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【前編】竜に見出された僕は竜退治に出かけ~そして俺は殺戮者になる【完結】  作者: 葛原一助
第3話  赤の国

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終わりが始まり。巡る綻び(3)

 戦の高揚そのままに声を上げ、さらに速度を上げて爆発を攻撃そのものにも応用し始めてぶつかり合っている。

 そんな争いばかりの音の中、骨の折れるようなその不穏な音だけははっきりと耳に入った。ここまで常に術式を使い続けている為か、彼女の症状の悪化が《エクステリオッサ》に現れてきた。

 それも、角が生えるという最悪の形で。


「エレーン止めろ! このままだと竜になるどころか魔物化するぞ!?」

「そうでなくては!」

 力の使用を気にするどころかますます引き上げ、もはや彼女の全身が熱を持って外装が赫くなり陽炎が上っていた。


「私は人としての殻を捨てるのです! この程度乗り越えねばどうするのですか!」

 つまり、これは彼女の予定内と言って良いのだろうか。

 はっきりとした確証を持てないまま高速化された認識の世界で、ゆっくりとだが確実に時間が刻まれていく。

 アレクエスで見る視界の片隅にある、安定稼働を保証する時計が限界を示す赤に変わっている。


「どうしました? もう時間がありませんか!」

 視線で悟ったのだろう。躊躇いなく術式を連打し、いっそ心から楽しいのだろうと思える笑い声を上げながら切り刻んでくる彼女は――たとえ巫女として先天的な素質の差はあったとしても――とっくに限界を過ぎているはずだ。時計は常に一定間隔で動くわけではない。《オルナメンタ》に彫り込まれた術式以外を使えば容易に打刻速度が変わる。巫女仕様のものとなれば、限界までの時間は俺より長くとも、あれだけ術式を連打し続ければ使い果たしているのは想像に難くない。

 俺も、あと一つ大型術式を使えば限界が一気に近づくだろう。

 つまり、戦いを決めるチャンスは一度しかない。


「……腹を、くくるしかないか……」

 幸い、空に太陽はあり、俺の使える大型術式を使う条件は満たしている。


「熱よ、光よ! 全てを原初へと戻す力よ!」

 術式槽が発光し、詠唱の求める力を集め始める。


「集え! 集え! 我が望むは御身の一部!」

 術式剣が白く発光し、熱を持ち始める。

 今回は以前と違い、俺の周りに浮いている短剣すらも熱を持ち、内部を流れる水の飛沫がさっと霧へと変わる。


純然たる力の刃(プーラ・ポテンシア)よ!」

 俺の剣、そして周りを漂っていた剣全てが真白く輝き、どれもが等量に集められた熱量(ちから)は、容赦なく俺の外装を灼く。

 そして、限界を示す時計は残り時間を使い切り、危険指数を示す物へと変わり、いよいよ残り時間は無くなったと言ってよかった。

 素早く左手で短剣を操作して撃ち出せば、剣で払うのは危険と思ったか彼女は身をかわして接触を避ける。観客席に突き刺さった短剣はみるみるうちに水蒸気を巻き上げて視界を悪くした。


「そんな手抜きの攻撃では私に届きませんよ!」

「そうだろうな!」

 俺の限界時間はおおよそ十秒。高速機動中でも取れるアクションはおそらく10カウント。超えたからといってすぐにどうこうするわけじゃないが、だからといって戦闘の継続は難しいし、武装解除してしまったらすぐには動けないだろう。


 10。

 彼女との距離を一歩で詰め、振り下ろした剣を彼女に受け止めさせる。

 炎で赤く燃える剣と熱量で真白く光る剣が迫り合い、放射される互いの熱が装甲という肌を焼く。


 9。

 彼女の肘や手首から火の粉がちらつく。これから吹き上げて俺の剣を弾くだろう。

 その前に俺の左手に展開している短剣の一つに、術式を重ねるための言葉を放つ。

結 合(ヴィンクルーム)!」

 

 8。

 光ったままの短剣が溶けて俺の剣と彼女の剣に降り掛かり、剣を封じるようにくっついていく。

 俺の術式の名で目的に気付いたのか、剣を離すタイミングが同時だ。

 しかし、そこまでは俺も読んでいる。


 7。

 剣を離して距離を取ろうとした彼女の脚が止まる。

 溶かした短剣は二本。剣を封じるのに使ったのは一本。

 残りの一本は、向こうの足を封じるための楔になっていた。


 6。

「小賢しいっ!」

 彼女の足から火の粉が舞う。

 爆発力で強引にでも剥がす気だろう。

 逃すまいと俺の右手が彼女の左腕を掴んで引き寄せる。


 5。

 俺から離れようと手を剥がしにかかるが、俺は彼女と密着出来ればそれでいい。身体を抑えられるなら尚良しだ。

 声を荒げながら暴れる彼女の様子からは、冷静さが失われつつあるように感じられた。

 残り時間は半分になったが、まだ決着は付けられる。


 4。

 彼女の怒りを表すように、その全身からちらちらと火の粉が舞う。

 とはいえ、彼女が出来る手段はほぼなく、俺はもう少し手を打てる。

 彼女と俺の最大の違いは、加速性能の違いだ。

 彼女の加速術式は爆発を利用したもので、本人の認識が無ければ――自動発動を組み込んでいる場合は別だが、彼女の術式にはそれが見受けられない――発動しない。

 対して俺の加速術式は行動する力を上げるもの。肉体の稼働速度はもちろん、周囲の動作を認識する力も上がる。

 つまり、これだけ刹那の時間であろうとも、取れる選択肢の幅はかなり広い。


結 合(ヴィンクルーム)!」


 3。

 残った二本のうちの一つが溶け、俺の右手と彼女の左腕を結合する。

 これで彼女との密着する事が出来る。

 最後の一手を狙う為、俺は左肩から彼女の胸に飛び込む。


 2。

「!」

 彼女の身体が僅かに硬直する。

 俺の目的に気付かれたかもしれない。

 だがもう遅い。この距離では外さない。


射出(イニエクティオ)!」


 1。

 彼女を抑えている俺の腕を貫通して、彼女の胸へ最後の短剣が貫通する。

 抵抗する音もなく、俺の腕に穴が空き、彼女の胸元――外装骨格(エクステリオッサ)の構成部分である核を撃ち抜いて背中を抜けたところで力を失って地面に落ちた。


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