オカルト部の部長に惚れてしまった!
薄幸の美人、深窓の令嬢など、うちのオカルト部の部長は儚いイメージのある人なのだが、俺が初めて会ったときは……化け物なのかと思った。
それというのも、俺には霊感があるのだが、それで見えてしまったのだ……彼女に大量の霊が憑りついているのが。
ただ、本人には一切霊感がないのか、霊障はそれなりに現れているのだが、全てに耐えきっていた。
しかし、このままでは近いうちに死んでしまうのではないかと、そう思った俺はオカルト部に入部した。
オカルト部には部長以外は所属しておらず、所属したいというとひどく驚かれて、心配された。
どうやら、彼女についている霊たちが部員にも影響したようで、彼女の容姿につられた部員たちもすぐに辞めたか幽霊部員になってしまったのだ。
……幽霊部員といっても死んだんじゃなくて、所属はしているけど名前だけで部室に来ない部員たちのことだ。
しかし、俺は霊感もあるし、おそらく数は多いが彼女に憑りついている霊を祓えるだけの力はあると思うので、さすがに見捨てるのも忍びないので助けるつもりなのだ。
それから1年をかけて、彼女の霊をとり祓っていっているのだが……。
「うーん。最近また体が重い気がするわ。特になんだか頭を指でたたかれてる気がするわ……」
「部長……今度は何をしたんですか?」
「え? あぁ、七不思議の事前調査をしたのよ! 深夜の学校で誰もいないはずの音楽室からピアノの音がするっていうあれよ」
なんともオーソドックスな七不思議である。
しかし、オーソドックスだからこそ、よくあることなのである。
俺は彼女の頭をピアノに見立てているのか指で鍵盤を弾くようにリズムよく叩いている霊を見る。
格としてはかなり低い地縛霊なのだが、地縛霊に浮遊霊ごとく憑りつかれる先輩も相当である。
ほとんどの霊を祓ってから気づいたのだが、この先輩は相当に鈍感で、そして好奇心が旺盛すぎる。
薄幸の美人や深窓の令嬢などといわれているが、それも幽霊が憑りついていなければそんな評価にはならなかっただろうくらいに元気で生命力にあふれている。
まぁ、生命力にあふれているが霊に対して抵抗力を持たないからこそ、あんな大変なことになっていたのだろうけど……。
「部長。頭の上に蜘蛛の巣がついてますよ」
「えぇ? 本当? どこ?」
俺の言葉に先輩は頭の上をペシペシと払うが、もちろん嘘なので何かが取れるということもない。
「ここですよ」
そして俺はさりげなく、先輩の頭を払って、ついでに霊も祓い飛ばすと、先輩の頭の上でピアノを弾いているつもりだった幽霊はひゅわ~っという情けない声を上げて消えていった。
「うふふ、ありがとう。持木くん」
「いいえ、どういたしまして」
しかし、その容姿に惹かれて部員が入ってくるだけあって、先輩は美人である。
「そうだ、持木君。今日から学校の七不思議を調査しましょう! 事前調査では閉門までしか校内に残れなかったから、今日は夜に音楽室に忍び込んでみようと思うの!」
美人ではあるのだ……しかし、残念で行動力があってバカである。
「どうかしら! どうかしら!」
手をぶんぶんと振って、俺の周りをまわる先輩、すでについさっき頭の上の音楽室にいたであろう霊は払ってしまったので、夜に音楽室に忍び込んでも何も起こらないだろうけど、先輩のことだ、このまま夜の学校に忍び込ませたら他の幽霊に憑りつかれるのが目に見えている。
「部長──」
ダメです。と言いかけたところで、俺は夜の学校に2人っきりで忍び込んでいい雰囲気に……いやいや、そうじゃなくて、もしもここで反対しても先輩は勝手に1人で突っ込んでいきそうだし、それはよくない、よくないぞ。
そういえば、七不思議にはプールにまつわるものもあって、今の夏の時期にプールに忍び込んで……ううんっ! そうじゃなくて音楽室で何もなければ、他の七不思議であるプールの怪談の確認のためにプールに行くというのもありだよな。
あくまでも確認のためだ、うん。
「──それはいいですね。行きましょう」
「持木君ならそう言ってくれると思ってたわ!」
先輩がまぶしい笑顔をこちらに向けてくれる。
うん、こんなん惚れてしまうよな。