が立つ。


「……まあ、いいか」

 自発的に協力してくれるというのであれば、断るようでは責任ある者としてはダメだろう。

 落ち着いてくると、途端に俺の腹がか細く鳴く。そんな俺を笑う事なく、トゥーリアは俺のサラダの皿に自分の皿から指で摘んだ肉を一つ二つと入れて、満足げにグラスの中身を煽った。


「しかし短期でそれなりの収入が得られる仕事なんてあるか?」

「赤の国でなら、アタシら向きであるっちゃあるさね」

 自信満々に答えるトゥーリアに俺は首を傾げつつ、肉と葉野菜をまとめて口に放り込む。酸味のあるドレッシングと塩気が舌を刺激し、酒の残る腹に重い一撃が入った。沸き上がる食欲を抑えつつ、まずは答えを求める為に視線を向ける。


「そりゃ当然――魔物退治さ」

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― 新着の感想 ―
トゥーリアならめちゃくちゃ飲みまくりそうなのを予想しなかったラストーも笑えるのじゃ!路銀を稼ぐついでに技開発かのう?どんな魔物と戦うのじゃろうか?何か活路も見出したいところじゃな。それにしても律儀なラ…
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