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YUMA20→40  作者: 玉城毬
8/12

婚活2

「結麻ちゃん、婚活始めたんだって?

 私も、絶賛婚活中なんだ~~!

 今度さ、隣町の商店街主催の街コンの話があるんだけど、よかったら一緒に参加してみない??」

 母からのお見合い第一弾でちょっと落ち込んでいたところ、文香からメールが届いた。

 彼女とは、るりが結婚する前の友達の集いで何度か一緒になって知り合い、ここ数年は年賀状くらいのやりとりだった。

 多分、るり辺りから私の近況を聞いて誘ってくれたんだろう。

 そっか、文香も、貴重な婚活仲間なのかーー。

「お久しぶり!

 婚活同志ですなぁ……。

 私は街コン行ったことないんだけど、文香っちはある??」

「私も初めて!

 友達同士で一緒に参加したら、楽しそうだな~~と思って」

 ……。

 そうだなぁ、それなら、初めての場でも緊張が少なそう。

 自分一人だったら街コンの選択肢はなかったから、いい機会だよね。

「そうだねーー!

 じゃあ、是非ご一緒させてもらおうかなっ」

「本当?

 ありがとう!

 確か来月だったから、また詳細送るね!」

「オッケイ、よろしくお願いしまーす」

 私は文香にお任せしながら、一ヶ月後を楽しみに過ごした。

 申込時に確認すると、女性の参加資格は20~40歳で、参加費無料、友達同士の参加も可だった。

 お見合いより気楽なのもよかった。


 隣町の街コン当日。

 私と文香は待ち合わせて、開催場所の古民家カフェへ向かった。

「この辺、久しぶりに来た~~。

 こんなにオシャレになってたんだねぇ」

「人も街も変わるねぇ。

 ちょっと見直しちゃったよ」

 会場で受け付けし、二人で始まるのを待っていた。

 程なくして、初老の男性が話し出した。

「えーー、今日はお忙しいなか、我が商店街主催の街コンに大勢ご参加頂きまして、ありがとうございます!

 中年ではありますが、商店街の次世代を担う熱心な者ばかりです。

 限られた時間ではありますが、素敵な会食の時間を過ごされますよう、手短ながら始まりの挨拶とさせて頂きます」

 初老の男性が一礼すると、今度は席の流れが説明される。

 参加者は男女各8人ずつの、16人。

 男性と女性が2人組になって、一つのテーブル4人で会食、時間は30分1セット。

 それを全部で4回、2時間で8人の異性と全て話す流れだ。

 私と文香は友達同士で申し込んだので、一緒の組だった。

 どうやら女性は他にも知り合い同士の人達がいるようで、なんだかすっかり安心してしまった。

 自己紹介やお仕事の話、出される特産品を使ったお料理の話題なんかで、あっという間に時間が経った。

 男性陣はみんな40~50代で年齢が高めだったけれど、普段接客してる分、とても話しやすかった。

 総じて人柄もよく、地元と仕事に誇りを持っているようだった。

「そうなんですか~~すごーーい」

 受けのいい文香のおかげで、私は一緒に相槌を打って気楽に参加できた。

「えーー、お話の途中かもしれませんが、時間になりましたので、会食はこれにて終わりになります。

 ここから30分は連絡先や情報の交換になりますので、よろしかったらお願いします」

 最初の初老の男性が説明した。

 合コンの時もそうだけど、この時間が一番苦痛だ。

「文香さん、今日はありがとうございました!

 また是非お話したいんで、連絡先交換お願いします」

「こちらこそーー、ありがとうございます」

 文香はとても熱心に話を聞いていたので、次から次へと男性のリクエストが殺到した。

 こういう時、モテる女友達と一緒だと、差が出るなぁ……。

 私は彼女が落ち着いて終わるまで、近くでスマホをして待っていた。

 文香と無事連絡先を交換した男性1号が、私の方を見て話しかけてきた。

「あの、文香さんとお友達で来てた方ですよね!

 よかったら、アドレス交換したいんですが、……」

「あ、はい!」

 私にも声がかかり、やることができた私は淡々と交換をしていった。

「ありがとうございます、次も是非、お二人共よろしくお願いします!」

 文香、私と交換を終えた男性達の流れを観察していると、次々に他の女性達の下へ交換に行っていて、どうやら男性の方は女性全員に聞きに行っているようだった。

 ……。

 そりゃそうか、男性が主催側だし、機会は最大限に活かさないとね!

 そう考えると、文香が一番人気で、私はその友達としての立ち位置っぽい気はするけど、女性全員聞かれているようなので、やっぱり安心したのだった。

「文香っち、終わった?」

「うん。

 そろそろ、行ってみる?」

 先に連絡先交換の終わった私達は、会場や受付の人達に軽く一礼して、会場を後にした。

「ね、なんか思ったより楽しかったし、カフェもお料理もオシャレで、いい感じだったね!」

 にこにこ、上機嫌な文香。

「そだね、人数も時間もちょうどよくって、商店街のイメージも素敵だったーー」

 私も率直に、今日の感想を述べた。

「文香っち、今日一番人気だったね!」

「えーーそう?

 だったらうれし~~!

 次も絶対、行こうねっ」

 彼女は本当にうれしそうに笑っていた。

「次は、どんなおいしい物が食べられるのかなーー」

「色気より、食い気かーーい!」

「やっぱり、お楽しみがないとねっ」

 そんな風におもしろおかしく話しながら、私達は解散した。


 それから2週間、商店街の男性からのメールは全くなかった。

 もちろん、私からも発してはいないのだけど。

 そこに、文香からのメールが届いた。

「結麻ちゃん、元気~~?

 来月、道の駅で商店街のイベントがあるんだって!!

 一緒に行って、いっぱい食べてこない??」

 ……。

 彼女はそこそこにやり取りしてお誘いがあったんだろうな。

 うーーん、行けばまぁ楽しいし、おいしい物食べられるし、そうやって回を積み重ねていけばまた、輪も広がって親しくなれるかもしれない。

 友達と体験型は楽しいし、時間かけて相手を知っていけるんだけど、なんか面倒だな、……。

 乗り気の文香とは反対に、婚活のペースがゆっくりになりそうだなと思って、街コンコースはちょっと外そうと思った。

「ごめん、実は結婚相談所、始めるつもりなんだーー。

 初めてだから、そっちが落ち着いたら、また検討でもいいかな??」

 婚活中だし、相談所の方も考えてはいたので、嘘ではなかった。

「そっかーー、残念!

 相談所決めたんだね、がんばって!

 進展あったら、近況報告よろしくねっ」

 彼女はそう言って、了承してくれた。

 ……。

 街コンコースを回避するための名目だったけど、実行するかーー……。

 文香に恥じないよう、私の婚活道を進まなくっちゃ。

 私はキーワードを入力し、数ある相談所の中から、自分に合いそうなところを検索していった。


「岡本結麻様ですね、このたびはご入会ありがとうございます。

 本日から、ご成婚に向けて精一杯のお手伝いをさせて頂きます」

 それから3週間後の日曜日、私は晴れて結婚相談所に入会した。

 大手であること、金額的に妥当であることを踏まえて、ここに決めた。

 初回の説明を受けた後、入会金5万円を支払い、その後は利用毎に5千円支払っていくシステム。

 基本マッチングによるお見合いと、作法や美容のレッスン、婚活に関するカウンセリングなどが主な内容だ。

 結婚が成立しても、成婚料はない。

 今の私に合っていそうだなと思ったし、とりあえず今日のヒアリングを受けたら、どんどんお見合いをしてみたいと思った。

「では、あらかじめご記入頂いたアンケート用紙を基に、ヒアリングを行っていきたいと思います」

 記入した時は深く考えず30分くらいで終わったけど、担当さんに一つ一つ確認してもらうと、相手方はもちろん、自分のライフスタイルや将来の計画が、これでもかっていうほど細かくあった。

 改めて、結婚というライフイベントは人生の中でかなり重要で、仕事、家庭、子ども、親戚関係……と様々なものが絡んで、自分が考えていたよりも複雑な設計図になった。

 あっという間に2時間が経過し、担当さんが10分の休憩を挟んでくれた。

「大丈夫ですか?

 岡本様」

「はい……。

 婚活って、気力体力、いりますね」

「本当に、みなさんそうおっしゃいます。

 実際、初回のカウンセリングでおやめになる方も、いらっしゃいます」

 まじかーー!!

 2時間で、5万円の勉強料……!?

「そういう方は、初回ヒアリング料のみで、5千円になります。

 婚活は大変なものですから、ご入会もきちんと納得して頂きませんと、双方のためですので」

 確かに……!

「では、退会についての説明になります。

 岡本様が当相談所をやめたいと思った時は、こちらも利用停止の手続きを取りますので、速やかにご連絡下さい。

 また、最後のご利用日から一年が経過した場合は、自動的に退会の意思とみなされますので、ご注意下さい。

 それから、利用にふさわしくないことが起きた場合、こちらから終了にさせて頂きますので、本日お渡しした冊子の確認と保管をして下さいますよう、よろしくお願いします。

 なお、一番多いトラブルは婚前交渉になりますので、くれぐれもお忘れになりませんよう」

「えっ……」

 長い説明の中に一点、赤面する事項が入っていたが、大事なことだと思って確認した。

「結婚するまで、ダメなんですか?」

「いえ、結婚前提の本交際か婚約中で相談所を終えた後でしたら、問題ありません。

 しかしながら、お見合いから仮交際の利用期間に関しては、万が一責任を負いかねる問題事項になりますので、どうか理解とご協力をよろしくお願いします」

「そ、そうですよね……。

 気をつけます」

 初回のヒアリングを終えた私は、結婚相談所の厳しい現実を感じながら、震える指で、入会金5万円を支払って帰宅した。



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