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努力する彼女と努力をやめた僕  作者: 成浅 シナ
1年生編
1/87

①出会う

連載小説としては今作で8作品目です!

他の作品共々よろしくお願いします!

「あ、押川(おしかわ)くん」


委員会が終わり話し合いの内容をメモした紙や筆記用具の片付けをしていると委員長に呼び止められた。


「押川くん1組だよね?これ、さっき配り忘れちゃったプリントなんだけどさ」


その手には委員会後に配り忘れたと言って各自取るように指示されたプリントがあった。



「3組の甲斐(かい)さんが取ってないみたいなんだよね。それで......」


委員長が言わんとしていることはすぐに察しがついた。


確かに3年である委員長より同じ2年の僕の方がクラスの位置が近い。

3年の教室は1、2年とは違う棟にあるしな。


「分かりました。渡しておきます」


そう言いプリントを受け取った。



委員会を行っていた特別棟の教室を出て教室棟に戻る。


全学年階段を挟んで左が1、2組、右側が3組以降のクラスだ。

僕のクラスである1年1組とその甲斐さんとやらの3組は向かう方向が違うが届けるのは大した手間ではない。



3組に難なくたどり着き教室を覗く。

同じ委員会に所属しておきながら僕は甲斐さんとやらの顔を知らない事に今更ながら気づいた。


どうしたものかとしどろもどろになっていると、そこにちょうど帰ろうとしていた女子2人組が入口をくぐった。

咄嗟に道を空けてから自分がここに来た理由を思い出す。


「ねえ。ごめん、甲斐さん呼んでもらってもいい?」


女子の片方は突然話しかけられたことにビクリとしつつ


「どの甲斐さん?」



どの?



ちょうど入口の傍に貼られていたクラス名簿を見てその言葉の意味を理解した。僕のクラスは入学式の次の日には剥がされていたがこのクラスはクラスメイトを早く覚えるためにかそれがまだそのままなっているようだ。


名簿を見るとこのクラスには男女合わせ甲斐という苗字がつく人が5人もいる。


だが特段珍しい事でもない。

この辺りの地域で恐らく1番多い苗字だ。僕のクラスにも甲斐という苗字の男子生徒がいる。


そのことを失念して言ってしまったことを後悔しつつ


「えっと...ごめん下の名前が分からないんだ。美化委員の甲斐さんなんだけど...」


「あー」


美化委員の甲斐さんだけで伝わったようでその女子生徒は数歩下がって教室の入口に戻り


「ハル〜〜!美化委員の人〜〜!」


そう大声で呼びかけた。

突然の大声にクラスに残っていた人がこちらに視線を向ける。



呼んでくれた女子生徒は僕がお礼を言うと一緒にいた友達と連れ立って帰っていった。

欲を言えばもう少し目立たない方法を取ってもらいたかったものだけど。



教室内には10人ほどが残っていてその中でも特に、クラスの中心に5人くらい女子が1つの机を取り囲んで集まっている。


「あ、はーい」


その中の1人、1番ここから近い場所に立っていた女子生徒が近づいてきた。

恐らく彼女が甲斐さんなのだろう。


さっさとプリントを渡して帰ろう。


そう、ぼんやり考えていると僕の視線はある一点に吸い寄せられた。


正確には甲斐さんが退いたことで姿が見えた輪の中心に座る女子生徒に。


ハッと息を飲む。



すごい美人がそこにいた。




シルクのように流れるミディアムヘア。白い肌に大きな目、スっと通った鼻筋、小さな唇。


そのどれもが模造品のように綺麗に整っている。

どこのクラスにも、それどころかこの学校以外でも見たことの無いような高レベルの美少女だ。テレビの向こうの芸能人かよってレベルの。


その女子生徒はクラスメイトと楽しそうに話をしていて、時折クスリと上品に口元を手で抑えて笑っている。その所作一つ一つが人の目を惹き付ける。




「だれ?」



その声に意識が引き戻される。


やべっ、ついその美人に見とれてしまい呼び出した相手の声に反応が遅れた。

ここは早めに用事を済まそう。



「ごめん。僕、美化委員の押川。委員会終わった後に配られたプリント持ってってないよね?委員長に頼まれたんだけど...」


片手で自分の荷物を抱えながらもう片方の手でプリントを渡す。


「あー、気づかなかったよー。ありがとー」


どうでも良さそうなのびーっとした態度で甲斐さんはそう言いプリントを受け取る。


その短いやり取りを終え、甲斐さんは元いた場所に戻っていった。


チラりとまた、あの美人が視界の端に映る。



あんな子、同じ学年にいたっけ。


噂すら聞く機会もなかったから分からん。



美人が甲斐さんで隠れる数秒、興味本位でつい見続けて、そしてクラスを離れた。


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