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悪眼の(2)


教室に着くと、もう生徒たちは席についており、担任と思わしき男性の話を黙って聞いていた。


うわぁ…入りずれぇ…


しかし立ち止まっている訳には行かないと俺は心に鞭を打ちドアを開いた。

「お、初日から遅刻か?そんなんじゃ不良になっちまうぞ?」

喋っていた若い男性教師が話を中断して爽やかな顔で迎え入れてくれた。

実はもう既に俺は世間的には不良の部類…いや待て待て、俺は決して不良なんかじゃない。断じて無いぞ。

しかし、この反応…この教師はまだ俺の妙な噂を知らず普通な対応をしてくれたという事になる。ここはまた素直に謝って穏便に済ましておこう。

「遅れてすいません。以降気をつけます」

男性教師はカッと笑うと、太陽のような笑顔で言った。

「おう、じゃあ座れ。遅刻坊(ちこくぼう)

周りからクスクスと笑い声が聞こえたが、まぁ、変な渾名が付けられて笑われるぐらいなら『普通』の範疇だろう。逆に教室に入ってきても怖がられた事しか無かった俺としてはちょっと嬉しい。

俺は教室の後方、黒い長髪の少女の隣の席が空いているのに気づきそこが自分の席だと察して座る。

「よし、それじゃ俺の自己紹介をして入学式に行くぞー!」

そして溌剌とした太陽のような先生の自己紹介が始まった。


起立、気をつけから始まる一日の挨拶は俺が来る前に既に終わってしまっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


中学の頃は全員で整列して歩くということに慣れなかったものだが高校からは目的地についてから並び直すというから楽でいい。

俺は一人廊下を歩きながら「友達できるかなー」とか「普通に生きたいなー」とか考えていた。

周りを見ると案外仲間分けが出来上がっていて既に乗り遅れた感が否めない…

てかこの手のグループ分け確立すんのマジで早すぎるだろ…

些細なことで高校入学を実感しているうちに目的地の体育館に到着した。

中に入るともう既に少し列が出来上がっており、さっき教室でチラッと見たクラスメイトの顔を頼りに自分の並ぶべき場所を探す。

1-3…1-3と…

キョロキョロと辺りを見渡すと視線の先に長く綺麗な黒髪の少女が目に映った。

「あいつ確か隣の席の」

俺は居場所を見つけてホッと胸をなで下ろし黒髪の隣に並ぶ。

隣を見ると少女は毅然とした態度で前を向いて立っている。

ん、待てよ。流石になんも喋らないのは『コミュ障』とかいうやつだと思われて距離を取られたりしないか?最初のうちに気さくなやつと思われといた方がこれからの生活もより良いものになるのでは?

そうと決まったら否定も肯定も生まないような他愛ない会話デッキを展開していく他なかろう。


「いやぁ…あぶねー。危うく迷子になるとこだったわー」

「…」

「あははー…」

「…」


え?え??なんかもう既に避けられてる???そんなことある????まだなんもアクション起こした覚えないんだけど?????

黒髪の少女は黙ったまま教壇の方を見つめている。

俺は気まずい雰囲気を感じ取り、もっと他に何か話さなくては…と考えているうちに校長と思わしき人物の話が始まってしまった。

『入学おめでとう〜』から『我が校の校風は〜』と月並みな言葉を聞き流し、俺は黒髪に無視された事を悶々としながら考えていた。

やっぱ女子に急に話しかけるのはまずかったかぁ…?下心あると勘違いされたのかなぁ…

目付き悪い危ない男に話しかけられたとか思われたのかなぁ…。

心の中で今日何回目かの溜息をついていると辺りが急に暗くなるのを感じた。

教壇の方を見ると眼鏡をかけたいかにも生徒会って感じの生徒が機械の様なものを運んできていた。

「あー…なんか校風がどうとか言うのをプロジェクター使って説明してくれんのね」

まあこの手の行事で過去の写真とかを見れるのは俺としては嬉しい。普通の生活と言うものを今のうちに目に焼き付けて置かなくては。

過去の行事などを先輩方の写真と共に振り返りながらの説明を聞いていく。

うわぁ…試験も結構頻繁にあんなぁ。

お、体育祭。高校の体育祭は結構盛り上がりそうだ。

む、文化祭。文化祭も中学の時とは違って結構派手にやれるんだな。後夜祭では可愛い女の子とフォークダンスを踊ったりして…

と、そこまで考えてさっきの隣の黒髪のすまし顔を思い出し気分がまた落ち込んだ。

女の子とフォークダンスとか夢のまた夢だ…とほほ…。


ーーーチラッ。


沈みがちな気分な俺の視界の先。詳しく言うとプロジェクターに映し出された映像の端。


ーーーチラッ。


「ん?」

何かが動くのを俺の鋭い眼は見逃さなかった。

最初のうちは目にゴミでも入ったかと思って目を擦っていたがそのチラチラと映っていた何かは段々としっかりと映り込んでくるようになる。

周りからも気付いた生徒達がざわつき始めていた。


そして遂に、チラチラと動いていたものが完全に映像の中心に映り込んできた。



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